2002年3月15日(金)
<< 雑用の素 >>
昨日は例によって街に出ていて、このままずっとこういう日々を過ごして自宅 待機力をつけようと思ってたのだけど、ちょっとした必要があって今日は大学 へ。要するに、数式処理システムを使ってある計算をしたくなったのだけど、 計算機嫌いの私は自宅にパソコンを持たない主義なので大学に来なければなら ないというわけ。まあ、大学に出て来る事自体は全く苦にならないからいいの だけど。ところが実際に来てみると雑用の素がポストに入っており、結局午後 の大半はその作業で潰れる。ま、いずれやらなきゃならない仕事だからいいん だけどね。

22日は卒業式。それまでに1回ぐらいは大学に出て来るつもりである。

2002年3月13日(水)
<<血沸き肉踊る学内政治 >>
昨夜の教授会懇親会はなかなかのものであった。会場は和室大広間に100近 くのお膳がずらりと並び「まるでヤクザの襲名式みたい」(文学部某教授評)な 感じなのだが、座席はくじ引きで決められる。今回は、立命館大学きっての純 粋数学至上主義者にして計算機・計算機科学・計算機科学者嫌いでもって鳴る 私の隣は、これまた立命館大学きっての純粋数学者嫌いで有名な某教授という、 実に豪華な取り合わせとなり、周囲の人々が思わずかたずを飲んだのであった。 「これは面白い展開になってきたぞ」と思っていたのだけど、 ギャラリーの期待に反して(?)実際は何も起こ らず。

ところで百名近い教授連が大広間で宴会をして何の話をしているのか?色々 である。前回は某有名教授から学問的に有難いお話を拝聴することができ、 大いに有意義であった。 今回は私の周囲では学問的な話はあまり聞かれず、専ら学内政治の話が中心で あった。「権力は禅譲を待っていてはだめだ。奪取してこそその使い方がわか る!」(うーん、凄い名言だなー)、 「必ず味方を組織しないといけない。自分が何か提案した時、『そうだ! そうだ!』と騒いでくれる人が必要だからだ」、「まさに血沸き肉踊る!面白い よー」etc. なる演説が聞こえてきて、なるほどこの教授は学内政治が心から好 きなんだなということがわかる。思うに学内政治家には少なくとも二種類あっ て、ひとつは上記のように味方を組織して下からわあっと上がって行こうとす る根アカ・タイプ。もうひとつは、最高権力者は誰かを見極めた上で「虎の衣を借りた 狐」ばりのコワモテて行く根クラ・タイプ。それ以外にも、単独で上手に泳ぎ回るタイ プとか、狸の寝技師とか色々ありそうである。

学内政治談義以外では、制御工学関係の先生から「高山先生!何か一緒に研究し ませんか?」なる提案などがあった。なっ!?純粋数学至上主義者の私に何を 言うか!?と思い即座に断る。しかしよく話を聞いてみると、彼らの真意は 「我々の分野は数学の素養を持った人を大いに必要としている。数学科の学生 にウチの学科や研究テーマをアピールしてもらえないか。できれば院生として 大量に取って育てたい。」という意味だとわかり、それなら出来るだけの事 (何もできないかも知れないけど)はやりましょう、という話になる。同じ大学 の中でも、情報学科のようにピーマンが嫌いな子供よろしく数学を心から毛嫌 いする所もあれば、数学をまじめに勉強してきた学生を院生として採用して、 立派な技術者・研究者に育てたいと心から熱望している所もあるのだと知った。

数学の学生の社会での進路として、我々数学関係者は「情報関係」ばかり に目を向け過ぎではないだろうか。数学と情報は、計算の理論とか暗号理論な どの細い細い繋がりを除くと、極めて間接的な関係にしか無いし、 学問文化も水と油の関係と言っても良いぐらい違う。従って「情報 関係」者は数学にはつれないのである。でも、ちょっと周りを見渡して みれば、今まで 気づかなかったけれど、数学に熱い眼差しを送り続けている分野もあるのでは ないだろうか。

