2001年7月28日(土)
<< 運動場三周走って来い!? >>
今日は土曜だけど、大学はガンガン前期試験をやっている。午後に電気電子工 学科の線形代数の試験監督があるため、昼前に大学へ。サングラスに麦ワラ帽 子という、いつものいでたちで部屋に着き、麦ワラ帽子を脱いだ直後、情報学 科4回生のいかにもデキの悪そうな顔したのが数名やってきて、「昨日の試験 の出来が悪かったので、レポート課題を出してください。」などと言い出す。 私は薄暗い部屋でサングラスを掛けたまま彼らを睨みつけ、「ウチはそういう 事は一切やっておりません。どうぞお引き取り下さい。」と物腰柔らかに、さ りとて決然と答えて追い返す。

彼らにとって「レポート」は「写経」を意味する。求道精神と無縁な彼ら の写経は、単なる肉体労働である。だから「運動場を三周走りますから単位を ください」と言っているのと同じである。しかし私は体育の先生ではないので、 そういう事では単位は出せないのです。

試験監督の前後は、Hartshorne "Algebraic Geometry"のformal schemeの 所を読む。可換代数では局所環の性質をその完備化を経由して調べるというテ クニックがあるが、それをスキーム論で展開したのがformal schemeの話らし い。つまり局所環論の局所幾何学の話を大域化したようなもの。SGA 2に書か れている代数的Lefschetzの定理の証明も、そのテクニックを本質的に使って いるらしい。完備化というのは、代数多様体上の関数を増やして解析関数も含 めてしまい、複素多様体のようにしてしまおうというアイディアで、関数が増 えればより多くの情報が引き出せるというわけ。代数的Lefschetzの定理は、 代数多様体の基本群への応用とPicard群への応用という魅力的な結果をもたら すらしく、Picard群への応用の方は、「Grothendieckの幻の定理」に継ってい く。何だか大がかりな話になってきたなあ。

明日からしばらく、四国でうどんを食べてきます。更新は8月1日頃にな るでしょう。

2001年7月27日(金)
<< 極悪非道の輩 >>
ゆうべ風呂から出た瞬間に、怪しい学生K君の問題が解けたので、今朝大学に 着いてからすぐに彼にメイルで解答を知らせる。たぶんどこかの大学の院試問 題なんだろうけど、この調子じゃあ私だったら時間制限のある院試には合格し ないでしょうね。誤解している学生がいるようなのでついでに言っておくけ ど、私は生まれてこのかた数学科の大学院に合格した事はないし、大学院なる ものに一日たりとも通ったことはないのです。にもかかわらず、理論計算機科 学という数学の顔して全然数学でない分野で博士号取って、やましい過去に口 をつぐみ、ドサクサに紛れて「俺は数学者だ!」とか言ってふんぞり返って いるのです。すなわち、大学卒業後の私の人生は、文字通りドサクサ紛れの何 でもアリの連続であって、その意味で私は裏街道を歩んできた極悪非道の輩で あります。学生諸君はすべからく用心されたし。

さて、極悪非道の私の今日はSGA 2の解読日。夕方SGS 2の主結果の簡略化 が書かれているというHartshorneのモノグラフを図書館に借りに行き、その帰 りに離散数学の答案を事務所に取りに行く。部屋に帰って1時間半程で採点。

離散数学の採点結果は、A, B, C, D(Kも含む)判定の割合がそれぞれ約10 %、30%、36%、24%となった。A判定は数理科学科2回生に集中し、 不合格者は情報学科4回生に集中ししている。数理科学科の不合格者は3名程 度にどとまった。これはほぼ予想通りの結果といえよう。白紙答案は情報学科 4回生がほとんどで、皆判で押したように「就職活動で講義に出られなかった。 単位よろしく。」というような事を書いてあったが、構わずバッサリ落した。

