2002年9月30日(月)
<<どこかに到達>>
午前中はゲーテに行って10月からのドイツ語講座を申し 込み、そのまま大学へ。教務で到達度検証試験の答案の束を受け取り、採点と 採点講評書きに励む。今年の採点結果の全容はまだちゃんと見てないけど、ざっ と見た感じでは今年の3回生は「どこかに到達している」と言えそうだ。

採点の後は図書館でいくつか論文をコピーして帰る。 今日から新学期である。急に気ぜわしくなってきたなあ。

2002年9月28日(土)
<<宇宙人に占拠された町>>
夏休みの宿題のつもりで考えていた問題が「これは簡単そうに見えて実はとて も難しい!」ことがわかった以外は結局ほとんど進展せず、嗚呼と溜息をつき つつ新学期を迎えることになりそうだ。しかし、今回の島根大学での数学会は、 私のやっている事と非常に近い人(というより、その手の問題については先駆 者というべき人)が来ていて色々教えてもらうことができ、ちょっと収穫があ る出張であった。また気を取り直して頑張ろう。

学会にはK川先生も来ていたが、「ども!」とか言いながらどこからともなく現れて酒臭い息を吐きな がら「ゆうべ(今朝)は△時まで飲んでました。うっぷ、気持ちわる〜。さー あ、今晩も飲むぞ!」ってな事を言ってまたどっかに消えてしまうといった調 子。本当にこの人は全国に飲み友達が居るんだなあ、とちょっとうらやましく なる。夢見るH先生も毎晩飲み歩いているのかと思いきや、松江駅のミスター・ ドーナッツで夕食後のデザートと称してコーヒーとドーナツを食べながら、せっ せと論文の校正をしていた。はてな。夢見るH先生といえばヒマの代名詞ぐら いに思っていたのに、どうも様子が違うぞ。

さて、これだけ読んだ人は、さぞかしK川先生は飲んだくれの遊び人で、夢 見るH先生は♪仕事に精出す村の鍛冶屋♪と思うかも知れないけど、真相は 如何に?あと、Ar先生、Yo先生なども瞬間的に見掛けたな。

松江は小泉八雲が愛した町だそうで、宍道湖や松江城など豊かな観光資源 に恵まれているが、人口14万人のこじんまりした地方都市ということもあっ て観光客がうろつくエリアはおおよそ限られており、その気になれば徒歩で町 じゅうを見て回れる。そのため、学会の期間中は、蕎麦屋、飲み屋、喫茶店、 ファースト・フード店、コンビニ、お土産屋、観光スポットetc.どこに行って も数学者がうろうろしていたようだ。数学者というのは独特の名状し難い雰囲 気があるので、遠目にパッと見ただけですぐわかる。その辺の道を歩いていて も、いかにもという雰囲気をぷんぷん漂わせた人間がうようよしているのであ る。私は出張期間中何度も「嗚呼むさ苦しい!数学者の居ない店で静かに 夕食を食べ、数学者がうろついていない町を思索にふけりながら散策 したいものだ!」と罰当たりな(?)事を思ったものである。

人間に扮した宇宙人に占拠された町っていうのは、たぶんこんな感じなの だろう。しかし、松江駅の土産物センターには「歓迎!日本数学会秋期講演会 様」なんて立て看板が立っていたけど、こういう雰囲気っていいですねー。

2002年9月23日(月)
<<散歩 >>
天気もまずまず回復した気持ちの良い秋の一日。夕方頃まで自宅ですごし、 散歩がてらに山科駅前スターバックスへ。

2002年9月22日(日)
<<論外学生>>
曇りがちではあるが、もうすっかり秋である。昼食をはさんで昼過ぎまで色々 雑用。夕方は京都駅近辺にふらふらと。アバンティーブックセンターに寄って、 それから京阪ホテルロビーの喫茶コーナーでしばらくすごす。

毎日のように医療ミスの報道があるけれど、そもそも医学部の卒業生の過 半数から9割ぐらいが医者になれるってところがおかしいのではないだろうか。 医者ってのは人の命にかかわる仕事だから、大学の勉強が全然わかってないの は勿論論外で雰囲気だけ分かっているとか概要だけはつかめたというのも論外。 まる写しレポートで「要領良く」単位だけ集めるのも論外。定期試験が終わっ たら全部忘れてしまうというのも、やはり論外。大学を卒業した時点でほとん どの事についてほぼ完璧にわかっていて、その後の研修医期間で「ほぼ完璧」 を「完璧」にしてもらわないと困るんではなかろうか。でも、数学科や情報学 科の様子を見ていると「そんな事言ってたら、ほとんど全ての学生が『論外学 生』じゃん!」ってことになる。

全国の大学の医学部の卒業生の9割程度が、実際に『論外ならざる学生』 としてやってきたとするならこれはもう大学教育の奇跡であって、 驚異的というよりも私にはとても信じられない! 

