LIGAプロセス

 LIGAプロセスは、X線リソグラフィと電鋳およびモールディングを組み合わせ、アスペクト比(加工幅に対する深さ(高さ)の比)の大きな形状を作る製法で、1980年代にドイツ・カールスルーエ原子核研究所で開発された技術である。各工程のドイツ語の頭文字をとってLIGA(Lithographie,Galvanoformung,Abformung)と名付けられている。厚さ100 μm以上のレジスト(感光性有機材料)に直進性の良いシンクロトロン放射(SR)光装置から発生するX線を用い、X線マスクを介してパターンを転写することにより、100μm以上の深さ(高さ)で横方向に任意の形状を持った超精密部品の製造が可能である。

 Fig.1にLIGAプロセスの基本工程を示す。金属基板上に厚さ数百μmのレジスト層(ポリメチルメタクリレート(PMMA))を形成し、SR光X線を照射しマスク上のX線吸収体のパターンをレジスト層に転写する(a)。レジスト層のX線露光部分は、高分子の連鎖が切れて分子量が減少し現像液に溶解する。未露光部分は変化せずにそのまま残る。この結果、X線吸収体のパターンと同一形状のレジストの微細構造体が形成される(b)。めっきによって、レジスト層の溶解した部分に金属を堆積させ金属構造体を形成する(電鋳)(c)。未露光部分のレジスト層を除去しモールドを作製する(d)。この段階で金属構造体をマイクロマシン製品とする場合もある(d*)。金属構造体をモールドとして用い、プラスチックを型成形しマイクロマシン製品とする(e)。またさらに、このプラスチック構造体を電鋳の型として使用することによって2次的な金属マイクロマシン製品を製造する場合もある。

Fig.1 LIGAプロセスの基本工程図

 Fig.2にLIGAプロセスにより製作したPMMA構造体の表面形状のAFM測定結果を示す。PMMA構造体の側壁には、基板と垂直な方向に溝が見られる。これは、X線マスクのX線吸収体のエッジ形状を忠実に転写した結果である。PMMA構造体の基板に垂直な方向の平均粗さは9.4nmであった。この粗さが、X線リソグラフィの仕上げ粗さである。同様に、Ni構造体の側壁粗さを測定した結果、Ni構造体の基板に垂直な方向の平均粗さは、23nmであった。この結果から、PMMAモールドからNi構造体への精度の高い転写が行われたと言える。

Fig.2 AFM測定結果

LIGAプロセス用露光装置と製作した構造体