2002年11月30日(土)
<< 気分転換 >>
今日は楽しいゲーテの日である。最近大学はでは腹の立つことばかりなので、ちょいと気分転 換しないとな。昨日は讃岐うどんと集中講義、今日はゲーテとスポーツクラブ。明日は何して遊 ぼうかしら。

2002年11月29日(金)
<< 讃岐うどん >>
終日徳島大学にてヤング図形の集中講義。工学部の大学院生50名程度を相手に講義をし たのだが、割合反響は良かったみたいで、ちょっと気分よし。以前、滋賀大学教育学部でゲ ーム理論の集中講義をやっていたのだが、あれも結構反響が良かったらしい。

今回はスケジュールが厳しく、例年は昼と夕方の最低二回は食べる讃岐うどんを、昼食時 の一回しか食べられず、非常に残念。土産に讃岐うどんを買うことにした。私の夢のひとつは、 本場香川で讃岐うどん三昧することである(何てみみっちい夢なんだろう)。これがかなうのは いつの日か。夕方に講義を終え、強行軍で帰宅。三ノ宮で夕食をとり、家に着いたのは夜中。

2002年11月28日(木)
<<とうとうぶちキレる >>
数理モデル論の講義のため、朝から出勤。来年度から新たに非常勤講師をお願いする某 先生からメイルが届いており、○×曜日はどうしても外せない予定が入っていることを忘れて いた、今から担当曜日を変更できないか、とのこと。で、とうとうぶちキレる。

怒(いか)る時 かならずひとつ鉢を割り 九百九十九(くひゃくくじふく)割りて死なまし(啄木)

やっとの思いで時間割が組み終わったところなのである。その先生とはこの1〜2週間の間 何回もメイルでやりとりしながら慎重に担当曜日と時間帯を決定し、既にOKももらっている。 なのに、何故今になって「どうしても外せない予定」などを思い出すのか。今まで忘れていたぐらい だから、どうせ大した予定ではないのである。今からでも遅くはないから、もう一度忘れてしまって 永遠に思い出さなければ良いのだ、永遠に!簡単なことさ。(でも、まあ何とかしなきゃならんな。)

もうひとつ、私の手には負えないので別の先生に対応を依頼している「厄 介なことになっている某先生」の件も、まだああでもないこうでもないとモメ ているようだ。この先生の件が片付かないことには物事は何も先に進まない。 そろそろタイム・リミットだから、いつまでも埒があかないようなら、私とし ては強行措置を講ずるしかないな。

いずれにせよ、こんなんじゃあやってられんな!という事で巨大雑用は放り出すことにし、 気分を入れ替えて情報学科4回生配当”数理モデル論”の講義。受講者6〜7名程度。イデ アルの積と和、ザリスキー位相の話など。ふと思うに、このクラスには、去年と同じ学生が一名 来ているようである。ということは彼は5回生以上で去年この講座で落とされた学生ということ になるが、情報学科にも物好き... いや、根性のある人もいるものだな。

午後は卒研ゼミ。5回生I君はシローの定理のための補題。I君の”かたつむり”症候群の 原因のがようやくわかった。第一に、彼は黒板の文字を一文字5〜10秒ぐらいかけて極めて ゆっくりと心を込めて書く。彼の発表の時は、何だか般若心経の写経をしているような宗教的 雰囲気が漂うのである。従って、簡単な補題のステートメントを書き写すのだけでも優に5分 ぐらいかかり、極めて順調に発表が進んだとしても90分でテキスト半ページがやっとという感じ。 果てしない道のりである。しかし、これは、板書が乱雑でいつも学生諸君に迷惑を掛けている 私がとやかく言える事でもないな。

第二の原因は、彼は明らかな事を全て一文字5〜10秒のペースで丁寧に証明し、明かで ない証明は理解不足のため頻繁に立ち往生することである。もっとも、教師にとって明らかな事 でもいちいち丁寧に証明してみることは初学者にとって極めて大切な態度であるから、私がとや かく言うべき事でもないな。それに、理解不足で立ち往生するのは、程度の差こそあれ学部学生 にとっては(院生でも?)むしろ当たり前の事だし、詰まるところ本人の実力の問題だから、これもま た私がとやかく言うべき事でもないし、言ったところでどうにかなるものでもない。結局、5回生I君 の”かたつむり”症候群は「私がとやかく言うべき事ではない」という結論に達する。4回生M君は、 先週にひきつづきグレブナ―基底の応用の部分の発表。