2002年9月21日(土)
<<案外本当?>>
まだ日差しには夏の面影が残るものの、さわやかな秋めいた日である。 午前中は色々雑用。昼食後はすこし昼寝。夕食後は久々にスポーツ・クラブへ。

そういえば昨年の今ごろはもう後期の講義が始まっていたのだけど、今年は 1週間程後ろにずれ込んでいるようである。ということは、今年の冬休みは 大晦日と正月3ヶ日の計4日だけだったりして(冗談のつもりで書いているの だけど、案外本当だったりするところがウチの大学の怖いところである. 真相は各自で確かめよ)。  

2002年9月20日(金)
<< P先生 >>
今日は自宅待機日にするつもりだったのだが、T大に移籍したP先生が京都での 学会のついでに遊びに来るというので出勤。昼過ぎにP先生現わる。カテゴリー 論の専門家として、カテゴリー論で位相空間論を再構築するというような 研究(と私は理解してるんだけど)をしていたバリバリの数学者で、 かつてHartshorne "Algebraic Geometry"でスキーム論のゼミを 一緒にやったP先生ではあるが、現在は将棋プログラム・プロジェクトだの時 制論理の検証系プロジェクトだのといった計算機科学をやっているようだ。 うーん、頭の良い人って何でもやれちゃうんですねー。最近は日本語が 少し読めるようになったというので、ドイツ人の彼に 私の本 をプレゼントする。

来週は学会出張のため、日誌更新は9月30日以降。

2002年9月19日(木)
<<虎視耽耽>>
午前中から出勤し、昼食をはさんでせっせと雑用に励む。昼さがり、ようやく 全てが片付いたので、しばらくしてから帰宅。途中山科駅前スターバックスで 道草を食う。まず近くの硬い椅子の席を確保して、ホットココアをすすりなが ら虎視耽耽と狙うこと20分余り、ようやく(目の前にある)窓際ソファー席を 確保する。どうやら他の客も同様のことをやっているらしく、ソファー席をめ ぐる争いにはし烈なものがあるようだ。何だかこういう闘争に参加していると 気分が滅入ってくるな。

そろそろ前期試験の成績発表や3回生の到達度検証試験、卒研ガイダンス などが始まる。勿論後期の授業も始まる。すっかり忘れていた学生達の事を 少しづつ思い出し始めている今日このごろである。

2002年9月18日(水)
<<すかーん!と>>
午前中から出勤し猛烈な勢いで雑用等をこなす。夕方は教室会議。 細かい議 題が山のようにあって、数学者は皆議論が大好きで、ひとつの議題もおろそか にすることなくああでもないこうでもないと夜7時過ぎまでわいわいやる。数 学者であるかも知れないが「悪魔に魂を売り飛ばして」いるS藤先生は会議の 後半は私の隣でずっと居眠りをし、「悪魔に魂を売り飛ばし」てはいないが、 こないだまで数学者でなかった私も途中から息切れ気味。会議の後、野暮用の ため大急ぎで京都駅に直行。

てんこ盛りの雑用は今日だけでは片付かず、明日もまた出勤することとなっ た。連続出勤とは嫌がおうにも新学期気分が高まるよな。ってな事をやって いるうちに、頭の中から数学がすかーん!と抜けてしまった一日。

2002年9月17日(火)
<<不思議の国の住人>>
午前中は久しぶりのまとまった雨。自宅で書類の作成やら、学会発表の準備や ら。夕方から外出し近所で野暮用を済ませた後、またぞろ京都駅前京阪ホテル やアバンティーブックセンターのあたりへふらふらと出掛けてゆく。夜9時前 ぐらいに山科駅に帰ってくると、珍しくスターバックスの席が空いていたので、 急遽店に入りココアを注文してその席に座ってみた。スターバックスで座席に 座れたのは、これが初めてである。

