概要

 我々の体は常に何らかの負荷を受けており、この負荷は様々な要因により大きく変化する。このような力学的環境の変化に対して、生体組織は形態や力学的性質を変化させて適応する。例えば、関節固定や運動によって腱・靱帯・骨に作用する負荷が増減すると、それに伴って断面積や力学的強度が変化し、敏速に力学的環境の変化に反応する(力学的適応制御)。また、過度の負荷が生体組織に作用すると損傷が増大して治癒する(自己修復)。このように、生体の機能にも力学現象が大きく関与している。そこで,本研究室では,機械工学の手法を用いて、これらの生体機能のメカニズムを解明することを目的としている。さらに、得られた成果を基に、従来治療が困難であった疾病の新しい治療法の開発を目指している。おもに、膝関節の腱や靱帯、大腿骨を具体的対象として、実験を中心に研究を行う。

 

研究テーマ

 

腱・靭帯のバイオメカニクス


 腱・靭帯の引張試験や疲労試験を行い、靭帯損傷について研究しています。腱・靱帯はコラーゲン線維からできていて、非常に複雑な構造を持っています。。直径100
mm程度の線維束や直径200nm程度の原線維を顕微鏡で観察しながら引張試験を行い、微細構造と力学的性質の関係について調べています。

 

 

骨のバイオメカニクス


 カルシウム不足で骨粗そう症になることはよく知られています。骨に含まれるカルシウムの量と強度の関係を骨の力学試験を行い調べています。カルシウム量が減少すると圧縮強度が大きく低下します。

 

 

腱の剛性と筋力の関係


 ヒトの膝にロードセルを利用した自作の装置を押し当てたときの押込み量と荷重の関係から、膝蓋腱の力学的性質を調べています。この力学的性質と筋力の関係から、腱の力学的適応について検討しています。