卒研ゼミの後は速攻で徳島へ向かう。夜中に現地入りし、駅前のホテルで一泊。

2002年11月27日(水)
<<こでれいいのだ!>>
午前は代数曲線論の講義。射影代数多様体の有理関数体とその例、および局所 環の定義など。受講者は眠らない眠り天才君、代打じゃないH沢くん、夢見るH 先生の弟子、S藤先生の弟子、私の弟子の5名。Mぴー君は2回連続欠席で、ま た日頃から欠席が多いことだし、脱落したものと思われる。 これで1月15日の最終講義試験を受けられのは高々5名に絞られたようだ。

午後は、演習の先生達の話を聞いていささか力が抜けてきた線形代数の講 義。せっせと説明していても、どうせ何も理解していないしするつもりも無い のだろうかと思うと、どうしても講義が荒れ気味になる。客筋が悪いと芸が荒 れるのである。例えば証明の中の微妙かつ簡単なところは、各自の演習として どんどんすっ飛ばす。勿論ノートなんか決して読み返さないのだから、「各自 の演習」を自分で解いてみる学生が居るとは思っていない。でも、説明したっ てわかんないのだから同じことじゃないか。先を急がないといけないことだし、 これでいいのだ!という論理。荒れる講義で強引に6ページ弱が終ったことに して、予定通り来週から固有値・固有ベクトルに突入する。

巨大雑用は相変わらず「連絡待ち」。どうなるんでしょうねえ。

今夜は昨日の4時間40分会議の途中に思い付いた具体例の計算でもやろ うかと思っていたけれど、土曜日のゲーテの宿題が残っているのを思いだした。 明日は数理モデル論の講義と卒研ゼミ。ゼミが終って速攻で徳島に向かい、翌 日はヤング図形の集中講義と讃岐うどん三昧?!よって日誌の更新は月曜日以 降となる見込み。

2002年11月26日(火)
<<果報は寝て待て>>
午前中は自宅にてゲーテの予習。昼食は、前回の親和会宴会で貰った皆勤賞” 琵琶湖ホテル・ランチバイキング”の権利行使を行い、大満足する。げっぷ。 ごちそうさまでした。その足で大学に出勤し自家養成サクラI君の代数幾何学 ゼミ。ネーターの正規化定理の証明の続きなど。引き続き久々の教授会。教授 会・研究科委員会・学位審議員会の三点セットが見事に炸裂し、4時間40分 に及ぶ会議が終了したのは8時30分。これは私が知る限りでは過去最長記録 である。もっとも他大学では「夜10時頃、『やっと会議が終った』と皆がヘ トヘトになって会議室から出て来る光景」が毎週のように繰りひろげられる、 というような事もあるらしい。生協食堂も閉店間際だし、しょうがないので南 草津駅前でお好み焼とビールで夕食ととってから帰宅する。

巨大雑用は「連絡待ち」で止まったまま。私は言われた通りの事を粛々と やってきただけなのだが、何だか厄介な事になっているようである。こういう 話は気の短い私には手に負えそうにないので、別の先生にお願いしてある。果 報は寝て待て。

それにしても、あっちでもこっちでも厄介な問題がくすぶっているな。” 感情の底流としての不機嫌”問題の方はいつまでも秘密にしておけるわけでも なく、予想よりも早く表面化し、その影響を受けるであろう人々の知るところ になりそうな気配。それからどうなるかは全く不明。なるようにしかならない ことだけは確か(それでは何を言ったことにもならないか)。

線形代数の講義で学生達はいつも一所懸命ノートを取っていて、なかなか 授業態度がよろしいと喜んでいたのだけど、それは大間違いのようである。演 習の先生達の話を総合すると、どうやら彼らは何も考えずにただ黒板を写して いるだけで、それを後で読み返したり何かを考えたりすることは無いそうだ。 勿論、自分は何が分からないのか、あるいは、分かっているのか、ということ もわからないし、そもそも「分かる」「分からない」という概念そのものも無 いのかも知れない。ふーん、じゃあ、もしかして、自分が生きているのか死ん でいるのかも分からないのじゃないかな。それって、あまり人間っていう感じ ではないな。

2002年11月25日(月)
<<奥の深い世界>>
本日午前中から出勤。巨大雑用(11月分第一ラウンド)はほぼ終了したと思わ れた。あとは、数名の非常勤講師の先生方から、来年度の新規・変更分担当に ついて最終的な了承の連絡を待つだけとなった。そこでワガママ言う人が出て 来てモメめたりすると再び厄介なことになるのだけど...

