土質力学 学習のポイント

 本ページは、建設環境学系で開講されている土質関連の講義(土質力学I、土質力学II、基礎演習III(土質)、建設工学実験(土質)・・)の理解を助けるため、本学土系教員(福本、深川、早川、勝見)が作成したものである。土質力学は様々の内容や知識を要するため、何を覚えるべきで何を覚えなくて良いのか、何を理解すればよいのか、何がポイントなのか、必ずしもわかりやすくはない。以下には、学部での土質力学の修得には「これぐらいのレベルはできないといけない」、「これは確実に覚えなければいけない」、「これは覚える必要はなく、導ければよい」といったポイントを区別しながら整理・列記した。学部での土質力学の学習はもちろんのこと、各種試験(大学院入試、公務員試験・・)の準備の参考になるものと、作成者側は考えている。なお、これは完成版ではなく、今後適宜改訂する。このホームページに関する質問・問い合わせ等は、土木工学科 深川教授までお願いします。


目次                  (該当講義)

全体共通事項
土の基本的物理量      (土質力学I、基礎演習III
粒度・コンシステンシー
   (土質力学I、基礎演習III
土中の水理
         (土質力学I、基礎演習III
締固め
           (土質力学I、基礎演習III
圧密
            (土質力学I、基礎演習III
せん断
           (土質力学I、基礎演習III
土圧
            (土質力学II、基礎演習III
土中の応力と変位
      (土質力学II、基礎演習III
支持力
           (土質力学II、基礎演習III
斜面安定
          (土質力学II、基礎演習III
その他
           (土質力学I、土質力学II、基礎演習III


全体共通事項

     公式は、暗記よりもその内容や現象を理解すること。それを他人に説明できること。

     重要な語句は、確実に説明ができること。似ている語句が多いので、不明瞭な説明ではいけない。

     単位の使い方を確実にすること。特に質量(kg)と重力(kgfN)の関係を、運動方程式により理解すること。(質量1 kgの物体に作用する重力は、重力加速度9.8 m/s2を用いて、F = ma = 1 (kg)×9.8 (m/s2) = 9.8 (kg m/s2)となる。この単位「kg m/s2」が「N」のことで、結局「質量(kg単位表示)に9.8を乗じることにより重力(N単位表示)となる」ことを我々は習っている。9.8を乗じるのが煩わしい場合、質量の単位kgに単純にfをつけて、「kgf」を重力の単位として用いることができる。)また、圧力の単位(kgf/cm2tf/m2kN/m2kPaなど)は自在に変換できるようにすること。水の質量・密度を思い出して、水頭を圧力に変換できるようにすること。(1 mの水頭によって生じる水圧を求めてみる。1 cm2の平面に1 mの水の柱が立ったと考えると、水柱の体積は1 (cm2)×1 (m) = 100 (cm3)、水の密度は1 g/cm3だから水柱の質量は100 g = 0.1 kg、よって、生じる水圧は0.1 kgf/cm2となる) 質量と重量、圧力の単位変換は、仮に忘れても、その場で導けないといけないし、必ず導ける!

土の基本的物理量

     いつでも、三相モデルの図を書くこと。式をいたずらに覚える必要はない。

     間隙比(間隙率)、飽和度、含水比、土粒子の比重(または密度)は定義を覚えること。日本語のニュアンスが充分に助けてくれる。

     三相モデルの図から、湿潤単位体積重量(湿潤密度)、乾燥単位体積重量(乾燥密度)、飽和単位体積重量、水中単位体積重量の式が導けること。式を忘れても図から導ければよい。

     上記の諸量の関係式(教科書に載っているもの等)は、三相モデルの図から導ければよい。式を覚える必要は全くない。

     密度と単位体積重量の違いを理解すること。前者は質量を、後者は重量をそれぞれ体積で除したもの。

     含水比、土粒子の比重(密度)、単位体積重量は直接測定できる。測定の仕方を知ること。(土粒子の比重試験のエッセンスは、土粒子の体積を正確に測ることである。)

     用語(上記以外のもの): 相対密度、最小密度、最大密度・・・

粒度・コンシステンシー

     粒度はふるい分け分析と沈降分析により求める。沈降分析では比重浮標を用いるが、これにより何故粒径分布が求まるのか、理解すること。ただし、ストークスの式を覚える必要はない。粒子の粒径が大きいほど、その沈降速度が大きいことを知っておればよい。(比重浮標で測定しているのは、ある深さにおける液体の比重である。水の中に土粒子がたくさん混じっているほど、液体の比重は高くなる。粒の大きな粒子ほど沈降速度は速く、細かい土粒子ほど沈降速度は遅いことを利用する。)