また、「高山先生、本出されたんですね。生協で見ましたよ。 面白そうな 本ですね。でも、買いませんでしたけど」という声も約2名ほどから 掛かった。これは論外である。「面白ろそうと思ったなら、買え!」

数学教室からの参加者は私を含めて3名という、(私の知る限り)過去最多 を記録した。座敷も格式高い落ち着いたところで、料理も板前の創意苦心がし のばれるなかなかのもので、大いに満足であった。 板前というのは数日前から今度はどんな料理を出そうかと、予算、旬の材料、 過去の経験、はてまた業界誌で紹介されている色々な料亭の料理の例などを考慮に入れ ながら知恵を絞るものである。彼らは日々研究開発を怠らず、常に自らの 創造性を最大限に発揮しようとしている。こういう面も、宴会に行く楽しみの ひとつである。

本日、ちょっと厄介な事務的な仕事のため大学に出勤。雲隠れしていた働 き者のS藤先生がどこからともなく大学に戻ってきて、「どうだ?!俺はニヤ ケているだろう。色々いい事があったんだ」とひとしきり自慢話をし、 「俺は今までずっ と働き者だったから、休養が必要だ」とまたどこかに雲隠れしてしまった。 (変なの!)

2002年3月12日(火)
<< 自宅待機力 >>
9、10、11日の3日間は、例によって街をさ迷っていた。 忍術の修行で、ある成長の速い植物の苗を植えてそれを毎日飛び越えるという のがあるらしい。最初は10数センチぐらいの高さなので楽だけど、木は毎日 少しずつ成長して着実に大きくなっていくのでそれに合わせて跳躍力もつ いていく。忍者の驚異的な跳躍力はこのような修行方法に秘密があるとい う。出張もしていないのに3日続けて大学に来なかったけれど、これは私とし ては最長記録である。こうやって連続自宅待機の期間を一日づつ伸ばしていけ ば、最後には驚異的な「自宅待機力」がついて立派な数学者になれることであ ろう。

それにしても、3日も連続して大学に行かないくても自分が壊れてしまわない だろうか?3日後に私はちゃんと生きているだろうかと少し心配もしたが、3日目の昨日は 「こういう生活もいいな」と思い始めている自分を見出し驚いた。これは禁煙 と同じ現象である。禁煙する前というのは、煙草を吸わずに生きられるなんて 人間とは思えない!という気がして、周りの非喫煙者が「アクアラングもつけずに 龍宮城で平気で生活している浦島太郎の末裔」に見えたりもする。しかし 禁煙に成功すれば、「アクアラング無しで水中で生きている自分」を発見し、 そうか、人間って煙草無しでも生きられるんだ!という感激がこみあげてくるのである。 「そうか、大学に行かなくても数学生活は送れるんだ!」

本日教授会のため出勤。午後一杯教授会で、夕方から教授会の懇親宴会。 懇親宴会は数学教室からは誰も出席希望者が居ないので、いつも私が代表で出 席している。というのはウソで、本当は、毎月半ば強制的に天引徴収されている積立金 で普段は行けない高級な店に行けてうまい物が食べられるのだから、絶対行か なきゃ損、と考えるのは数学教室ではたまたま私だけだということ。

ところで、夢見る宗教生活者H先生は、かつて御自分のチェロの事を「愛妻」と 呼んでいたと思う。イギリスに留学する時、 旅行会社の窓口でチェロを見せて「これが私の妻だ。 妻と一緒に飛行機に乗るのだ!」とか大見栄を切ろうとしたりしてたと思う。 しかし、 最近は♀猫の事を「愛妻」と呼んでいるようだ。 「それって、単なる浮気者じゃん!」という直截な説もあるが、 チェロは今も御愛用のようだから「奥さんが2人も居て大変ですね」と言うべきだという学説もある。 しかし「無生物を『妻』と言っていた人が、 生物を『妻』と呼ぶようになったのだから、 症状は良くなっているのではないか」という学説も有力である。