とりあえずする事が無くなったので、午後はHerzog先生の原稿をチェック して返事のメイルを出し、しばらく放置してあった計算を再開しようかとノー トを眺めたりしてすごず。

てな事をしているうちに、何か言い出しそうだなと予感していた非常勤の 某先生が予想通り色々な事を言い出し、1時間程その対応に追われる。そうい うこともあろうかと思って温存しておいた"隠し玉"などの裏ワザを使って一件 落着かと思われたが、それは新米教務委員にして物事を単純にしか考えていない 若輩者の私めの浅はかさ。結局 何だかわけのわからない話になり、またぞろ「連絡待ち」状態に陥る。 労務管理というのは奥が深いのである。なかなか数学に戻れないけれど、 "感情の底流としての不機嫌"問題もあいまって、何だかスリル満点の日々だな。

立命館大学理工学部1回生の数学教育(以下、基礎数学と呼ぶことにする) は、非常勤講師に猛烈に依存している。毎週50コマ以上の基礎数学の授業を、 数理科学科の専門科目や研究指導も担当しているたった10数名の専任数学教 員だけで賄うのは不可能である。したがって、微積分学の講義はほぼ100%、 線形代数や演習の授業も90%以上は非常勤講師頼みというのが現状である。

非常勤講師のポストは、数学研究者の厳しい就職事情の中で重要な位置を 占めているし、非常勤講師の先生方の教育能力は専任教員に比べて何らひけを 取らない。しかしながら、学生が授業時間以外に質問したくても先生が居ない とか、時間割に柔軟性を持たせる事が難しいとか、非常勤という形態ゆえの 問題も色々あるようである。

2002年11月24日(日)
<< 自動的に閑ではない >>
昨夜は最近届いた出身大学のOB名簿を眺めて3時頃まで夜更かししてたの だが(名簿を眺めるのは私の趣味の一つである)、今朝は何故か8時過ぎに起き てしまい、終日睡魔と戦うこととなった。私は8時間は寝ないと眠くてしょう がないのだ。

昼間は線形代数の講義の準備やドイツ語の予習、その他野暮用に励む。夕 方頃から久しぶりに京都駅前ホテル京阪に行き、Herzog先生から送られてきた 論文の原稿に目を通す。夕食の後はアバンティ・ブックセンター隣の文具店で 来年の手帳を買った。ついこの前に夏休みが終わり、猛烈に多忙な日々に突入 したと思ったら、もう手帳を買う季節になってしまったか。11月もあと一週 間足らずだけど、予定表はもう一杯であっと言う間に12月に突入することに なる。

思えば若い頃は自動的に閑だった。学生の頃は、今の学生さん達のように 極力空き時間を作らないように色々予定を詰めて喜ぶというわけのわからない 風習も無かったし、ただただ閑、ひま、ヒマ!掃除、洗濯、食事、風呂以外 はバイトと大学とあとはぼんやりしているか勉強しているかのどちらかという、 単純な人生だったと思う。毎日、今日は何をやろうかな、何もすることが無い から勉強でもしようかという感じで、結構楽しかったように思う。勿論手帳な ど持つ必要は無かった。

会社員の頃は、手帳にはたまの出張と週一回程度の職場ミーティングの予 定が書かれている程度で、ほとんどスカスカだった。実際のところ手帳など使 わなくても、予定は全て覚え切れる程度のものだったし、やるべき仕事は高々 二種類で、それを黙々とやっていれば良かったのだ。

大学に移ってからは、手帳に講義やゼミや複数の会議の予定が書き込まれ るようになり、次第に色々な締め切りや公私ともどもあっちこっちに出掛ける 予定や約束の時間などが書き込まれるようになり、今や私の手帳はびっしりと 詰まった状態である。12月の予定はまだあまり詰まっていないけれど、見る 見るうちに一杯になってしまうであろう。ただ、猛烈ビシネスマンと 違って、分刻みの予定が目白押しという状態には至っていないのは不幸中の幸 いか。

