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以下は、2002年度〜2006年度におこなっていた研究テーマです。もちろん、これからも継続しておこなっていきます。

 

2006年度 卒業論文・修士論文 研究テーマ

 

2006年度には、以下のような研究テーマで卒業論文、修士論文の作成をおこないました。

研究テーマ(1)【意識調査に基づく自転車・歩行者混在交通の錯綜現象の危険度評価】

 自転車交通の行動特性は歩行者、自動車とは異なるため、その行動予測や安全対策の考え方も異なります。これまでの研究では、自動車交通の錯綜現象分析に用いられているTTC(Time to Collision)指標と、自転車・歩行者の占有空間を用いた錯綜現象指標の2種を適用し、自転車・歩行者混在交通の錯綜現象分析をおこなってきました。本研究では、これまでの自転車・歩行者の占有空間を用いた錯綜現象分析をもとに、意識調査に基づき、自転車・歩行者の占有空間のどの範囲における錯綜現象がより危険であるのかについて検討をおこないました。その結果、占有空間およびその周辺の空間での錯綜現象の危険度は同一ではなく、錯綜現象が発生する空間的範囲によって異なることがわかりました。

研究テーマ(2)【国道176号バイパスにおける自動二輪車の走行挙動分析】

 大阪市内における国道176号現道とバイパス(十三バイパス)の合流点となる区民センター前交差点(大阪市淀川区)付近においては、交通量が多く、道路形状が複雑であることから、多くの交通錯綜現象が起こっています。また、周辺の道路ネットワークの形状や交通規制との関係により、原付も多くこのバイパスに合流して走行していることから、四輪車、二輪車の両者にとって危険な状態となっています。本研究では、国道176号バイパス(十三バイパス)における二輪車の走行挙動を観測し、交通錯綜現象の実態を把握するとともに、交通規制の変更による交通錯綜現象の減少の可能性を検討します。(継続中)

研究テーマ(3)【車線幅員と中央帯が二輪車の走行挙動に及ぼす影響に関する分析】

 二輪車は四輪車に比較して機動性が高いため、渋滞時には路肩を利用して四輪車の左側をすり抜けて走行する状況が多くみられ、これらが巻込み事故やサンキュー事故を誘発する要因となっています。これまでの研究により、路肩幅員の縮小が二輪車の路肩走行時の速度低下に一定の効果をもつことが示されていますが、国道1号のようなゼブラ標示による中央帯をもつ往復2車線道路においては、路肩幅員の縮小により中央帯を利用した二輪車の追い越しが増加することが考えられます。そこで本研究では、路肩幅員の比較的小さい往復2車線の幹線道路を対象に、車線幅員の大小や中央帯の有無による二輪車の路肩走行挙動、中央帯からの追い越し挙動への影響について分析をおこないました。

研究テーマ(4)【自動車保有・利用ライフスタイルの費用に関する分析】

 現在では多くの人が自家用車を保有し、日常生活に自家用車を使うことを前提としたライフスタイルをとっています。このようなライフスタイルは、非常に便利である反面、自家用車の購入費、維持費、燃料費、さらには交通事故の危険性なども含めると、多くの費用がかかります。この研究では、自家用車の利用を前提とする場合、公共交通の利用を前提とする場合の、日常的な交通行動に要する費用を比較することにより、自家用車を使うことを前提としたライフスタイルは本当に合理的なのかを考えます。(継続中)

研究テーマ(5)【交通情報の精度が経路選択行動に及ぼす影響に関する研究】

 近年、道路交通においては道路情報板、カーナビゲーション等、さまざまな種類、内容の情報がドライバーに提供されています。より精度の高い交通情報をドライバーに提供するためにはさまざまな手間や費用が掛かりますが、提供される情報の精度がドライバーの行動にどのように影響を及ぼすのかについては、あまりよくわかっていません。
 本研究では、交通情報の精度がドライバーの経路選択行動に及ぼす影響について、アンケート調査の結果にもとづきモデル分析をおこないました。その結果、提供される所要時間情報の精度によってドライバーの経路選択行動が異なることがわかり、交通情報の精度がドライバーの経路選択行動に影響を及ぼしていることが示されました。このような研究を通じて、今後の交通情報提供システムの整備に対しての知見が得られると考えています。