2問中1問は、高校数学プラス大学理工系教養課程レベルの簡単な空間図 形の問題であり、情報学科の4回生でも、その場でなんとか一部でも解いて合 格にこぎつけた学生が少なからず居たし、A判定やB判定を取った学生もいたの である。せっかくの試験時間を問題に食い下がる努力もせずに、あるいは食い 下がっても何も思いつかないほど知的退行してしまうような学生生活を送って 来て、貴重な時間をただただ就職活動云々と泣き事を書き並べることに費す彼 らには、何の同情も感じないのであります。

それにしても「会社から内定取ったから単位よこせ」というのは、全く気 に入らない。極悪非道の高山大先生もずいぶんナメられたもんである。そんな 学生には意地でも単位をやりたくないのだが、ちゃんと正解が書かれているた め涙を呑んで(?)合格にした答案も少なからずあった。来年からは、「ロクデモ ナイ事を書いた答案は、それだけで不合格にする!」と宣言しようかしら。

2001年7月26日(木)
<< 問題解き >>
昨日のアルコール性不眠症による睡眠不足ゆえ、本日心の貴族気分で昼前まで 眠る。午後ゆっくり大学に行き、さあて今日は何も無い日だからSGA 2を読み 進めようと思ったのだが甘かった。まずは怪しい学生K君から、怪しい問題2 問の質問メイルが届く。一問は簡単に解けたのだが、もうひとつがいけない。 初等整数論っぽい問題なので、K川先生に「何か知恵はないか?」と泣きつき 使えそうな話をいくつか教えてもらったものの、それではやはりダメ。途中院 生M君の次数付き環の質問に答えたりしながら、結局夕方まで色々考えても完 全解答に至らず。失意と自己嫌悪のどん底で家路につく。

この問題は、1月頃にHerzog先生に「こんな問題を考えてみんかね」と言 われ、そのときは「ふふん」と生返事をして放っておいた組合せ論的可換代数 の話とちょっぴり関連しないでもない。だから、この際ちゃんと解いておけば 面白い例として後で使えるかもしれない、などというスケベ心もあるのだけど。

2001年7月25日(水)
<< アルコール性不眠症 >>
親和会の宴会では、料理が一品づつ出て来て、次の料理が出て来るまでずいぶ ん間があく。その間、本が読めるわけでもなく、計算ができるわけでもなく、 かと言って誰かと話をするわけでもない、手足縛られて猿ぐつわをされたよう な退屈と闘わねばならない。これが一般論である。宴会に出かける前に、退屈 しのぎのオモチャはないかと、研究室の中をひっかき回して探したけれど、適 当なものは見つからなかった。今の若い人だと、携帯電話が退屈しのぎのツー ルなんだろうけど。

宴会の座席はクジで決められるのだが、これには少しドラマがある。両側 を情報学科の教員に囲まれて俄然精神修養の場となることもあれば、毒にも薬 にもならない「知らない人」と知らん顔して隣合わせでいることもあれば、立 派な先生の有難いお話を拝聴できることもある。これも全て運次第。今回は、 ラッキーな事に数理科学科から私以外にAr先生が出席していて、さらに隣同士 の席になった。そのまた隣が、大学時代と沖電気時代の両方の大先輩であるロ ボティックス学科のA大先生。Ar先生と「密談」にふけり、A大先生のインスピ レーション溢れるすばらしい話を聞き、有意義な時間を過ごすことができた。

ところで、私は酒を飲むと眠れなくなる習性があるのだが、昨夜の酒はか なり効いて朝6時頃まで一睡もできなかった。こういう時、心は貴族の夢見る H先生なら迷わず昼過ぎまで寝るとこであろうが、身も心も貧乏症の私はいつ も通り8時起きし、自宅ですこし用事を済ませ、ふらふらしながら2時間睡眠 の死に絶えた脳味噌で昼頃大学へ。