もはや私は自動的に閑でいられるご身分ではなくなっているのである。こ れからは、こういった日々をいかに閑そうな顔をして暮らして行けるかが勝負 どころだと思う。

2002年11月23日(土)
<<長年の研究成果 >>
巨大雑用と”感情の底流としての不機嫌”の疲れが出たのか、昼前までぐっす り寝込む。巨大な雑用は単純に疲れる。面白うてやがて悲しき巨大雑用かな、 である。いっぽう、不条理な事には怒らねばならないけど、怒り続けるのも結構疲れる。 しかし事態はどんどん進行しているのだから、怒り続けないわけにもいかない。 午後は自宅で巨大雑用の最終段階。ここ1ヶ月ほど七転八倒して得 られるものは、紙っぺら10数枚の科目名・担当教員名・開講期間曜日時間帯 のリストだけである。それを作るために、あちこち歩き回ったり電話を掛けた りメイルを出したりして数十人の人と何回も連絡を取り、何十枚もの紙を費や して色々な資料や中間結果をまとめたりしてきたわけだ。

子供の頃、鉄腕アトムだとかエイトマンとか鉄人28号とかそれに類する 子供向けの空想科学ドラマやアニメなどがよくテレビ放映されていた。そこに 出てくる天才科学者なる人の長年の研究成果は紙っぺら一枚の設計図であるこ とが多く、それに基づいて高性能ロボットや夢の新薬やピストルの弾も跳ね返 す電磁バリアなどが作れるという話が多かったように思う。そして、天才科学 者達に敵対する悪役科学者とその手下達は、その設計図を盗み出すことに命を 賭け、設計図を盗まれた方は「わしが長年心血を注いだ研究が消えてしまった!」 と嘆き悲しみ、盗んだ方は「ふふふ。お前達、でかしたぞ。これで我々の世界 制覇は約束されたようなものだ。はっはっはっはっはっはあー」と手下をねぎ らいながらブランデー片手に高笑いするのである。

今となってはこの手の話はいくぶん奇妙に聞こえる。天才科学者の長年の 研究成果が紙っぺら一枚の設計図だけかよ、とか、それが盗まれたら後に何も 残らないなんてことがあるのかよ、とか、盗まれて困るものなら最初からコピー でもとっておけよ 、とか、紙の設計図じゃなくてフロッピーに入れとけばい いではないか(これについては、当時まだ計算機は科学技術計算のための巨大 特殊装置としか認識されていなかったからしょうがないが)、とか、色々疑問 が起こる。最終成果物以外に色々なメモやノートが残っているわけだし、長年 打ち込んだ研究ならば基本的なアイディアなどかなりの事は頭の中に入ってい るわけだから、例え設計図が無くなっても、気力と時間さえ掛ければある程度 再生可能なはずである。うーん、やっぱり変な話だ。ま、所詮子供向けの漫画 だよな。

しかし、今回の巨大雑用ではまさに漫画の中の天才科学者の気分を十分に 味わうことができた。「長年心血を注いだ研究成果」はまさに時間割リストで ある。色々な資料を眺めながら、どの科目をどこに配置するかをひとつひとつ 決めてながらリストを作っていくのだが、途中段階のリストであってもそれが 紛失すればそれまでの苦労が全く水泡に帰するのである。そして後には何も残 らず、一からやり直しである。

週末に自宅で巨大雑用をしようと思って資料を自宅に持ち返ったことがあ る。この時は、資料のバックアップ・コピーを作って大学に置いておくのを忘 れていた。ゲーテなどに外出している間に自宅が火事になって、資料が灰になっ てしまったら一貫の終りである(こういう事を考えるところに、脅迫神経症的 悲観主義者としての私らしさが如何無く発揮されていると思う)。家族に「私 が外出中に火事を出した場合、何をおいてでも私の部屋に置いてある”巨大雑 用”とデカデカと書かれた封筒だけは持ち出すように」と言うのも何か間違っ ているような気がするし。それで、ゲーテに行く時も散歩に行く時も肌身話さ ず巨大雑用資料を持ち歩いていたのである。勿論翌週からは、コピーを取って 分散保存するようにしたけれど。