研究テーマ(6)【信号切り替わり時における平面交差点の安全性評価手法に関する研究】

 平面交差点の信号制御では、現示が切り替わる際に交差点内に残る車両を一掃するため、クリアランス時間(黄時間+全赤時間)が設定されます。これらは交差点の形状や車両の走行速度などに応じて設定されますが、逆にこの存在を見越して交差点に無理な進入をする車両も多く存在し、危険な状態となっています。
 本研究では、交差点の信号切り替わり時における自動車走行挙動について分析し、ドライバーの無謀な運転行動がもたらす危険性について定量的に評価しました。その結果、提案された評価方法によって信号切り替わり時における危険性が定量的に評価でき、信号制御方法による危険性の比較が可能であることが示されました。また、このような分析に対する簡易ドライビングシミュレータの適用可能性についての検討もおこないました。このような研究を通じて、今後の交差点の信号制御方法の検討に対しての知見が得られると考えています。

 

2005年度 卒業論文・修士論文 研究テーマ

 

2005年度には、以下のような研究テーマで卒業論文、修士論文の作成をおこないました。

研究テーマ(1)【右折専用現示の有無による信号切り替わり時の自動車走行挙動の比較】

 平面交差点の信号制御では、現示が切り替わる際に交差点内に残る車両を一掃するため、クリアランス時間(黄時間+全赤時間)が設定されます。これらは交差点の形状や車両の走行速度などに応じて設定されますが、逆にこの存在を見越して交差点に無理な進入をする車両も多く存在し、危険な状態となっています。本研究では、右折専用現示のある交差点とない交差点との両者について、信号切り替わり時における「フライング」や「無理な進入」などの自動車走行挙動を観測し、その違いを比較しました。またこれにもとづき、信号切り替わり時における交差点内での接触事故の発生確率を導くことで、交差点内での危険性を定量的に評価しました。これらにより、右折専用現示のある交差点では、青現示の開始時よりも右折専用現示の開始時の方が接触事故の発生確率が大きいこと、青現示の開始時と右折専用現示の開始時では接触事故の発生確率に影響を及ぼす要因が異なることなどがわかりました。

研究テーマ(2)【渋滞時における自動二輪車の走行挙動と道路幅員構成との関連分析】

 国道1号のように、長距離交通と短距離交通とが混在した道路では、大型車、普通車、二輪車などのさまざまな車両が混在して走行しています。このような道路では、渋滞時には路肩を二輪車がすり抜けて走行する一方、非渋滞時には原付などの低速の二輪車を普通車や大型車が追い越して走行しており、これらに起因する多くの交通事故が発生しています。こうした二輪車に関するすり抜け挙動、追い越し挙動は、路肩幅員、車線幅員など、道路の幅員構成によって異なるため、交通安全対策を検討する上では道路の幅員構成と二輪車、四輪車の走行挙動との関係を把握する必要があります。本研究では、滋賀県大津市内の国道1号を対象に、渋滞時における二輪車の走行挙動と道路の幅員構成との関係について分析し、路肩幅員の大小による二輪車の走行位置、走行速度などの比較をおこないました。これにより、渋滞時においては路肩幅員を小さくすることによって、すり抜け挙動をおこなう二輪車の走行速度を抑制できることがわかりました。

研究テーマ(3)【国道176号バイパスにおける自動二輪車の走行挙動分析】

 大阪市内における国道176号現道とバイパス(十三バイパス)の合流点となる区民センター前交差点(大阪市淀川区)付近においては、交通量が多く、道路形状が複雑であることから、多くの交通錯綜現象が起こっています。また、周辺の道路ネットワークの形状や交通規制との関係により、原付も多くこのバイパスに合流して走行していることから、四輪車、二輪車の両者にとって危険な状態となっています。本研究では、国道176号バイパス(十三バイパス)における二輪車の走行挙動を観測し、交通錯綜現象の実態を把握するとともに、交通規制の変更による交通錯綜現象の減少の可能性を検討します。(継続中)

