2003年4月15日(火)
<<ほとんど自殺行為>>
午前中に数学研究会の会長と副会長がやってきて、数学コロキウムの日程を調 整。どんな感じの講演になりそうですかと聞かれたのだが、今のところ「神様 にでも聞いてくれ」としか答えようがない。

午後一番から2回生離散数学の講義。今日は、体上のn変数の多項式環を標 準次数付き斉次環とみなし、そのr次直和因子の部分線形空間としての次元 d(n,r)を求めよ、という私好みの話題を中心に話す。d(n,r)が実は重複組合せで あることは次回に種明かしする予定。

ひきつづき1回生の情報処理。『情報処理演習の内容で疑問に思った事を 述べよ』というレポート課題を毎週出すことにし、今日はその最初のレポート を集める。講義時間に「何か質問は無いか?」といくら聞いても唯々凍りつい ているだけの彼らだが、"質問の内容では一切優劣はつけない"と宣言してあるせいか、 レポートを書かせると実に色々な疑問を投げかけてくる。さっと目を通して疑 問としている学生が多かったCPUだのHDDだのはてまたPentiumとは何かといっ た下品な話を、チューリング機械とかプログラム内蔵型計算機の発明といった、 ちょっぴり格調の高い視点も踏まえて説明する。

それにしても、教育と研究のバランスを常に考えている私、言い替えれば 特別教育熱心というわけでもない私としては、毎週レポートというのはほとん ど自殺行為である。しかし、まだ精神の発達が十分でないため何かあるとすぐ に寝るか喋るかする一回生相手の講座で学級崩壊を防ぐには、何か変わった事 をやらなければと思って試しに始めてみた。要するに、学級崩壊される気分の 悪さに耐え切れないのである。それに「情報処理」なんていう、芒洋としてい て何を話せば良いかわからない講座で、適切な教材を見出すのにも使えるので はと期待している。今後どうなることかは神のみぞ知る、だな。

夕方、情報処理のレポートに目を通してから帰宅。ひとつ良い点を上げる とすれば、『疑問に思った事を述べよ』という課題だとマル写しレポートが発 生しないことである。最終的には、単に疑問点を列挙するだけではなく、それ がどういう風に疑問なのかもきちんと書けるところまで持っていこうかと思っ ている。

2003年4月14日(月)
<< K川先生には内緒>>
檜花粉の猛威に負け、防毒マスクが手放せない一日。風の谷のナウシカは腐海 の底であたり一面に静かに降り積もる毒草の胞子に「きれい。マスクをしない と5分で肺が腐ってしまう死の森なのに」とつぶやいたが、私は毎年この季節 に、はらはらと舞い散る桜の花びらを見て同じ科白を口にするのである。

午前中は、自家養成サクラI君の院ゼミがまたぞろ就職活動で中止になった ため、山科駅前SBUXにてドイツ語の宿題。午後は出勤して卒研ゼミ。単項イデ アル整域の続き、根基とその性質および素イデアルによる特徴付け、準素イデ アルとその性質など。証明のある部分で「そこは明らかでしょ」と言うと 「K川先生に『(学部生は)"明らか"と言ってはいけない!』と躾られ ました」と斬り返される。その後、もっと明らかな所があったので 「そこは(K川先生には内緒で)明らかという事にしておきましょう」「いい んすか?」「(K川先生にバレなければ)いいですよ。だって...だから。」 「あ、そうそう。『...だから明らか』という風に理由を一言示して『明らか』 と言うのは良いと躾られました。」そうかあ、この徹底ぶりは聞きしに勝る熱 血授業の賜物であろう。

卒研ゼミがはねた夕方、K川先生と雑談。彼の代数の講義ノートの一部を見 せてもらったのだが、想像通りというか彼の性格そのままというか、ぐりぐり と何とも粘っこい内容であった。講義のスタイルというのは結構教師の人格が 出るようである。

2003年4月13日(日)
<<才能>>
休息日の日曜日にしては早く起きてしまい、9時からテレビで「鉄腕アトム」 を見て、選挙等の野暮用を経て「バカの壁」を読み始めたところで気を失う。 2時間ほどして意識を取り戻し、目覚まし散歩を兼ねて山科駅前SBUXへ。 Monomial algebraの本にちなんで小一時間ほど一寸面白い計算などをして遊ぶ。 夜はドイツ語を勉強したりしてのんびりすごす。