夕方はスポーツ・クラブ。夜はまた巨大雑用の続き。  

2002年11月22日(金)
<<返事魔 >>
午前中は自宅近辺で野暮用。そして巨大雑用の息の根を止めるべく、昼前に出 勤。思えば、ここ一か月ばかりこんな事ばかりやっている。確かに時間割を押 えることはその大学の教育活動の全容の半分を押えることに等しく、色々な事 が良く見えてくる。この大学に勤務して11年目にして初めて「なるほど、こ の大学はこんな風になっていたのか」と分かることも多々あるのだ。 しかし、それにしても早く平和な研究の日々に戻りたいものだ。

夕方、Herzog先生から「論文の修正版の件どうなっとるんじゃ!?」とメ イルが届いた。忙しさにかまけて、ずっと放置してあるのだ。原稿のメイルが 届いた事ぐらいは、すぐに返事をしておくべきだったと大いに反省。もうちょっ と若い時はこういう事にはかなり几帳面(というより、ほとんどビョーキ)で、 受け取ったメイルには必ず即座に返事を出すという「返事魔」だった。相手も 同じように返事魔傾向を持っていると、メイルのやりとりが無限ループに陥っ て、お互いヘトヘトになったりしたものだ。しかし、最近はかなりルーズになっ てきているな。いかん、いかん。

2002年11月21日(木)
<<土下座行脚 >>
朝から出勤。通勤途中で非常勤講師のK先生と一緒になり、よもやま話および 巨大雑用関係の情報交換など。 午前中は情報学科「数理モデル論」の講義。受講者6、7名。I-,V-写像の具 体例の計算にひきつづき位相の概念の概要など。

昼休みはいよいよ終盤!巨大雑用の詰め作業を開始。馬鹿気た思い込みで 何かとんでもない条件を見落としていないかと、とても緊張してしまう。数学 の論文を学術雑誌などに提出するときでも同じような緊張感をもって入念にチェッ クする。それでもミスをすることはある。 数学の場合は、もしとんでもないミスを見過ごしても「あの著者は阿 呆やねえ」ぐらいで済んでしまうけど、多くの学科の時間割作成の土台になる 数学教室の時間割のミスは理工学部全体に波及し、まさに土下座行脚の世界に なってしまうのだ。

馬鹿気た思い込みで頓珍漢な方向に突っ走った後で「でも、こうするしか なかったんだ!」と開きなおるような真似はしたくないし、かと言って現場で カンカンになっていると馬鹿気た思い込みをしている事自体になかなか気づか なかったりもする。難しいものだ。ま、でも緊張したらそれでミスが無くなるっ てもんでもないしね。

午後は卒研ゼミ。前回の30秒説教が効いたのか、5回生I君はめでたく" かたつむり"病から脱出。1ヵ月ぐらいかかったけど、やっとp群が巾零群であ ることの証明を終える。4回生M君はグレブナー基底の応用の部分。私は 数式処理システムの単なるユーザであるが、システムの中身がどんな風に なっているかが何となくわかった。

2002年11月20日(水)
<<内心忸怩 >>
朝は代数曲線論の講義。 もはや眠ることはないものの苦し気で少しなまめかしいため息の眠り天才君、 先日の飲み会にも来ていたS藤先生の弟子、私の弟子、代打じゃないH沢くん、 夢見るH先生の弟子の常連組4名に加えて、見馴れない顔の一元さんと顔は昔 から覚えているのだけど誰だか知らない謎のX君の計6名。K川先生の弟子であ るMぴー君は、寝坊か何だか知らないけど欠席。今日はユークリッド空間上と 二次関数のグラフ上の有理関数体の話など。次回は、射影代数多様体上の有理 関数体と局所環の話に入ろうかと思う。

昼休みは千客万来。まずは、巨大雑用の片棒担ぎをお願いしている非常勤 講師のA先生が、どんな具合かと訪ねて来られた。私の個人的考えとしては、 かつて数学教室はこの先生に対してずいぶんひどいことをしたと思っているの で、どの面(つら)下げて片棒担ぎを頼めば良いものかと内心忸怩たるものがあ る。それにしても、世間にはほとんど気まぐれで応募した公募人事がとんとん 拍子で決まる人も居るようだが、その一方で研究業績・人格とも全く申し分無 いこの若い先生に本務校がなかなか決まらないとは世の中どうかしている。A 先生の入れ替わりにI先生がやってきて、午後からの講義でクラスに配布して 欲しいとビラを置いて帰った。しばらくして、Kaz先生がとある事務的な用件 でやってきた。

午後はビラを配ってがんがん飛ばしの線形代数。さくさく講義を進めたつ もりだが、3ページをわずかに下回る。やはり立命名物ビラ配りは、タイトな 講義にはちとこたえる。来週はシュミットの直交化法をやって直行補空間を さらっとやり、そして皆さんお待ちかね(!)の固有値・固有ベクトルに突入予定!