研究テーマ(4)【非渋滞時における自動二輪車の走行挙動と道路幅員構成との関連分析】

 国道1号のように、長距離交通と短距離交通とが混在した道路では、大型車、普通車、二輪車などのさまざまな車両が混在して走行しています。このような道路では、渋滞時には路肩を二輪車がすり抜けて走行する一方、非渋滞時には原付などの低速の二輪車を普通車や大型車が追い越して走行しており、これらに起因する多くの交通事故が発生しています。こうした二輪車に関するすり抜け挙動、追い越し挙動は、路肩幅員、車線幅員など、道路の幅員構成によって異なるため、交通安全対策を検討する上では道路の幅員構成と二輪車、四輪車の走行挙動との関係を把握する必要があります。本研究では、滋賀県大津市内の国道1号を対象に、非渋滞時における二輪車、四輪車の走行挙動と道路の幅員構成との関係について分析し、路肩幅員の大小による二輪車、四輪車の走行位置、走行速度などの比較をおこないました。これにより、非渋滞時においても路肩幅員の大小によって二輪車、四輪車の走行位置や走行速度が異なることがわかりました。

研究テーマ(5)【信号交差点における歩行者の無謀横断に関する要因分析】

 交差点における自動車と歩行者との交通事故の中には、歩行者の交通ルールの無視により発生する事故も多く含まれています。本研究では、信号機が設置されている交差点の横断歩道を対象に、信号表示が青から赤に切り替わる際の横断歩行者の挙動について調査をおこない、歩行者の無謀横断の要因分析をおこないました。具体的には、信号の待ち時間、自動車交通量、歩行者交通量などの交差点要因と、周辺の自動車の有無、周辺の歩行者の挙動などの個々の状況要因について、横断歩行者の挙動との関係を分析することにより、信号切り替わり時における歩行者の無謀横断の要因を定量的に分析しました。また、無謀横断の要因として信号サイクル長にともなう信号の待ち時間を取り上げ、待ち時間を短縮することによる無謀横断の減少の可能性について検討しました。

研究テーマ(6)【自転車走行空間の整備のための自転車・歩行者の錯綜現象分析】

 立命館大学BKCでは、多くの学生が自転車で通学しています。このためBKC周辺では、通学時間帯に大量の自転車交通が集中し、渋滞、事故なども発生しています。自転車利用者の行動特性は歩行者、自動車とは異なるため、その行動予測や安全対策の考え方も異なります。しかしながら、従来の道路計画においては自転車交通の位置付けが不明確であったため、現状では多くの道路において十分な自転車走行空間が整備されていない状況にあります。
 道路条件や交通条件に応じた適切な自転車走行空間の整備方法を検討するには、自転車・歩行者交通における危険性についての定量的な評価指標が必要になります。本研究では、歩道上における自転車・歩行者交通の錯綜現象の分析をおこない、定量的な錯綜現象指標の提案をおこないました。具体的には、自動車交通の錯綜現象分析に用いられているTTC(Time to Collision)指標と、自転車・歩行者の占有空間を用いた錯綜現象指標の2種を適用し、その適用性の検討をおこないました。これにより、これらの錯綜現象指標の自転車・歩行者交通に対する適用可能性と、自転車・歩行者交通に適用する上での課題点などが示されました。

 

2004年度 卒業論文 研究テーマ

 

