2001年12月26日(水)
<< 良いお年を >>
生協食堂は本日が年内最終営業日で、明日27日から1月6日まで冬休みに入 る。私も明日から「自宅研修」の日々である。たまに研究室に本を取りに来る こともあるかも知れないが、原則大学には出てこないつもりである。 よって、この日誌の次の更新も年明けになることであろう。

年が明けたら、後期の講義最終回、後期試験、入試採点、その合間を縫っ て研究会にもちょっと顔を出して、情報学科の卒研生I君の卒論の面倒を見た り etc.と、またまたあわただしい日々が続くであろう。そして、2月半ばに 入試の採点が終った段階で数学教室の「忘年会」があり、めでたく春休みに突 入する。子供の頃は宿題の無い春休みが一番解放的で気分が良かった。 春休みが一番!というのは、今も基本的に同じである。 冬休みは短く、夏休みは何だかんだと潰れる。春休みこそが心おきな く研究に励むことができる大切な休み期間なのである。ここらで、一休みして 来年に備えることとしよう。

最後に宣伝を!お正月はこたつに入って蜜柑をたべながら「駆け出し数学者ドイツに行く」でも読みながら過 ごすってのはどうでしょう。ちょいといいお正月になるかも?!

2001年12月25日(火)
<< 神様のお告げ >>
昨日帰り際にふと図書館に立ち寄ると、新刊書コーナの棚にD. Mumford "Lectures on curves on an algebraic surface", Ann. Math. Studies 59, 1966 が置いてあるではないか。確か、昼過ぎに立ち寄った時には無かったの である。はてな?昭和46年の立命館のスタンプが押してあることだし、これ はどう見ても新刊書ではない。何でこんなものがここに置いてあるのか知らな いが、きっと「この本を読め」という神様のお告げだろうと判断し、借りて読 んでみることにした。当面電車の中とか寝る前にねっ転がって読むことにする。

今日も朝っぱらからクリスマス・ケーキをたらふく食べて、幸せ一杯の気 分で街に出て野暮用を済ませ、午後から大学へ。今日は読み掛けで放置されて いた論文の解読作業やそれに関連するお勉強。途中、S藤先生とAr先生が入っ てきて、しばし密談。

密談の一貫として、Ar先生「6階に 数学教室談話室をつくるという話はどうなったんだ?」とプッシュされる。 そういえば、7月頃に私はそんな暢気な事を言っていた。その直後、唯々忙しい だけの夏休みに突入し、何だか気ぜわしい後期へとなだれ込んでいる間にすっ かり忘れてしまった。談話室かあ。気ぜわしい世界の中で暇そうな顔をして過 ごす修練の場としてはいいかも知れないなあ。どんなに忙しくても、一日一時 間そこへ行ってただ暇そうな顔をして座っているのである。暇は無理矢理作るもの かもしれないし、私なんかけっこう形 から入っていく方だから、案外いいかもね。

2001年12月24日(月)
<< サンタクロース >>
営業日である。思うに、日曜とか祭日とかいうのは単に役所の休日の事なのであっ て、立命館のような民間企業には直接関係無い話だし、ましてや数学者にとっ ては益々関係無い話である。数学者にとっては、講義があるか無いか、会議が あるか無いか、そして特に私の場合は生協食堂が営業しているか否かが全てで ある。

本日朝っぱらからクリスマス・ケーキをたらふく食べて、幸せ気分一杯で 昼過ぎに大学へ。先週末に引続き、可換環論・代数幾何学入門の講義ノートの 更新など。途中、怪しい学生K君が押しかけてきて、色々怪しい質問をしてく る。彼の心はもう4月から念願の某国立大大学院に進んで、思う存分可換代数学の研 究を行う事に向いているのだけど、「君!そんな事を言う前に、卒業単位は大 丈夫なのかい?」と聞くと、色々怪しい、というか超楽天的な危うい返事が返っ てくる。

夕方、講義ノートの更新がほぼ終了したところで、ひと息入れようと廊下をふ らふら歩いていたら、ちょうど自家養成サクラI君に出くわす。これは渡りに舟と ばかりに、最新版のノートをプリント・アウトして「これはクリスマス・プレゼン トです。冬休み中によーく勉強しておくように」と言って手渡した。 (私はなんてやさしいサンタさんなんだろう!)