引続き教室会議。長い長い会議で延々と議論。それほど重い議題でもなかっ たこともあって、会議が終ると「一体何を議論してたんだっけ?」という感じ。 どうも私には行政センスというものが相当欠如しているようだ。

2002年11月19日(火)
<< 気晴らし本 >>
午前は3回生F君の可換環論自主ゼミ。中山の補題とその証明など。昼休みは 昼食をはさんで、少し計算を見直そうかと思ったけれど、何だかんだと何もや らないうちに終る。午後は自家養成サクラI君の代数幾何学ゼミ。ネーターの 正規化定理など。その後ひきつづき巨大雑用に関する会議。巨大雑用そのもの は、連絡待ち状態でストップ。もうちょっと若い時だったら 「どいつもこいつも俺の仕事の邪魔を...」とキレているな。

自分の研究から引き離されている状態なので、しょうがなく通勤途中など にお勉強。ぼってりと重いHartshorneに少々疲れたので、気晴らし本として川 又雄二郎「代数多様体入門」(共立講座21世紀の数学)などに手を出す。証明 の多くが概略のみ、または文献参照で済ましてあるので、この本できっちり勉 強するのはちとしんどい。しかし、Hartshorneで勉強した事の復習がてら頭の整理をし て、さらに最新の研究の話題にちょっと触れていい気分になるのには良い本み たいだ。(私は今「いい気分」になれるものを切に求めている!) また、やはり世界をリードする代数幾何学者の著とあって、ちょっと した事ではあるが記述の端ばしにはっとするような事が書かれていて面白い。 もっとも、専門家からすれば当り前の事が書かれているだけかも知れないけど。

論文の再修正版がHerzog先生から届きそれに目を通さないといけないのだけど、 あと一週間ぐらいは手がつけられないなあ。

2002年11月18日(月)
<< 飲み会 >>
午前中から出勤し、色々な人達と直接間接連絡を取りながら巨大雑用を進める。 大したことはやってないのだけど時間ばかりがどんどん過ぎていき、気がつけ ば”S藤・高山・夢見るH研”の飲み会に出かける時間。”S藤・高山・夢見るH 研”なる実態は存在しないし、概念もほとんど消滅しているのだけど、S藤ゼ ミ・夢見るHゼミの院生と一部学部生、高山ゼミの院生などが参加していた。 それにしても、こうやって3人の教員の下で学ぶ学生達を眺めていると、つく づく指導教員に似た学生が集まるものだなと驚く。

ところで、"感情の底流としての不機嫌"というのは、私の個人的問題では ない。私を含む多くの人間 -- 数ヵ月後に何が起こるかまだ知らずに談笑してい る人達 -- を巻き込み、近い将来に程度の差こそあれそれぞれの人に何らかの 形で暗い影を落すような事が、現在極めて順調に進行中なのである。 そういった事が、単なる気まぐれや思慮の浅さや粗雑な思考に基づく場当たり 的な対応からは決して生じて欲しくないものであるが、残念ながら事実はまさにその 通りなのである。そして、もっともやり切れないことは、この問題の最初の仕 掛け人は、現在物事がまさに自分の望む通りに進行していることに小踊りして 喜ぶことはあっても、事態の深刻さを真に理解することは期待できそうもない ことである。もっとも、彼または彼女がそれを理解したところで物事が好転す ることは無いだろうけど。そしてもう誰も彼らの企てを阻止することは できないのである。

2002年11月17日(日)
<< 学生と心中? >>
朝は少し遅く起き、午前中から昼過ぎにかけて色々野暮用。午後は計算を少し 再開。と、言ってもそれまで何をやっていたのか思い出す程度。久しぶりに今 日も満員御礼山科駅前SBUXで文字通りの熾烈なソファー席椅子取り合戦に参加 した後、京都駅前イズミヤへ。中古CDショップで、懐かしのアバ・ベストアル バム少々キズあり1200円也を試聴する。

