第4回研究会 日時:2014年8月28日(木)15:00-17:00 場所:立命館大学BKCキャンパス トリシア 環境都市系第3会議室 出席者:伊津野、里深、深川、川崎、野坂、塩見、石田、石森 議事: 1.話題提供 里深教授  インドネシアのシドアルジョの泥火山と、広島の土砂災害に関する話題提供があった。 シドアルジョの泥火山では、スマライから25kmの農村において地中の天然ガスを採るためにガス採取管をいれた際に、周辺から火山ガスや硫化水素等を含む土砂(銀白色の泥)が噴出した。当該現場を土堰堤で囲み、現在では泥は厚さ15mまで溜っており、現在でも噴出が続いているとのことであった。当該地域は農業にとってミネラルが豊富な土壌であり農作物の高い収穫量が期待できることから、近隣住民は立ち退かない。そのため、土砂災害に対するワーニングシステムの導入が必要であるとの話であった。なお災害によって発生した土砂は、近隣住民を雇用してその搬出作業を行っており、搬出先は河川への直接投入であることから環境への影響評価も必要と考えられる。土砂噴出は10-20年は続く見込み。  また広島の土砂災害に関しては、下深川を中心に縦7km、横1kmのエリアに集中豪雨(三入観測所で120mm/hrの降雨量)が発生し、表面流はどこから発生するのかが予測できない状況であった。急こう配斜面をもつ下流側の扇状地では残土処分場や産廃処分場があり、そこへの土砂侵入が生じたものの死亡者はいないとのことであった(近くの川の氾濫を恐れて避難していた)。当該地域は以前から浸水した例があるので、排水能力を高めるために排水路を1年前に設置していたが、今回の土石流防止には効果が無かった。また竹林でも土石流を止められなかった。発生原因を考察すると、砂質土地盤で降雨量50mm/hrでも土石流が生じた過去の事例は存在するとのことであった。土砂の堆積勾配を測定したところ、設計値よりも1度小さく堆砂量が期待値よりも少なかったことから、余剰分が下流側に流れたとの考察であった。堆砂勾配を見誤った可能性があり、当該現場の真砂土ではそこまでの堆砂勾配が期待できなかったと考えられる。対応策に関しては、オーストリアでは扇状地の半分を人間の生活圏、もう半分は牧草地として土石流へのスキを敢えてつくるとの紹介がなされた。なお、土石流が同じ場所で2度も生じたことは無いため、ハード的な対策は少なからず土石流発生のポテンシャルを高めているという側面もあるとの話がなされた。 2.話題提供 石森講師  東日本大震災における廃棄物処理と今後の大規模災害に備えた研究に関して話題提供があった。東日本大震災で発生した災害廃棄物は、2014年3月において福島県内を除けば、処理が完了しており、有効利用率は82%にも達成していたとのことであった。災害が生じてから1年間は災害廃棄物処理は全く進められておらず、これは、本災害で発生した廃棄物には a) 津波堆積物(有機物)が含まれており腐敗や可燃性ガスの発生が懸念されること、b) 海水をかぶっており、廃棄物処理の過程で、焼却時にダイオキシンの発生が懸念されること、c) 福島第一原発事故の影響で放射性物質が混入したこと、等の特徴があり、それに対する安全・安心な廃棄物処理を検討しなければならなかったためであった。放射能を含む一般廃棄物処理の最終処分方法を提示するまでの、国・自治体における研究内容の紹介がなされており、ここで得られた科学的知見は今後の災害対応においても活かしていくために早期に公開するとともに技術者の養成が必要であるとのことであった。  今後の発生が予想される首都直下地震では東日本大震災と同レベルの被害が、また南海トラフ巨大地震では東日本大震災の10倍の被害が予想されており、そこで発生する災害廃棄物処理には四国地方では最長で144年かかる(近畿地方では45年)とのデータの紹介がなされた。災害に対して強固であり回復力なる社会を指向するためには、廃棄物処理の点からみると、既存の廃棄物処理施設の長寿命化・耐震性強化および廃棄物処施設の損傷に伴う二次災害の防止が求められ、その中で、災害廃棄物の処理フローである焼却→埋立処分→水処理において、各施設での地震時における力学的挙動を調べる必要があるとの研究課題について紹介がなされた。