2004年度には、以下のような研究テーマで卒業論文の作成をおこないました。

研究テーマ(1)【大都市圏における個人的交通費用の比較分析】

 現在では大都市圏においても、多くの人が日常的に自動車を利用したライフスタイルをとっています。このようなライフスタイルは、非常に便利である反面、自動車の購入費、維持費、また交通事故の危険性なども含めると、多くの個人的、社会的コストがかかります。本研究では、東京、大阪の2大都市圏を対象に、都市圏内での移動にかかる所要時間、所要費用からなる一般化費用を算定し、都市圏内での移動における自動車利用、公共交通利用に対する個人的な交通費用の比較をおこないました。これにより、いずれの都市圏においても短距離の移動に関しては自動車の費用が、中・長距離の移動に関しては公共交通の費用が相対的に小さく、個人的交通費用の面からは合理的であることがわかりました。また東京と大阪とを比較すると、大阪の方が地域ごとの公共交通の整備状況の違いによる影響が大きく、公共交通の密度によって都市圏ごとの特性の違いがあることがわかりました。

研究テーマ(2)【自動車利用ライフスタイルと公共交通利用ライフスタイルの交通費用に関する比較分析】

 現在では多くの人が、自動車を使うことを前提としたライフスタイルをとっています。このようなライフスタイルは、非常に便利である反面、自動車の購入費、維持費、また交通事故の危険性なども含めると、多くの個人的、社会的コストがかかります。しかしながら、多くの自動車利用者は、直接的な金銭費用ではない自動車利用のコストについては、十分に認識していないのではないかと思われます。本研究では、草津市と湖南市(旧・甲賀郡甲西町域)を対象に、自動車利用のライフスタイル、公共交通利用のライフスタイルを想定し、自動車の購入費、維持費のような直接的な費用と、通勤交通を対象とした所要時間、所要費用、また交通事故の遭遇確率などについて、交通費用の試算をおこないました。これにより、ライフスタイルによる平均的な交通費用の比較をおこないました。

研究テーマ(3)【定温物流における配車・配送計画に対する共同配送導入効果の検討】

 食料品の輸送など、温度管理が必要な物資の輸送を定温物流と呼びます。本研究では、複数の温度帯の物資の輸送に対して、共同配送を導入することによる輸送コストの削減効果を検討しました。具体的には、遺伝的アルゴリズムを用いることにより、共同配送を考慮した配車・配送計画モデルを作成しました。これを用いて、滋賀県内に複数の店舗をもつ大型小売店を対象に、複数温度帯の食料品に対する共同配送の有無について、トラックの総走行距離、走行経費などの比較をおこないました。その結果、共同配送の導入によってトラックの総走行距離は削減されるものの、トラックの維持管理費なども考慮した走行経費の比較では必ずしも輸送コストが削減されるわけではなく、対象とする店舗の配置状況、輸送する物資の量などによって導入効果は異なることが示されました。

研究テーマ(4)【交通ネットワーク特性にもとづく文化遺産の防災性評価の検討】

 京都のように、多くの文化遺産をもつ歴史都市では、災害発生時においても文化遺産を適切に守ることが必要になります。そのためには、文化遺産それ自身の防災性能を高めるとともに、周辺の道路ネットワークや防災施設の配置との関係にもとづき、適切な施設整備や交通管理を考えることが必要となります。本研究では、京都市内の文化遺産、消防施設の配置状況および道路ネットワークに関するGISデータベースを構築し、これをもとに、文化遺産ごとの消防施設からの道路距離、広幅員道路からの細街路を用いた道路距離などを計測して、大規模震災時を想定した文化遺産ごとの危険度を示す指標を作成しました。これにより、大規模震災時に使用できる一定幅員以上の道路ネットワークにおいては消防施設からの到達可能性が低い文化遺産が存在しており、文化遺産防災のためには適切な道路整備もしくは消防施設整備が必要であることがわかりました。(21世紀COEプログラムの研究の一部です)