最初の”SOS”を聞いているときから少し「来て」いたのだが、2曲目の” チキチータ”を聞き始めたときにはもう「くううううううううううっ!」と来 てしまて、い、いかん、これでは「人間やめますか?アバやめますか?」の倒 錯世界にはまりそうだと思い、自らに鞭打って何も買わずに店を飛び出す。ア バ以外ではサイモンとガーファンクルなどが私にとっては天敵で、 幸い生まれつき0.75オクターブしか声が出ないお陰で、酒が入っても無停電電源装 置付きエンドレス人間ジュークボックスと化するのがかろうじて食い止められ ているのだ。

ところで、明日は院生のN君が言い出しっぺと思われる「S藤・高山研」 (実験系じゃあるまいに、そういう概念はそもそも存在しないのだが)の飲み 会なのだが、参加者が集まらないのでN君たちはちょっと困っているらしい。

”今時の学生にしては珍しいタイプ”と自称する某学生から聞いた話では、 情報学科などでは、学生が研究室に出てきたり、そこでたむろしたりするのを 嫌がり、ちょろっと出てきては最低限のノルマを要領良くこなし、さっさと帰っ てしまうそうだ。研究室の飲み会などはもってのほかで、バイトだなんだと色々 理由をつけて極力欠席するように努力するようである。これは基本的には学生 達の価値観の変化とかいう事よりも、単にコミュニケーション能力とか社交性 の劣化が原因なのだろうが、原因がわかったところでどうにかなるものではな いから、そんなことはこの際どうでもよい。とにかく、この傾向がどこまで広 く蔓延しているのか知らないけれど、理論系はともかくとして、実験系の研究 室はこんな調子じゃあ成り立たない。

そういえば、私も情報学科時代の最後あたりにそういう経験をした。その 前の年と比べて学生の気質ががらっと変わり、それぞれの学生が自分ひとりで できる程度のこじんまりしたテーマを自宅でひとり細々とやることに固執し、 研究室全体にまたがるような中規模以上の構想をもったプロジェクト研究が全 く成り立たなくなった。個人の能力が非常に高ければそれでもいいのだけど、 中途半端な能力の学生ほどそういう方向に走りたがる傾向も見られたように思 う。

その時私は「もう実験系の研究室を運営して何か面白いことをやるという 時代ではない。今こそ純粋数学至上主義に走る好機だ」と判断したのである。 今のところ、この判断は正しかったと思われる。しかし、実験系の先生達は、 どんな学生であれ彼らと心中するつもりでやっていくしか道が無いのだから、 色々苦労されていることだろうと思う。

2002年11月16日(土)
<< 久しぶりに美しいもの >>
午前中は月末の集中講義のための交通機関を調べたりしてすごし、午後はゲー テ。ゲーテに行く前に昼食をとった御池地下街ゼストの紀伊国屋の前を足早に 通り過ぎようとた時、店先で展示販売をやっていた洋画のひとつがふと目にと まり、思わず立ち止まってしまった。ほおう、これはいい絵だなと思って眺め 始めると、すかさず店員さんが寄ってきて(しまった!ここは美術館じゃなかっ たのだ)これはうちの専属のリトアニアの画家の絵だとか何とか言ってにじり 寄ってきたので、これは厄介なことになったなと思って適当に誤魔化して逃げ 去ることにした。

それにしても最近は巨大雑用だとか、”感情の底流としての不機嫌”の原 因になっているあまりにも馬鹿馬鹿しい話だとか、それやこれやの中に塩漬け 状態になっているような感じなのだけど、久しぶりに美しいものを見ることが できて良かったと思う。

帰宅して夕食を済ませてからは、久しぶりのスポーツクラブ。巨大雑用第 一ラウンドは7割ぐらい終了したと思われるが、あと一息のところで何人かの 人からの連絡待ち状態で止まっている。まあ、2月頃にちゃぶ台ひっくり返し て大騒ぎの第ニラウンドが来ることも予想されるから、今慌ててもしょうがな いような気もする。どんと構えるしかないか。

さてと、ではちょっと前までやっていた計算を再開するかと思っても、少 し間があき過ぎて何をやってたのか忘れてしまった。つかの間の休息でしかな いので、思い出そうとしているうちにまた忙しくなって元の木阿弥になってし まうのかと思うと、再開するのが億劫になる。そこでまたぞろ代数幾何学のお 勉強に逃避。