今回の選挙で、山科区の市会議員候補者は定員と同数だったため投票は無 し。選挙で候補者数が定員を下回ったらどうなるんだろう。しかし実際、定員 割れという話など聞いたことがない。私のような政治嫌いの人間にとって、そ もそも選挙に立候補する人間が存在する事自体が世界の七不思議その一であり、 政治家になりたがるような物好きで奇特な人が居るからこそ世の中どうにかこ うにか回っているのだろうと思う。たとえどんなにひどい政治家であっても、 政治家になりたがること自体はひとつの才能に違いない。

大学の学内政治家達を見てても、元々そういう才能がきらきら、あるいは、 ギラギラしてて自然に学内政治家になっちゃいましたって感じの人は多い。学 内政治は独特の言語や思考を持つ高度に専門化した世界なので、誰でも(責任 感とか義務感だけから)成ろうと思って成れる代物ではないが、成りたいと思っ て(もし心からそう思えるのなら!)努力すれば成れるようである。私にはそう いう才能は全く無いな。

2003年4月12日(土)
<<桜吹雪>>
ドイツ語があっぷあっぷなのである。日誌のドイツ語訳は毎日ではないけどど うにか続いている。午後からのゲーテの前に、午前中にもう一度テキストに目 を通して簡単に予習。夕方、全力疾走のレッスンの後、矢尽き弓折れ満身創痍 状態で開放され、ふらふらとした足どりで帰路につく。そういえば学業優秀な らざりき私は、学生時代のゼミの発表でも「矢尽き弓折れ満身創痍状態で開放 され、ふらふらとした足どりで帰路につ」いたものである。しかし、あの時は それに加えて「自尊心の最後のひとかけらまで完膚なきまでに叩きのめされて」 というのオマケがついていたと思う。お陰で私には自尊心というものが無くなっ てしまった、というのは嘘である。それに比べればあっぷあっぷのドイツ語な んて、じゅうぶん「ぬるい」。

今日は受講者がまた一人増えた。立命館哲学女史二人組みは恐らく就職活 動のため、そして松下巨漢社員はまたぞろガンバの追っかけのため(?)、い ずれも休み。人生に創造性を求める光輝くフリーター氏も本日休みかと思いき や、何故か息を切らせて後半から出席。そのかわり若き日の彼女をロートレッ クの絵の中で見覚えがあるようなやや年輩の御婦人が後半から退席。かくして 教室はあやうい均衡が保たれる。全員休まずに揃ったら教室はパンクするはず である。パンクしそうな教室であっぷあっぷの私。

ゲーテの行き帰りは荒神橋を渡って河原町通りのバス停を利用する。荒神 橋の西岸は公衆トイレがあるためかタクシーの溜まり場になっていて、どうっ てこともないように見える鴨川沿いの喫茶店の幟(のぼり)旗はためく「人気 バクハツ!サービス・ランチ」は、少なくともタクシーの運転手達の間では人 気がバクハツしているようである。そして、このあたりから見える鴨川べりの 桜が美しい。しかし、もう葉桜になり始めていて桜吹雪が吹いている。いい時 期というのはすぐ終ってしまうものだな。

ゲーテに行く途中、ゼスト地下街紀伊国屋書店で、今朝の朝刊で広告が出 ていた創刊!新潮新書「ぐれる」(「人生を半分降りる」の中島義道著)と 「バカの壁」(養老孟司)を一気買いした。今晩から明日にかけて一気読みし よう。夜はラクト・スポーツ・クラブ。 

2003年4月11日(金)
<<桜のような数学>>
桜がきれいである。近くで花のひとつひとつを見上げるよりも、薄ピンクの綿 菓子のような淡い色合いを遠くから眺めるのがよい。普段は全く目立たぬよう に知らん顔している桜の木々が、この季節になると一斉に自ら存在を主張する。 こんな所にも、そしてあんな所にも桜の木があったのか、と驚く。 私も桜のような数学がやってみたいものだ(単に言ってみただけで特に 深い意味はありません)。

午前中に会議があったため、比較的早い時間に出勤。会議の後すこし事務 的な仕事をし、午後はまたQing Liuに取り組み、最も読みたかった部分はほぼ 読了。次は最近入手したVillarrealさんの"Monomial Algebras"(Marcel Dekker,2001)の一つの章を読むことにする。