研究テーマ(5)【平面交差点における信号切り替わり時の自動車走行挙動の分析】

 平面交差点の信号制御では、現示が切り替わる際に交差点内に残る車両を一掃するため、クリアランス時間(黄時間+全赤時間)が設定されます。これらは交差点の形状や車両の走行速度などに応じて設定されますが、逆にこの存在を見越して交差点に無理な進入をする車両も多く存在し、危険な状態となっています。本研究では、このような信号切り替わり時の自動車の走行挙動について分析し、こうした運転挙動による交通事故の危険性を定量的に評価しました。具体的には、交差点内での自動車挙動を観測し、信号切り替わり時の「フライング」や「無理な進入」など、危険を導くと考えられる自動車挙動がどの程度発生しているかを計測しました。これにもとづき、信号切り替わり時における交差点内での接触事故の発生確率を導くことで、これらの運転挙動に起因する交差点内での危険性を定量的に評価しました。

研究テーマ(6)【カーナビゲーションからの経路誘導情報に対するドライバーの経路選択行動の分析】

 近年、道路交通においては交通管理者が提供するさまざまな交通情報に加え、カーナビゲーション、VICS等に代表される車載の情報機器が普及しており、さまざまな種類、内容の情報が混在しています。本研究では、カーナビゲーションによってリアルタイムの交通情報を得たドライバーが、どのような経路選択行動をおこなうのかを、経路選択行動モデルを作成することにより分析しました。これにより、カーナビゲーションによって提示される推奨経路の特性や、同時に提示される所要時間情報の内容などが、ドライバーの経路選択行動に及ぼす影響を分析しました。これをもとに、都市交通管理として適切な交通情報の提供方法について検討をおこないました。

研究テーマ(7)【自転車利用者の歩車道選択行動特性に関する研究】

 近年、環境負荷の軽減のため、交通手段としての自転車の利用が見直されてきています。自転車利用を促進するため、効率的な自転車走行空間の整備をおこなうためには、自転車利用者の行動特性を把握する必要があります。本研究では、歩道が設置された道路上における自転車の歩車道選択行動について、意識調査にもとづきモデル分析をおこないました。具体的には、自転車通学者の多い立命館大学BKCの学生を対象に、自転車走行時における歩車道選択行動に対する意識調査をおこないました。これにより、歩道上の整備状況、歩行者・自転車の交通量、自動車の交通量などをもとに、非集計行動モデルによる歩車道選択行動の分析をおこないました。結果として、自転車走行時の経路選択においては距離が最も重視されているものの、歩車道選択の要因としては、歩道幅員や歩行者交通量などが重視されていることがわかりました。

 

2003年度 卒業論文 研究テーマ

 

2003年度には、以下のような研究テーマで卒業論文の作成をおこないました。

研究テーマ(1)【カーナビゲーションによる情報提供を考慮した経路選択行動の分析】

 近年、道路交通においては交通管理者が提供するさまざまな交通情報に加え、カーナビゲーション、VICS等に代表される車載の情報機器が普及しており、さまざまな種類、内容の情報が混在しています。本研究では、カーナビゲーションによってリアルタイムの交通情報を得たドライバーが、どのような経路選択行動をおこなうのかを、経路選択行動モデルを作成することにより分析します。これにより、カーナビゲーションによって提示される推奨経路の特性や、同時に提示される所要時間情報の内容などが、ドライバーの経路選択行動に及ぼす影響を分析します。これをもとに、都市交通管理として適切な交通情報の提供方法について考えます。(継続中)

研究テーマ(2)【カーブ走行時における走行挙動特性の把握に対する簡易DSの適用性に関する研究】

 コンピュータの技術的発展にともなって、より現実に近い自動車の走行状態が再現できるドライビングシミュレータ(DS)が開発されています。これにより、実際の道路上で走行実験をおこなうことなく、交通事故多発地点における自動車の走行挙動特性を分析することが可能となってきています。本研究では、簡易DSを用いた交通事故多発地点の走行挙動分析の可能性を検討するため、滋賀県内の交通事故多発地点の1つである県道近江八幡大津線(湖岸道路)のカーブ区間における走行挙動分析をおこないました。具体的には、カーブ区間の走行時における走行速度、車線内での走行位置などを簡易DSにより計測し、現地調査による実走行車両の走行挙動特性との比較をおこないました。これにより、簡易DSと実走行車両との走行挙動の類似点と違いを明らかにし、交通安全対策の検討に対する簡易DSの適用可能性について検討をおこないました。