2001年12月22日(土)
<< 酒瓶に満杯の小豆 >>
昨日「業務終了」を宣言したけれど、24日(月)祭日も大学は「営業」してる ようである。最近ウチの大学はスーパーなどのサービス業の真似して、年中無 休いつでも営業!立命は今年もやります!という状態を目指しているようであ る。 長期の夏休みとか冬休みとか春休みとかがあってもどうせ学生は遊んでい るだけだから、そういうのはどんどん潰して全部営業日にしてしまえばよろし い。それにハッピー・マンデーだとか言って最近やたらと増えてきた月曜祭日 なんて講義のスケジュール調整の邪魔以外の何物でもないから、そういうのは 全部蹴飛ばして営業日としてしまえばよろしい。そしてたっぷり確保した営業 日には、明日のために講義!講義!講義!講義!講義!講義!打つべし!打つ べし!打つべし!打つべし!の学生生活を送ってもらおう、という主旨のよう である。この大学の教職員の世界に充満する気ぜわしい雰囲気が、学生達の方にも じわりと広がりつつあるわけだ。

(気ぜわしい世界の中で暇そうな顔をして過ごすのには、多少の修練が必要です。 私はまだまだ未熟者であります。)

さて今日から少しの間だけ暇になった(はず!)なのだが、急にお前は暇だ ぞと言われても何をして良いやらわけがわからない。やる事が無いのではなく、 やる事があり過ぎて何をやれば良いかわからないのだ。これはちょうど酒瓶に 小豆をを満杯に詰めてえいやっ!と逆さまにしても小豆はこぼれ落ちてこない のと同じ現象である。とりあえず、前期の大学院の講義、および後期の「数理 モデル論」の両方で喋った"可換代数および代数幾何学入門"のノートの改訂作 業を行う。前期の講義終了時に院生M君のコメントをもとにかなり書き換えた のだけど、後期も強力なサクラ軍団のお蔭でかなり改善すべき点を見付けるこ とができた。まさに講義においては、サクラ無くして進歩なし!進歩のため にはサクラが必要!である。

2001年12月21日(金)
<< 業務終了 >>
午前は今年最後のGoetheのレッスン、午後は今年最後の卒研ゼミ。そして明日 からは待ちに待った冬休みである。

数理科学科の卒研生H君は、行列式の定義の復習。「行列式ってこんな定義 だったんですか(感動?)!」うーん。工学部の4回生は勿論のこと、数学科の 4回生でもそんな風な事を言う人が多そうですね。でも、色々な苦難(?)を経た後 に、もう一度1回生の頃のテキストを読み直すのもいいもんでしょう。

情報学科の卒研生I君は、イデアル論の部分は今日で一応終了して、年明け から代数拡大体の話に入る予定。「うーっ。イデアル商(コロン・イデアル)っ て、やっぱり掴みどころが無い感じですね。」それにしても自家養成サクラの I君は、卒研ゼミと「数理モデル論」の講義のセット・メニューによって、私 が学生時代に1年半ぐらいのたうち回って勉強した事を半年でマスターするこ とを目指すという、超効率的かつ超詰め込み教育を受けているのである。あま り無理して潰れなければいいのだけど。

学生諸君、良いお年を!さて、私もそろそろ自分の勉強・研究に戻ることにしよう。

2001年12月20日(木)
<< 灰色の時間泥棒 >>
今日、ドイツ滞在中にお世話になった大家さんPfeifer夫妻からクリスマス・ カードが届き少しびっくりする。ここんところずっと、私は灰色の時間泥棒た ちに時間を奪われて、目が回るような日々を送ってきたので、とびっきり人の 好い大家さん一家の事を忘れがちになっていたようだ。あれ程人の好い人間は、 日本ではあまり見掛けないよなあ。

今日で年内最後の講義が終る。年明けにもう1週あるけれど、とりあえず 後期試験の範囲はカバーし終えているので、万一講義ができなくなっても、多 少講義が尻切れトンボになるけれど、大きな混乱は避けられる。やれやれ、 である。

「数理モデル論」の講義では、試験情報を探りに来たのか、いつもより出 席者がやや多くサクラ軍団を除いて10数名程度。親ザクラのK川先生は昨日 から出張で不在、子ザクラの一人Y木君は途中から入ってきて半分ぐらい眠っ ているようだった。講義の後で、最近私がK川先生との議論の中 で発見した驚くべき予想「代数体においては(好ましい環論的性質は)何でも成 り立つ」をそっと教えてやると、Y木君とY口君はとても感動していた。ところで、自家 養成サクラI君は、そろそろ軌道に乗ってきたかしら。