さて、午後の離散数学の試験監督までの数時間に昼食をはさんで死んだ脳 味噌でSGA 2でも眺めるかと思っていると、コンコンとドアをノックする音が する。さては怪しい学生K君の再来かと身構えたのだが、入ってきたのは情報 学科4回生。午後の試験を受けるのだが、就職活動でほとんど講義に出ていな い。今から勉強できる事はないかと言う。阿呆かいな。そんなもん無い!と (弱々しく)一喝したのだが、結局15回の講義でどういう事を話したかを40 分ぐらいでざっと概観してみせる。まあ、これは実際の講義の最終回で話した ことと大体同じである。「今の話をあと2、3時間じっくり復習すれば、午後 の試験は零点にはならないかもしれないし、なるかもしれない。まあ、君の運 と実力次第ですな。」と言って追い返す。

普段なら「情報学科4回生」と聞いただけで、「帰れ!さもないとこのチョー クの粉をたっぷり吸い込んだスポンジをお見舞いするぞ!」と怒鳴り返すとこ ろである。なのに講義の概要のレクチャーまでやるなんて、やっぱり睡眠不足 はロクな事はない、と反省しきり。でも、特別講義までしてやったんだから、 それで零点だったら就職が決まってようが卒業単位が足りなかろうが不合格に します。一般に離散数学の試験は零点なら落ちます!それ以上の事は蓋を開け てみないと私にもわからない。

試験監督前後はSGA 2を少し読み進める。

2001年7月24日(火)
<< 教授会 >>
本日教授会。今期は珍しく教授会がすくなく、それ自体は歓迎なのだが、その 裏で大事な事が何処か知らない所でどんどん決まっているような気もしないで もない。いつの日か、久しぶりの教授会で「数理科学科の廃止について(追認)」 なんて議題がいきなり飛び出し、「そんなの聞いてないよー!」とひっくり返 る時が来るのだろうか。

教授会の後は、理工学部親和会の宴会。こういう宴会は嫌いだし、数理科 学科の先生達はほとんど誰も出席しない。しかし、年2回のこの宴会のために、 少なからぬ額の親和会費を毎月給与から天引きされている事と、たまには京都 の料亭で京料理の夕食としゃれこみたいという、それだけの理由で参加する。

それにしても、講義は無くなったのに全然夏休みという気がしないなあ。

2001年7月23日(月)
<< SGA 2 >>
本日偶然N木先生に出会ったので、「代数的レフシェッツの定理って何ですか?」 と聞いてみるも、超越的な方なら知ってるけど代数的な方は知らんとのこと。 うーん、やはりSGA 2 を真面目に読まないといけないか。「代数的レフシェッ ツの定理?ああ、それはですねえ...」と嬉々として説明してくれる便利な人 は居ないものかしら。(お前がそうなればいいんだ!との声が聞こえてきそう である。)

SGAやEGAは、フランス語はそれほど難しくないし、証明も割合丁寧に書か れているようだ。EGAなんてHartshorneの教科書で200ページぐらいで書い ている事を、1000ページぐらいかけて延々と説明しているのだから、「あ れはHartshorneの懇切丁寧な解説書ですよ」とヒトゴトのように言い切る人が 出て来てもおかしくもない。某数論幾何学者が「EGA? あれ簡単でしょ?」と言っ たとか言わなかったとかいう話や、某代数幾何学者の高校生時代の愛読書が EGAとSGAだったとかいう話はたぶん実話なのだろう。

まあ、しょうがないのでぼちぼち読み進めていくことにする。それにして も、いまどき代数幾何学の人がEGAやSGAを読んだりするのかしら。せいぜい可 換代数の人しか読まないんじゃないかなあ。

2001年7月21・22日(土・日)
<< 炎天下の放浪 >>
土曜日はゲーテ・インスティチュートのドイツ語講座最終日。次は10月上旬 からの冬学期から新しい講座に通おうかと思う。ゲーテ・インスティチュートが 夏休みで閉鎖されてしまうため、ドイツ・パンの共同購入はしばらくお休み。 河原町三条の明治屋で売っているプンパーニッケルで飢えをしのぐことにし よう。