2002年3月8日(金)
<<毎日はさ迷わない数学者 >>
本日大学に出勤。(出張時を除いて)3日続けて大学を離れていられないような 事では数学者として失格なのではないだろうかと真剣に悩む(フリをしてみる)。 やはりこういうものは練習しないといけないのかも知れない。まず2日続けて 休んでみる。それが出来たら次は3日休んでみる等々。最後には1ヵ月ぐらい ぶっ続けで大学に来なくても平気になれるかも知れない。(だけど、そうなった からといって何が嬉しいのだろう?)

今日は街で行ったちょっとした計算の続きをやったり整理をしたり。 次はもうちょっと頑張って、来週の火曜日まで大学に来ないように努力してみよう。

2002年3月6・7日(水・木)
<<さ迷う数学者 >>
6日と7日は街に出た。6日はお決まりの京大中央図書館ソファー・コーナー、 京大ルネ、進々堂窓際特等席のみならず、京大中央図書館の「ちゃんとした席」、 さらには京大数理研図書室にまで出没す。そして平和な一日が終わり床につい たのだが、それからがいけない。ある「生臭いのか何なのかよくわからない事」 が妙に気になりだして、結局明け方まで眠れず。2時間程気を失って7日の朝は8時頃 にふと目をさます。猛烈に眠いにもかかわらず神経だけが昂 ぶって、やはり寝ておれず、仕方なく起き上がって京大中央図書館ソファー・ コーナーへ。そこで2時間程半睡半醒状態でぐったりする。ふらふらと京大ル ネに行き、昼食を摂った後あたりからようやく復活。昼食後進々堂特等席で2 時間程すごす。その後一旦自宅に戻り、野暮用にて烏丸今出川に出掛け、帰り に近鉄プラッツに寄って無印良品食品コーナーで日々苦学生人生を送っている 自家養成サクラI君を視察激励し、京都駅近辺で夕食を摂って帰宅。

ところで「生臭いのか何なのかよくわからない事」とは何か?これは企業 秘密である。ただ、もしかしたら私の職業生活の近未来に暗雲がたち込めひと 悶着起こるかも知れないという「予感の予感」(あるいは「予感の予感の予感」 ぐらいかも知れない)を感じさせる動きが最近あって、それが妙に気になり始め たのだ。こう見えても私は結構苦労人である。大体において、タナボタ極楽人 生!サラリーマンは気楽な稼業ときたもんだ。ニッポン一の無責任男、コツコ ツやる奴ちゃあご苦労サン!という調子で推移してきているのだが、 ひどい目にあった回数も年齢相応にこなしている。 二階に上げられてハシゴを降ろされ、さらには下から火もつけられてアッチッ チ。見れば周りの人達は消化活動に励んでくれるどころか、焚き火よろしく 「あーたろうか、あたろうよー」と暖を取りながら互いに和やかに世間話など をしている絶対絶命四面楚歌。 あるいは、 寒空の下、野良犬同然に石持て追われ逃げまどい、飯にもあ りつけずお腹の皮はペッチャンコ、傷口は膿みただれ、からだじゅうがじつにめちゃくちゃになり、の 「おわああ、ここの家の主人は病気です」 (朔太郎)状態。 はてまた、 煮え湯を飲まされた上に塩漬けにされて、上から巨大な漬物石をドンと置かれ、 ええい!こうなったら煮るなり焼くなり漬物にするなり何でも勝手にしろ体験 等々。 まあ、身から出た錆半分、身に覚え無し半分ってとこ ですかね。 だからこそ平和な時の有り難さが身にしみて分かるし、同時に平和を脅かす気 配には時に必要以上に敏感になるのである。さて、この先どのような展開にな るかは、お楽しみ、お楽しみ。