2003年4月10日(木)
<<紳士的態度>>
本日出勤せず。昼過ぎまで野暮用にて山科駅前、四条烏丸、京都駅、山科駅前 の順に行脚する。その後、山科駅前SBUXなどでドイツ語の予習や宿題を済ませ、 夕方頃よりおもむろにQing Liuをと思ったところが、昨日「一晩寝ずに考えた」 疲れが出て思わず昼寝。Qing Liuは夕食後に延期。

昨日の日誌で書いた剰余環であるが、可換環論や代数幾何学には無くては ならない概念だけども、「確率論と作用素環論と整数論を中心に世界が回っている」 我らが数理科学科においては、剰余環を理解してなくても差し支え無いか、避けて 通れるか、あるいは何となく誤魔化してとりあえず先に進めるのかも知れないな。

いやいや、そんなことを言っていてはいけない。数学は格闘技、あるいは 少なくとも「生命の燃焼」なんだから、自分の専門を客観的な立場から相対化 して眺めるような腰の引けた紳士的態度というのは有害無益なのであって、 「剰余環が出てくるものが数学なのであって、それ以外は数学ではない」とか、 学生に対しても「剰余環というのは、数学のどの分野でも使う基本概念だから、 これぐらいはちゃんと勉強しておかないとね」ぐらいの事を日頃から平気で言え るようでないとダメなのではないかと思う。反省しよう。

2003年4月9日(水)
<<剰余環>>
「S屋先生のいらん事言い」について一晩寝ずに考えた結果、やはり自分は可換環 論屋だから可換環論の話をするしかないではないかという結論に達した。 しかしやは り気が重い。何故かというと、可換環論の話をするとき剰余環は避けて通れないが、 それを「一回生でもわかるようにやさしく」説明するのは至難の技であり、 「適当に誤魔化す」という技を使うにしろ、そんな事がうまくできる自信など全く無いから である。

K川先生によると、剰余環については彼の講義においてこれでもか!これでもか! どうだ参ったか!と親のカタキのように 懇切丁寧 捲土重来 用意周到 臥薪嘗胆 森羅万象 神出鬼没 百鬼夜行 蛍光窓雪 に教えられているという。しかしながら私は、剰余環の概念を理 解して数理科学科を卒業する学生の割合は、30行以上のプログラムを自分で組め るようになって情報学科を卒業する学生の割合といい勝負をする、とニラんでいる。K 川先生の熱血講義をもってしても現実はかくも厳しいのである。

かようにこの概念は学生達にとってははなはだ難関なのだが、実は学生達ばかり ではない。可換環論の研究とは詰まるところ剰余環の研究なのであり、我々は剰余環 を少しでも良く理解できるようにと日々色々な計算を試みたり、さまざまな理論を作った りしているのだ、というのが私の基本的な考えである。その意味で、可換環の本格的な 議論はまさに剰余環の概念から始まり剰余環に終わると思うのだ。

本日午後一番で電気系学科一回生の線形代数の講義。情報学科時代を思い 出す 150名規模のマスプロ・クラス。今日の印象では、まずまず良い子たち みたいだ。その 前後はドイツ語の予習など。夕方から教室会議。教室会議の後はK川先生と少しだ べって、その前後に事務的な用事をいくつか片付ける。 今日もまた開講期間らしい一日 だったな。  

2003年4月8日(火)
<<ネタ無し>>
本日朝から出勤。Qing Liuの方はある定理の証明のところでここ数日停滞し続 けてるので、今日の午前中こそは心静かに「解読」をやって決着をつけようと 思ったのだが、結局色々な事が起こってバタバタしているうちに講義の時間。

「色々な事」のうちの一つは、数学研究会の新会長と副会長がやってきて、 先生、5月の数学コロキウムで何か話してくださいよ、えー!?話のネタな んかないよ、そこを何とか...S屋先生のたっての御指名もありますし、ええっ!? S屋先生が?また、いらん事言う先生やなあホンマに。とい うような押し問答の末、何となく引き受けてしまったという事。あーあ、どう しよう。まじでネタ無いよ。

午後一番からは「離散数学」(2回生)と「情報処理」(1回生)の講義。3ヵ 月ぶりの2連チャン講義は疲れる。1回生というのはやはり不安な雰囲気をか もし出している。不安な学生相手に情報処理などというあやふやな事を教える のは結構難しいものである。しかし今の2回生もそうだけど、1年も経てばず いぶん大人びた感じに変わってくるのであろう。 ひきつづき教授会。何だか知らないけど、新任の先生が山のように居て 自己紹介。そんなに沢山の人なんて覚え切れないよう。