日曜日は、ゲーテ・インスティチュートの受講生で最近ドイツ人の女性と 結婚したロック・ミュージシャンS氏の「北大路のVivreでプンパーニッケルを見た」 という証言を思い出し、暑い中を山科から北大路まで出掛ける。しかし プンパーニッケルは発見できず。帰りに京都駅前旭屋書店で、前から 気になっていた「文学部をめぐる病」(高田理恵子)を捜そうとしたものの、見つからず。 暑い中を半日潰して歩き回って、何も得られずに帰ることになるのは 悔しい。どうしたものか、そうだ、旭屋書店の隣の店で、これまた少し前から 気になっていたゲルトナー・ライア奏者にしてソプラノ歌手の 木村弓のCDを買って帰ろう、と思ったもの の木村 弓のCDは一枚も存在せず。

あーあ、大山鳴動して鼠一匹すら取れずかよ、と脱力感に浸っていると、店の 中で何かクラシック・ギターのような、でもクラシック・ギターよりも固めの音の楽器 の曲がかかった。この曲は、ドイツに行ってドイツかぶれになるずっと前から ヨーロッパかぶれのアメリカ嫌いだった私の、神経の根っこを麗しく刺激する、天国からの 音楽に聞こえた。早速店の人に、今かかっている曲のCDが欲しいと詰め寄り、 シルビウス・レオポルド・ヴァイスとかいうバッハとほとんど同世代の 作曲家の「二つのリュートのためのソナタ」を買う。 これが本日唯一の収穫。

私は何を隠そう「挫折した元クラシック・ギター少年」で、中学校に進学 する頃には既に挫折していたのである。だから、今でもクラシック・ギターの 曲が聞こえてくると、ああいいなー、と思うと同時に、ほろ苦い気分が してしまい、なんとなくいつも避けて通ってきたような気がする。 でも、リュートだったらそういう事は関係無い。リュートとクラシック・ギターは、 確かハープシコードとピアノの関係にあって、ギター曲とリュート曲というのは まあ似たような感じである。よし、これからはリュート曲を聞くことにしょう。

2001年7月20(金)
<< 今日は何の日? >>
今日は祭日だそうだが、前期試験の第一日目ということで大学は平常通り営業。 数学者にとって平日と祭日の区別自体はあまり意味が無いから、まあどうでも よいとしておく。それにしても、春休みや夏休みをどんどん減らして講義の時 間数を「国立大並みに」増やしたとしても、試験の 直前に教科書を注文する学生が大量に居るぐらいだから、 あまり意味が無いのじゃないでしょうかね。S藤先生なん ぞは、「本当に大事な基本的な講義だけに絞って開講科目数を半分に減らし、 さらに各講義の講義時間数を倍増させるべし」という説をエンドレス・テープ のように繰り返している。私もその説に賛成である。一週間のうちに10数科 目の講義が頭の中を次から次へと通り過ぎて行く詰め込み状態で、何かをゆっ くり考えたり、疑問を解き明かして自分で納得したり、という体験ができるわ けがないからだ。

会社員時代でもよく言われていた事だけど、「とりあえず、やれる事、手 がつけられることから始めよう」というのは、「前向き」(私はこの言葉が嫌 いです)の良い考え方だとされている。しかし、昔から思うのだが、この考え 方はどうも間違っている。さして効果のない「やらないよりはマシ」なことを どんどん積み上げるために手間暇ばかりかけるのは、「自分達はこんなに努力 しているんだ」という自己満足にはなるかもしれない。 しかし、何かが本当に良くなるのは根本的な難しい問題を解決した時だけなの だ。

今日は終日昨日京大でコピーしてきたSGA 2を、フランス語の辞書と文法書 をひっくり返しながら解読する。フランス語はかなり忘れているから、学生の 外国書購読の授業よろしく翻訳を作ってからでないとよく理解できない。本当 はドイツ語訳を作れたらカッコイイのだけど、実際作ったのは英語訳。 (フランス語は日本語に訳すよりも、英語に訳す方が楽である。ドイツ語や 英語は日本語に訳すよりも、そのまま読んだ方が楽である。)