     液性限界、塑性限界の求め方を説明できるようにする。

     用語説明(必須のもの): 粒径加積曲線、コンシステンシー、液性限界、塑性限界、塑性指数、液性指数、鋭敏比・・・

     用語説明(少しアドバンスのもの): 収縮限界、塑性図、活性度、団粒構造、綿毛構造、粘土鉱物・・・

     土の分類は、細かい粒径区分まで覚える必要はない(例えば「5 mm以下は粘土」など → これらは我が国の基準であり、国際基準ではない!)。ただし、粒径の順にれき分、砂分、シルト分、粘土分であることぐらいは覚えておく。

土中の水理

     ダルシー則(v = k i :流速は動水勾配と透水係数に比例する)は、絶対に覚える。暗記ではなく、理解・イメージで覚えること。動水勾配は、(全)水頭差を距離で除したもの。(透水試験を行った場合、h(水頭差)が大きいほど、A(供試体断面積)が大きいほど、L(土試料の供試体の長さ)が小さいほど、Q(流量)は大きくなる。すなわち、Qh A/Lに比例する。その比例定数を透水係数と考えればよい)

     (全水頭)=(圧力水頭)+(位置水頭) である。というより、求める順序から言うと、

(全水頭)−(位置水頭)=(圧力水頭) である。

動水勾配を求めるには全水頭を、ダム底面の揚水圧を求めるには圧力水頭を用いる。

     クイックサンドが起こる臨界動水勾配の式は覚える必要はないが、その導き方は理解しておくこと。有効応力がゼロになると、クイックサンドが起こる。

     定水位透水試験、変水位透水試験から透水係数を求める方法を理解すること。透水係数を求める式(特に変水位)は、暗記する必要はない。導き方を知っておればよい。

     ダムや矢板まわりの流線網が描けること。さらに、流量、ダム底面に作用する揚水圧の求め方を知ること。

     互層地盤(物性の異なる層が複数重なっている地盤)の水平や鉛直方向の層全体としての透水係数を求める式(kh = S ki di / S di, および kv = S di / S di/ki)は覚える必要はないが、導ける必要はある。前者は各層の動水勾配(水頭差)が等しいこと、後者は各層の流量が等しいことを利用する。すなわち、いずれにしても「土中の水理」では、水頭と流量さえ征服すればよい。

締固め

     用語(必須のもの): 最適含水比、最大乾燥密度、

 

圧密

     圧密現象の定義「飽和した粘土(低透水性)が荷重を受け、内部の間隙水を排出しながら長時間かかって体積を減少していく現象」は、必須。

     本章の目的は、「圧密(最終)沈下量を求めること」と「所定の圧密量(度)に達するのに要する時間を求めること」に尽きる。

     地盤条件、載荷条件が与えられたときに、正確に有効応力が計算できること。

     圧密試験のだいたいの方法、e-log p曲線の描き方と圧密降伏応力・圧縮指数の求め方、各荷重段階での圧密係数の求め方、等をよく理解しておくこと。

     圧密沈下量の求め方を理解すること。

     テルツァーギの一次元圧密の基礎方程式は、教科書をみながら一度自分で導いてみること。導き方を覚える必要はないが、用いられている仮定(ダルシー則、水の連続式、土の有効応力−ひずみ関係、全応力一定)を理解すること。

     圧密度を求める手順を、理解すること。粘土層が両面排水か、片面排水か、注意すること。

     用語(必須のもの): 正規圧密、正規圧密粘土、正規圧密領域、過圧密、過圧密粘土、過圧密領域、過圧密比、圧密降伏応力、先行圧縮応力、圧縮指数、圧縮係数、圧密度、時間係数、漸増荷重、過剰間隙水圧、サンドドレーン・・・

     用語(少しアドバンス?): 等時曲線、二次圧密・・・

     「応力」と「ひずみ」は、説明できること。

せん断

     土圧、支持力、斜面安定の理解には、「せん断」の理解は必須である。

     土の破壊とは、せん断応力 > せん断抵抗

     用極法により、最大せん断応力とその作用面、主応力とその作用面、破壊線との関係を知ることができる、その手順を理解すること。

     (モール・クーロンの破壊基準(t = c + s tan f)は、人間が便宜上きめた「規準」であり、必ずしも土がこのように振る舞うとは限らない。)