研究テーマ(3)【自転車の錯綜現象に対する客観的指標の適用に関する研究】

 近年、環境負荷の軽減のため、交通手段としての自転車の利用が見直されてきています。しかしながら、多くの道路には十分な自転車の通行スペースが設けられていないため、歩行者もしくは自動車と混在して走行することになり、自転車交通の安全性を確保することが課題となっています。本研究では、自動車交通の錯綜現象の分析に用いられる代表的な指標であるTTC(Time to Collision)指標について、自転車交通の錯綜現象に対する適用可能性の検討をおこないました。具体的には、立命館大学BKC周辺における通学学生の自転車交通流をビデオ撮影により観測し、自転車同士、および自転車と歩行者との間のTTC指標の算出をおこないました。これにより、ほぼ自動車交通と同様に適用できることが示されました。しかしながら、自転車の走行特性(走行速度、左右のふらつきなど)は自動車とは異なること、また多くの道路では歩行者もしくは自動車と混在して走行していることなど、自転車交通には自動車交通と異なる条件が多く存在するため、今後これらの影響を考慮した指標を作成することが必要になると考えられます。

研究テーマ(4)【ETCを考慮した料金所モデルを用いた都市高速道路の交通管理に関する検討】

 現在、都市間および都市内の高速道路では、自動料金収受システム(ETC:Electronic Toll Collection System)の運用がおこなわれています。このようなETCの導入による交通状況への影響や、それにともなう交通管理の影響について分析や評価をおこなうためには、時々刻々と変化する交通現象を再現するための渋滞シミュレーションを用いることが有用です。本研究では、都市高速道路の1つである阪神高速道路堺線を対象として作成された渋滞シミュレーションをもとに、ETCブース、混合ブースの導入を考慮した料金所モデルを作成しました。これをもとに、ETC対応車両の普及率、料金所へのETCブース、混合ブースの導入数と、本線上の渋滞状況、料金所の待ち行列長との関係について分析しました。これにより、ETC対応車両の普及状況に応じた最適なETCブース、混合ブースの導入数について検討をおこないました。

研究テーマ(5)【自動車利用を想定した認知所要時間の形成要因の分析】

 たとえば、ある観光地に初めて行くような場合には、我々は地図を見たり、いろいろな交通情報を見たりして「だいたい○分くらいで行けるだろう」と想定します。これを「認知所要時間」と呼びます。ドライバーはこの認知所要時間にしたがって経路選択行動や出発時刻選択行動をおこなっていると考えられるため、たとえば交通情報提供や経路誘導をおこなう際には、ドライバーの認知所要時間を把握することが必要になります。本研究では、自動車利用者の認知所要時間についてアンケート調査をおこない、走行距離、道路種別、対象経路の走行経験などの形成要因との関連について分析しました。これにより、地図上に表示される内容から所要時間を推定する場合、走行距離、道路種別(高速道路、国道、都道府県道、その他)が影響していること、また免許取得後の年数によって認知所要時間の傾向が異なることがわかりました。

研究テーマ(6)【野路南交差点における信号制御に関するシミュレーション分析】

 野路南交差点(滋賀県草津市)周辺は、国道1号の通過交通と、JR南草津駅への流入、流出交通などによって非常に混雑しています。またこの交差点周辺は、国土交通省の「あんしん歩行エリア」および「くらしのみちゾーン」にも含まれるなど、国道1号の通過交通のみならず地域の生活交通のための道路でもあり、歩行者、自転車などの安全性、利便性にも配慮する必要があります。また、隣接する野路北口交差点では、すでに歩車分離信号が導入されています。本研究では、交差点の信号制御による交通状況への影響を分析するため、信号交差点のシミュレーションモデルを作成しました。これを用いて、信号制御のサイクル、青時間比と、方向別の通過交通容量、待ち行列長との関係について分析しました。これにより、歩行者交通にも配慮した信号制御の方法について検討をおこないました。