そういえば、一昨日見付けた、Grothendieckの定理の概要が書かれた論文 はドイツ語であった。ゲーテ・インスチチュートの講座で一緒の印度哲学専攻 の大学院生に、先日「数学の論文読むにはほとんど英語だけで十分です。ドイ ツ語はまあ趣味でやってるようなもんです。」と言ったばかりなのだが、この ところ英語以外の文献を読む機会が妙に多い。

2001年7月19(木)
<< 幻のGrothendieckの定理発見か? >>
昨日の夕方、帰り支度をしながら虚しく終ったEGA Volume 2との格闘の一日を 振り返り、あーあとため息をつきつつ, ふとMatsumura "Commutative rings" のあるページを眺めてたら、ちょっと気になる一言を見付けた。それをきっか けに、「幻のGrothendieckの定理」がEGAではなくSGA Volume 2に書かれてい る事が判明した。SGA Volume 2はうちの大学の図書館には無く、結局昨日は、 「幻のGrothendieckの定理」を参照している論文だけが手に入った。その論文 には「幻のGrothendieckの定理」の正確なステートメント(それはStorchさん からのメイルに書かれていたものとほぼ同じである)と、証明のアイディアが 簡単に示されていた。どうもその証明は簡単ではなさそうだ。可換代数を使っ て代数幾何学の問題を解くという話は多いが、この定理の場合は代数幾何学を 使って可換代数の問題を解くというものらしい。証明自体は我々の論文の完成 のためには特に必要は無いけれど、ちょっと見てみたいものである。

今日は午前中は大学院の講義をし、昼食後ちょっと雑用を片付けてから京 大数理研にSGA Volume 2を探しに行くことにする。ついでにゲーテ・インスティ チュートにも立ち寄って、夏休み用のドイツ語のビデオでも借りてくる予定で ある。

2001年7月18(水)
<< 夢見る数学者の心得 >>
昨日の夕方サングラスが手に入った。「物凄く悪そうなオジサンに見えること」 「その辺のチンピラよりも、もっともっと悪い、正真正銘の悪人に見える こと」を基準に選んだつもりなのだが、実際はそれほどでもない気がしてきた。 今日は曇り日であるけど、サングラスをして大学へ。まずいきなりS藤先生 の部屋に押し入ったら「やめろ!ヤーサンみたいだ。おっかない!」の一言。 やったネ!!私の選択は間違っていなかった。

先日夢見るH先生の部屋に押しかけて行った時、彼が「今日は雨だから、サ ングラスは持ってきませんでした」などと言うので、思わず心の中で「この根 性無しめ!」と叫んでいた。(サングラスは根性でするものだろうか?) その心の叫びが通じたのか、彼は今日の教室会議にはサングラスをしてやってきた。そうい えば、H先生の 日記で"夢見る数学者の心得"を見付け、いたく感動したので少し引用する。

「旦那様ともあろう方が、そのような愚痴などこぼすものではありません。 なお言えば何かのために働くべきではないのです。 ものを言わず義務を果し、好む所をし、 見るべきものを見つとだけ述べて死す。貴族とはそういうものです」。
何か最近H先生は愚図愚図言ってますねえ。

今日も教室会議を挟んで終日EGA Volume 2 と2回目の格闘をするも、「幻 のGrothendieckの定理」は見つからず。まあHerzog先生が実際に定理の示され ている場所を確認したかどうかは知らないが、彼はFlennerさんから聞いて 「見つかった」と言ってるわけだし、どこかに書いてあるのでしょう。私はも う人間フランス語スキャナー兼パターン認識マシーンをやるのに疲れたから、この 作業は今日でやめにします。