2002年3月5日(火)
<< ゆったりとした時間 >>
昼前に大学へ。「春休みは休み!」である上に、昨日「街に出る!」と宣言し ておきながらまた大学に来てしまったのは、太陽がまぶしかったから...では ない。天気も悪いうえに大学の事務手続きでちょっと気になることがあったか らである。事務手続きの「悪い予感」は的中したのでやはり出勤して良かった。 それに、やっぱりポカポカと暖かく天気が良くないと、街をさ迷うにも元気が 出ない。

さて、立命館で 確率論関係の国際会議を開くとかで、A堀先生などはここ数日西へ東へ上 へ下へと駆けずり回り著しい盛り上がり方をしているようだ。 そのとばっちり (?)で夢見る宗教的生活者のH先生までも修行を中断して 大学の宿泊施設に泊り 込んでいるようである。しかし、それ以外では数学教室は平和である。K川先 生は楽しそうに(?)東京かどっかに出張してしまったし、S藤先生はどこかに 雲隠れしてしまったみたいだ。 私は逃げも隠れもしないけど、ただ暇そうにぼ んやりしている。思えばこのようなゆったりした時間が欲しくて大学教員になっ たのであった。

事務手続きの修正と昼食を済ませ、午後は大学の個研室ですごす。 明日こそ街に出よう。

2002年3月4日(月)
<< 遠くの風景 >>
昼前に大学へ。「春休みは休み!」だけど今日は教室会議である。会議では何 だか難しい議論をしていた。何だか知らないけど純粋数学至上主義者の Kaz先生が「時代の流れ」を しきりに嘆き、私はやおら起き上がり、同じ純粋数学至上主義者として 断固それに同調しようと思ったのだが、 自分が微妙な立場にあることに気づきそのまま居眠りを通した。

会議の後、ふらふらと生協喫茶シーキューブに行ったらNi先生が学外の共 同研究者と打ち合せをしていた。 その後生協リンク・ショップに行ったら、最近 不精鬚を綺麗に剃ってかわいらしくもあり一見誰だかわからなくもなった A堀先生が「電波が届かん...」とケータイをしきりにゆさぶっていた。

今日は何だかとても眠く、全てが遠くの風景のようである。 明日からしばらく街をさ迷いますので、更新はとぎれがちになるでしょう。 (しかし、少なくとも来週12日には更新される予定。)

2002年3月2日(土)
<< 極楽ソファー >>
「春休みは休み!」なのである。天気もまずまず良かったので、昨日は街に出 た。Hartshorne "Algebraic Geometry"を片手に、進々堂窓際特等席、京大生 協ルネ、今出川通り古本屋、京大中央図書館のソファーと、いつもの極楽コー スを一通り堪能したのである。京大図書館のソファー・スペースは居眠りに最 適の場所として実によく設計されている。実際、いつも学生達が気持良さそう に居眠りをしているのだ。ああいうスペースを図書館の中に作ろうと考えた人 はエライ! 将来もし「何もやることが無くなったジ ジイ」になった時は、京都駅前近鉄プラッツの休憩用の椅子に座って人の賑わ いをぼんやり眺め、それに飽きたら京大図書館に行ってソファーで居眠りをす ることにしよう。それにしても、Hartshorneの本はそろそろ趣味の読書の段階 を超えて、研究にも使えそうな気配がしてきた。

本日、進々堂が観光客に占拠されることを恐れたこと、そして、忘れない うちにやっておきたいちょっとした事務的な用事があって大学へ。夕方近く小 腹が減ったこともあって何となく生協喫茶シーキューブに行ってみたけれど、 音楽がうるさくて早々に逃げ出すこととなった。その直前にちょっと調べもの があって大学の図書館にも寄ってみたが、学生も少なくて、カウンターの係の 人はあくびを噛み殺すネコみたいな顔をしていた。