研究テーマ(7)【自動車保有の有無による交通費用の比較に関する研究】

 現在では多くの人が、自動車を使うことを前提としたライフスタイルをとっています。このようなライフスタイルは、非常に便利である反面、自動車の購入費、維持費、また交通事故の危険性なども含めると、多くの個人的、社会的コストがかかります。しかしながら、多くの自動車利用者は、直接的な金銭費用ではない自動車利用のコストについては、十分に認識していないのではないかと思われます。本研究では、草津市と甲賀郡甲西町を対象に、自動車利用のライフスタイル、公共交通利用のライフスタイルを想定し、自動車の購入費、維持費のような直接的な費用と、通勤交通を対象とした所要時間、所要費用、また交通事故の遭遇確率などについて、交通費用の試算をおこないました。これにより、ライフスタイルによる平均的な交通費用の比較をおこないました。

研究テーマ(8)【無信号交差点における自動車運転挙動の分析に対する簡易DSの適用性に関する研究】

 コンピュータの技術的発展にともなって、より現実に近い自動車の走行状態が再現できるドライビングシミュレータ(DS)が開発されています。これにより、実際の道路上で走行実験をおこなうことなく、交通事故多発地点における自動車の走行挙動特性を分析することが可能となってきています。本研究では、簡易DSを用いた交通事故多発地点の走行挙動分析の可能性を検討するため、滋賀県内の交通事故多発地点の1つである県道近江八幡大津線(湖岸道路)の無信号交差点における走行挙動分析をおこないました。具体的には、右折車両の滞留による後続車両の挙動への影響について、右折車両の停止位置による後続車両のドライバーの運転挙動の違いを簡易DSにより分析し、現地調査による実走行車両の走行挙動特性との比較をおこないました。これにより、交通安全対策の検討に対する簡易DSの適用可能性について検討をおこないました。

研究テーマ(9)【時間帯別の需要交通量の変化を考慮した都市高速道路の混雑料金に関する研究】

 都市高速道路の混雑を緩和し、適正な費用負担を促進するための方策として、ピーク時間帯に通常より高い料金を賦課する、混雑料金の導入があります。しかしながら、現実に混雑料金を導入するためには、対象道路に応じた適切な交通費用関数、交通需要関数を推定し、混雑料金賦課額の算定をおこなう必要があります。本研究では、都市高速道路(阪神高速道路堺線)の渋滞シミュレーションを用いて、適正な混雑料金賦課額の算定や、混雑料金の導入による交通状況への影響を分析しました。とくに、都市高速道路では朝のピーク時間帯における交通渋滞が激しいことから、時間帯ごとの需要交通量の変化を考慮して、時間帯別の混雑料金の賦課額を算定しました。これにより、渋滞発生の初期段階に混雑料金を賦課することにより、適正な費用負担をおこなうとともに、本線上の交通渋滞が大きく緩和されることがわかりました。

 

2002年度 卒業論文 研究テーマ

 

2002年度には、以下のような研究テーマで卒業論文の作成をおこないました。

研究テーマ(1)【無信号交差点におけるAHS-i導入によるドライバーの判断への影響】

 情報提供や警報によりドライバーの状況認識や判断を支援するシステムによって、多くの交通事故を未然に防ぐことができると考えられています。このような背景から、AHS(走行支援道路システム)に関する研究、開発が進められています。本研究では、AHSサービスの1つである出合頭衝突防止支援を対象として、再現VTRを用いた仮想実験をおこない、AHS-iの有無がドライバーの判断にどのような影響を与えているかを分析しました。具体的には、無信号交差点の従道路からの進入車両のドライバーを想定し、AHS-iの有無による、優先道路の車間に対するドライバーの判断時間、判断の正否などについての計測をおこないました。その結果、本研究の実験範囲では、判断行動の結果にはあまり影響を及ぼしていないものの、より早く情報を提供する方がドライバーに安心感を与え、かつ判断時間がやや早くなることがわかりました。しかしながら、一般的な結論を得るためには実験条件を整備するとともに、さらに詳細な設定でドライバーの判断の違いを明確にする必要があります。