     一面せん断試験、三軸圧縮試験、一軸圧縮試験、ベーンせん断試験の方法と特徴、適用性を理解すること。

     非圧密非排水試験(UU試験)、圧密非排水試験(CU試験)、圧密排水試験(CD試験)の方法と適用性を理解すること。飽和粘土のUU試験、CU試験、不飽和粘土のUU試験結果について説明できること。

     用語(必須のもの): 強度増加率(cu/p)、ダイレイタンシー、破壊包絡線、鋭敏比、クイッククレー・・・


土圧

     壁体の変位と、静止土圧、主働土圧、受働土圧の関係を理解すること。主働土圧 < 静止土圧 < 受働土圧

     クーロン土圧(壁体の背後にくさび状の土塊を考え、その土塊に作用する力の釣り合いから壁体に作用する土圧を求める)の求め方の説明ができ、簡単な場合(粘着力なし、裏込め地表面に傾斜なし、壁体背面の摩擦なし)の主働土圧、受働土圧が、力の釣り合い→偏微分より導けること。

     ランキン土圧(地盤が塑性破壊状態にあると仮定して得られる土圧)の説明ができ、簡単な場合の土圧係数(K0)と水平応力(sH = K0sV)が求められ、水平応力を積分することにより土圧合力が求められること。土圧合力の式は(深さによって土層が異なったり地下水位がある場合は特に複雑となるので)無理に覚える必要はない。水平応力分布図を描いて、それをもとに図解的に(あるいは積分して)土圧合力とその作用重心が求められればよい。

     主応力によるモール・クーロンの破壊基準の式s1 - s3 = 2c cos f + (s1 + s3)sin f)は、ランキン土圧を求める際によく用いるので、モール円を描いて導く方法を覚えておくこと。式そのものを覚えておく必要はない。

     クーロン土圧、ランキン土圧ともに、複雑な場合の土圧式は導ける必要はないし、式を覚える必要もない。ただし、導き方のステップを一度理解しておくこと。

     各種構造物(擁壁、土留め工、矢板など)に対する土圧論の適用は、無理に公式を覚える必要はない。構造物の設計に土圧論をどのように使うのか、一通り理解すればよい。

     用語(上記以外のもの): 臨界高さ、静止土圧係数、主働土圧係数、受働土圧係数、共役応力・・・

土中の応力と変位

     ブシネスクの解の使い方を知ること。式を覚える必要はない。応力成分はポアソン比のみに依存する。重ね合わせの原理が成り立つ。

     線形荷重、帯状荷重による弾性解は、ブシネスクの解を拡張して求められる。その求め方(考え方、拡張の仕方)を知っておくこと。式を覚える必要はない。

     Koglerの理論(帯状荷重を受ける地盤内応力が、ある閉合した領域内でいわゆる直線的な分布をする)は最も簡単であるが、よく用いられる。

     用語(上記以外のもの): 圧力球根、地盤反力係数、影響円、影響値、ポアソン比・・・

支持力

     まず、どんな基礎形式(フーチング、杭・・・)があるか、知っておくこと。

     テルツァーギの支持力公式は、覚える必要はないが、3つの項が意味するところ(滑り面より上の土の自重の項、粘着力の項、根入れの項)は明確に述べられなければならない。塑性平衡状態から極限支持力を求めていることを知ること。

     杭基礎の支持力発生機構(先端支持、下部地盤における支持、周面摩擦、水平抵抗など)を理解しておくこと。支持力公式は、マイヤホッフの式がよく用いられる。

     用語(必須): ネガティブフリクション、許容支持力・・・


斜面安定

     安全率の定義: (すべりに抵抗する力・モーメント)/(すべりを起こそうとする力・モーメント)

     いつくかの安定解析法があるが、主なものの解析のやり方、考え方を理解し、どのように解析するのか説明できるようにすること。たいていの場合は、式を覚えておく必要はない。

     有効応力解析と全応力解析はどのように異なるのか、どのような場合(短期、長期、盛土、切土・・・)に用いるのか、理解しておくこと。

     用語(必須): 安息角、臨界高さ・・・

その他

     用語(必須): 液状化、固有周期、卓越周期、サクション、ヒステリシス・・・

     用語(少しアドバンス?): 強熱減量、ベントナイト・・・

 


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This page has been prepared by the Rits-Geotech faculty members,
and maintained by Dr. Ryoichi Fukagawa and Dr. Takeshi Katsumi.
Last updated on July 30, 2002.