2001年7月17(火)
<< ひっくりカエル >>
ゆうべHerzog先生からメイルの返事が届き、「幻のGrothendieckの定理は実在 した!EGA Volume 2を見よ」との(ツチノコの発見を上回る勢いの)ビッグ・ニュー ス。やれやれ、これで論文を完成されることができる。ついでに「お前とこに Levicoの国際会議の案内状は届いたか?興味があれば返事して、行きたいと意思 表示せよ」と謎の一言。はてな?"Levicoの国際会議"を検索してみると、9月 初めにイタリアで開催される代数曲線のモジュライ空間の会議ぐらいしか出て 来ない。「代数幾何学なんか知らん!」と言って、エッセン大学の Oberseminarではいつも一番後ろの席で内職をしていたHerzog先生とはどうも 結びつかない。

ということで、本日数理研でHochsterの論文を調べに行く予定はふっ飛び、 大学で「フランス語なんか忘れちまったよー」と泣きながらEGA Volume 2をひっ くり返し、さらに"Levicoの国際会議"の謎解きをする。どうやらHerzog先生は、 ほぼ同じ時期にイタリアのシシリ島で開催される国際会議と間違えているらし いと判断し、確認のメイルをHerzog先生に出す。場合によっては、急拠海外出 張という事で、9月までのんびりぼんやりしようと思っていた夏休みがふっ飛 ぶことになる。ついでに海外出張経験豊富なS藤先生に、大学での出張手続き のあれこれを聞き出す。イタリアかあ。行った事ないなあ。9月上旬なんて、 暑いんじゃないの?

てな事を考えてながらEGAを読めど、お目当ての定理は見つからず。定理の ステートメントとEGA Volume 2ってところまで教えてもらったから、何とかな るだろうって思ってたのだけど。これが私だったら、EGAで定理を見付けた時 点で付箋紙でも付けといて、共同研究者から問合せがあったら直ちに何ページ のどの定理って返事するだろうけど。面倒臭がりのHerzog先生ってそういう事 はしないんだよね。後で論文を書くときに「えーと!あの定理は何処に載って たっけ?わからなくなった。わーっ!」とかパニックになるのが目に見えるよ うである。

夕方、「昨日と今日、結局成果の無い文献探しで潰してしまったなあ」と 途方に暮れているところにHerzog先生からのメイルが届く。「Levicoの国際会 議ってのは、今年9月の代数幾何の会議じゃなくって、来年6月のやつなん だ。俺が運営委員やっているから、招待してやろうかって言ってるんだ。」と いう有難いお話し。なーんだ、これで夏休みがふっ飛ばずに済むわい。

数学の国際会議というのは、計算機科学業界のそれと違って、仲間ウチで やるのが普通である。国内の研究会などは、ちらほらと呼んでもらえるように なったけど、海外の会議に呼んでもらった事はまだ無い。 これでやっと私も仲間に入れてもらえるわけだ。勿論 「呼んで!呼んで!」と二つ返事でOKするも、「来年の事を言えば鬼が笑う」 という言葉が脳裏をよぎる。基本的に私は今日と明日と今年の事しか考えられ ず、デフォルトが「来年以後の私は死んでいる」と設定されているのだ。

2001年7月16(月)
<< つかの間の平和? >>
本日は「雑用の夏」の谷間。久しぶりに研究っぽい時間を過ごす。午前中から 午後にかけて図書館の内外をうろつき、Herzogメイルでほのめかされていた 「幻のGrothendieckの定理に関係しそうなHochsterの論文」とおぼしきものを 探し出す。夕方、その論文をコピーをぼんやり眺めながら、「どうも今度も× かなあ」「いや、これとは別の論文なのかなあ」などと、そこはかとなく考え つつ悶々する。しょうがないので、夕方Herzog先生にメイルを出す。

研究って、今日やっている事が全部無駄になるかも知れないのだから、そ れを覚悟してやらないといけない。雑用の狭間で、できるだけ効率的に仕事を 片付けて行こうなんて思っていると、何もできない。

サングラスまだ手に入らず。夢見るH先生のサングラスを見せてもらおうと、 彼の部屋に押しかけて行ったけど、今日は雨だから持ってきてないとのこと。 残念無念。