研究テーマ(2)【カーナビゲーションによる情報提供を考慮した経路選択行動の分析】

 近年、道路交通においては交通管理者が提供するさまざまな交通情報に加え、カーナビゲーション、VICS等に代表される車載の情報機器が普及しており、さまざまな種類、内容の情報が混在しています。本研究では、カーナビゲーションによってリアルタイムの交通情報を得たドライバーが、どのような経路選択行動をおこなうのかを、経路選択行動モデルを作成することにより分析します。これにより、カーナビゲーションによって提示される推奨経路の特性や、同時に提示される所要時間情報の内容などが、ドライバーの経路選択行動に及ぼす影響を分析します。これをもとに、都市交通管理として適切な交通情報の提供方法について考えます。(継続中)

研究テーマ(3)【社会経済指標による乗用車保有率の地域特性に関する研究】

 モータリゼーションの進展は、さまざまな地域的条件の違いから生じる地域差と時間差をともなって展開し、現在に至っています。本研究では、とくに普及の著しい乗用車の普及状況に着目して、人口密度、所得水準、公共交通整備水準などの社会経済指標によって、都道府県、市町村ごとの乗用車保有率の違いを分析し、乗用車保有水準の地域特性の要因について考察しました。その結果、都市部と地方部では市町村ごとの乗用車保有水準に影響を及ぼす要因が異なっており、都市部の都府県においては公共交通の整備水準が乗用車保有に影響を及ぼしているのに対し、地方部の道県においては人口密度や所得水準が乗用車保有に影響を及ぼしていることがわかりました。

研究テーマ(4)【出合頭事故多発交差点における自動車挙動の分析】

 交通事故の多くは、交通事故多発地点と呼ばれる特定の地点で集中して発生しています。その多くは交差点です。本研究では、滋賀県内の交通事故多発地点の中から、守山市内の出合頭事故多発交差点の1つを取り上げ、交差点を通行する自動車の挙動分析をおこない、対象交差点での交通安全対策についての検討をおこないました。具体的には、主道路の通過車両の走行速度分布、従道路からの進入車両の一時停止挙動の観測や、停止位置からの主道路の見通し距離の測定などをおこないました。その結果、出合頭事故多発の要因の1つとして見通し距離の不足が挙げられることを示すとともに、危険確率を算定することによって危険箇所を把握し、改善すべき見通し距離の値を算定することができました。今後は、物理的な見通し距離だけでなく、見落としや見誤りなど、ドライバーの認知に関する部分についても考慮に入れて研究をおこなう必要があると考えられます。

研究テーマ(5)【滋賀県内の地方都市と郊外地域における自動車保有行動に関する分析】

 現在、地方都市やその郊外においては自動車が大量に普及し、「一家に1台」から「一人に1台」という時代になってきています。また、地域によっては郊外型店舗の増加や中心市街地の衰退など、街そのものが自動車の普及を前提とした形態になってきています。本研究では、地域によって自動車保有水準が異なる滋賀県を取り上げ、県内の地方都市の1つである草津市と、郊外地域の1つである甲賀郡甲西町について、人々の自動車保有行動の分析をおこないました。具体的には、草津市民および甲西町民の自動車保有行動について、アンケート調査の結果にもとづき、自動車保有行動モデルを作成しました。その結果、各世帯での駐車可能台数、免許保有者数、世帯主の通勤手段などが自動車保有行動に影響を及ぼしていることがわかりました。また両地域を比較すると、公共交通の便利さや街全体の構成に加え、世帯構成の違いなどが自動車保有水準の違いに影響していると考えられます。