「プログラム理論入門」では出席者数には特に変化無し。

2001年12月19日(水)
<< 人の道 >>
「駆け出し数学者ドイツに行く」は何冊か売れているらしく、時折見知らぬ 読者の方から「あれ、買ったよ」というメイルを頂いたり、私の講義に出ている 学生から直接「面白かったですよ。ためになる事も書いてありますしね」なん て感想を聞かせてもらったりしている。(はてな?「ためになる事」なんて書い た覚えはないのだけど。。。)
お買い上げ頂いた皆様には、この場を借りて厚く御礼申し上げます。

最初は「どうせ道楽で出した本だから、売れても売れなくてもいいや」と 思っていたのだが、いざ出版してみると結構売れ行きが気になるものである。 情報学科のマスプロ授業の教科書か参考書に指定して、本の帯の一部を切り取っ て答案用紙に張り付けないと単位を出さないようにすれば、じゃんじゃん売れ るんじゃないですか、なんてトンデモナイ提案をしてくれる学生や友人もいる。 一体何の講義で使えばよいのだろうか?「駆け出し数学者...」でも読んで偉 大なる高山大先生の気高きマージナル・ドリーマの心を学び給え、とでも言う のであろうか?いずれにせよ、教科書指定というのは悪どすぎる。

就職が決まった情報学科の4回生(あるいは5、6回生)で、何だか知らな いけど全然講義には出てなくて、日頃から情報学科の先生方の教えをよく守っ て数学とは無縁の生活を心がけ、当然来月下旬の 私の科目の後期試験は全くわからず、さりと て単位をとらないと卒業も就職もパーになり、白紙答案の後ろの方に「レポー トでも何でもやるから単位をください」などと書いてくる学生は、数十名にの ぼると予想される。彼らは、毎回出席者数名程度の「数理モデル論」と「プロ グラム理論入門」の履修登録者である。こういう学生に対する最後のチャンス として、「駆け出し数学者...」を買って読み、その感想文を提出した上で(最 後までちゃんと読んだかどうか確認するための)口頭試問に合格した場合は特 別に単位を認めるというアイディアも、冗談としては面白いかも知れないが、 実現することは無いだろう。 人の弱味につけ込んで商売をするというのは、どうも人の道に反しているよう な気がする。

本日「位相空間論」と「線形代数」の講義。毎週水曜日の昼食は、教員用(?) レストランで「午後の線形代数、どうやって教えようか」と作戦を考えながら、 カンカンになって一人黙々と食べるのが常だが、今日はK川先生の友人で非常 勤講師のK先生と一緒に食べた。K先生は京大数理研の出身なので、色々数理研 の内部の様子や彼がやっている数学について教えてもらう。

2001年12月18日(火)
<< 炸裂する教授会 >>
朝はGoethe、夕方から夜にかけては教授会。途中は京都から滋賀への移動。大 学の部屋に着いてちょっとひと息。Herzog先生からメイルあり。アメリカを発っ てからインドに寄って、最近ドイツに戻ったらしい。どうも彼の英語はときど き少しだけ意味不明である。著書の英語はしっかりしているから、たぶんメイ ルの英語はあわてて書いているのだろう。いっそのこと、「先生はドイツ語で 書いてきてください。私は英語で返事します」と提案してみようかと思うが、 ドイツ人がドイツ語であわてて書き殴った文章を理解できる自信が無いので、 まだ提案には至っていない。

教授会は猛烈に炸裂し4時間を超えた。その後さらに臨時教室会議。合計 約4時間20分を会議に費した後、K川先生と、人生のポリシーとして「生協 では飯を食べない」「個人研究室では研究しない」と決心していると想像され る夢見るH先生と生協食堂で夕食をとってから帰宅する。

2001年12月17日(月)
<< お尻に火がつく >>
もうすぐ冬休みで、冬休みはあっと言う間に終り、それが終ると1週間だけ講 義があって、最後の講義の後は後期試験に突入する。講義のペースが遅い私は、 いよいよお尻に火がついたカチカチ山状態で、今週と年明けの合計2週ポッキ リの講義でどこまで予定の範囲に食い込めるか?カウントダウンの声が聞こえ てきそうな勝負時なのである。風邪などひいて寝込んだりしたらアウトである。 そうなった日には熱が出ようが何だろうが、這ってでも教室に行って講義をし、 戸板に乗せらて帰宅することになろう。
(このスリルがまたたまんないんだよ なー。)