私は「穴明き体質」なのでコーヒーが飲めず、従って世の人々がスターバッ クスを有り難がる気分がよくわからない。今日もコーヒー以外のメニューを探 すのにひと苦労したのだ。しかしながら、以前からがらんとした店内に少な目 の座席をゆったり配置した店構え、特に窓際に心地良さそうな一人用のソファー を贅沢に配置する店内が気になっていて、一度あのソファーに座って静かに物 を考えてみたいものだと考えていた。しかし、三条大橋店でも山科店でもスター バックスのソファーは何時も誰かに占拠されている。まるで、ソファーの上で 四六時じゅう生活している不思議の国の住人が居て、実はソファーは彼らの占 有物であり一般の客は利用できないようになっているかのようである。彼らは 変装の名人で、ある時は中年紳士にそしてある時は女子中学生や大学生の男の 子などにに変装したりしながら、何くわぬ顔で一日じゅうソファーを占拠して いるというわけだ。全く同じ事が京都駅にホームのベンチでも起こっている。 私は京都に戻ってきてからの10年間、京都駅のホームのベンチが空いている のを見たことがない。きっと不思議の国の住人によって占拠されているのであ ろう。

ところが何と!今日は誰も座っていない京都駅のホームのベンチを初めて 目撃した。そしてその数10分後に山科スターバックスでも同じ現象を目撃し たというわけである。神無月じゃないけれど、今夜は不思議の国で研修会でも あって、みんなそっちに行っていたのだろう。

2002年9月16日(月)
<<現象の原野>>
昼前より昼食をはさんで京都市立醍醐図書館、その後地下鉄とJRを乗り継ぎ京 都駅マクドナルドへ。そこで100円ソフトクリームを食べながら一息、さら に京都駅前京阪ホテルのフロント前ラウンジの喫茶へ。京阪ホテルというのは 私から見れば高価で出張などに気楽に利用できる雰囲気ではないのだが、この 喫茶は一見気取った雰囲気に見えて実はそう高くもなく落ち着いた所であり、 静かに物を考えるには絶好の場所であることを発見した。案外、喫茶進々堂よ りもオススメかも知れない。その後、JRで山科に戻る。

この行脚の収穫は、頭痛の種だったある書類をほぼ完成させることができ たこと。夜自宅で清書する。

ところで学生時代に、最初は代数幾何学に進みたいというような事を言っ ていた友人が、4回生のゼミを選ぶ時期になって、力学系とか応用解析とかいっ た分野(実は私はその辺の学問がどうなっているのか良く知らない)に進むと 言い出したことがある。何故考えが変わったのかと聞くと、代数幾何学は基礎 の部分が既にガッチリ固まってしまっているけど、力学系の方はまだ基礎の部 分も混沌としていて、生の現象を扱いながら自分で理論を作って行けるから面 白ろそうだという。その時、ああ自分にはそういうセンスはないし、そんな風 に考えるこの友人は凄いな、と思ったことを覚えている。生の現象にほとんど 丸腰でぶつかっていくなんて、何て勇気があるんでしょう!

学生の頃は、基礎理論がガッチリ固まっていれば、それに乗っかってある 程度先の方までハイブローな議論が進められるし、その方が生の現象をいくら いじり回しても結局何の理論も見出せずに野垂れ死にするという事態よりはう んとマシなのではないかと考えていたのである。現在ではそういう風には考え ていない。現象の原野で野垂れ死にするのも、既成理論を駆使したけれど何も 新しい発見が無いというのも、似たり寄ったりじゃないかと思うのだ。けれど、 既成理論がほとんど何も無く、あるのは不可解な現象の例だけという世界をあ まり嬉しく思わないのは、今も昔もあまり変わらない。これはあまり自慢でき ることではないと思う。でも、たとえ基礎理論がガッチリ固まった分野でも、 面白そうな問題を考えていくと、多くの場合結局そういう世界にたどり着いて しまうんだよね。そういう時は本当はもっと喜ぶべきなのかも知れない。

そういえば、計算機ソフトウエア(OSとかプログラム言語とか言語処理系 とかを指す)って現象の原野が果てしなく広がっていて、一部を除いて基礎理 論もほとんど無く混沌としている。私にとってあまり嬉しくない世界なわけだ。 (あまり嬉しくなくても、研究することは一杯ある。)私は運命のいたずらに よってそこで面白い理論を作っていこうと10年ぐらい頑張ることとなったの だけど、結局数学として見るべき理論は見出せなかった。

そこで、私の計算機嫌いのまたひとつの理由。「あんなものいくらいじり 回していたって、数学として面白い理論が出てくるわけでもあるまいに」とい うやつ。計算機において数学的に面白い理論はそもそも作り得ないのか、ある いは単に私の実力不足なのか?私は、計算機科学は(残念ながら?)数学の一部 ではないと考えているので、前者であろうと思っている。