それにしても、なんて開講期間らしい一日だったことでしょう。

2003年4月7日(月)
<<前期セメスター開始>>
本日より前期セメスター開始。ちょっと面白ろそうなプレプリントが手に入っ て、それを眺めているうちに卒研ゼミの時間が来る。今日はイデアルの演算、 素イデアル、極大イデアル、単項イデアル整域など。発表者T君によると、こ れらの話題は3回生前期の代数の講義の復習に相当するらしい。しかし、これ らの内容が3回生の復習ですと言える学生は、私の経験から察するにほんのひ と握りしか居ないと思われる。次回は根基イデアルと準素イデアルに入る予定。

さあて、今晩はどの部分をドイツ語訳しようかな。

2003年4月6日(日)
<<社会復帰>>
今日は喜ぶべきか悲しむべきか、鉄腕アトム誕生前夜であるとともに、私にとっての春休み 最終日である。午前中は野暮用などを中心にゆっくり過ごし、午後はあっぷあっぷのドイツ語 の宿題など。夕方より三条河原町方面に出かけ、明治屋で久しぶりに食べたくなってきた プンパーニッケルを買い、ブックファーストを瞬間的に冷かし、新京極喫茶平野屋改めいつも 満員御礼SBUXにてQing Liuの「解読」。夜はドイツ語を少しやったり、Qing Liuを眺めたり。

明日は卒研ゼミであるが、新学期の幕開けとしては緩やかな良いスタートだと思う。新学期 の最初の授業が例えば一回生配当「情報処理」とか工学系学科一回生配当の線形代数とかだ と、春休み中に頭の中を渦巻いていた事から比べると、いきなり話が下品になったりテンション が下がったりして眩暈(めまい)がする。「年寄りの冷や水」と言うことだし、何事においても急に やるのは体によろしくない。それに、こないだまで高校生だった子供達が束になって押し寄せてくる 一回生前期の講義というのは、それなりにくたびれるものである。それに比べて「卒研ゼミ」とい うのはいい線を突いていると思うのだ。社会復帰は卒研ゼミから!である。

ところで、あっぷあっぷの状況に追い込まれたドイツ語を何とかしようと、今日から(できれば) 毎日この日誌の一部をドイツ語訳しようとノートを買ってきた(またノートだぜ、この三日坊主めが)。 今日の翻訳は「こないだまで高校生だった ... くたびれるものである」の部分。いずれ この日誌は全文ドイツ語で書かれることになるであろうと、とりあえず大法螺を吹いておく。

それやこれやの勉強計画は、新学期が本格的に始まったら簡単に吹っ飛んでしまう 可能性は大きいな。

2003年4月5日(土)
<<勢いでやる>>
午前中はドイツ語の予習をし、午後からゲーテ。夜はラクト・スポーツクラブ。 数学は無し。

ゲーテでは、ガンバ大阪の熱狂的サポータ松下電器巨漢社員氏は欠席。 前のクラスでも一緒だった20代後半某西陣女性は、仕事の都合で先週一回 だけでこの講座をあきらめることとなった模様。その代わり、先週欠席の4名が 初めて顔を見せた。全くワッショイワッショイ押し競饅頭みたいなクラスである。

さて新顔4名その一は元画家志望立命館哲学4回生女史の同級生と思われる女子 学生一名。はてな。大学入学後ゲーテのコースを入門から順番に受講していくと、4回生 になってやっと中級の最初のクラスにたどり着く計算である。ゲーテ側の都合による上位 互換のクラス大合併とそれに伴うやや強引な飛び級(「飛ばし級」と言うのが正しい?)が あったものの、このクラスは中級の4番目のクラスである。計算が合わないではないか。彼 女達は帰国子女か、はてまたドイツ哲学専攻真面目学生ゆえの連続飛び級の結果か。 ま、どっちでもいいんですけどね。

それ以外では、謎の女子学生約一名。さらに、前のクラスでも一緒だった、 私が密かに”心の冷たそうなドラえもん”と呼んでいる某職業婦人。勿論彼女が 本当に心の冷たい人かどうかは、知らないけどね。

最後は「職業生活は人生の重要な位置を占めるため、創造性に溢れるものでなければ ならない。創造性の無い仕事には耐えられないから、私は大学で勉強しながらフリーター をやっています」(ドイツ語自己紹介より)という30代前半に見えるフリーター氏。「職業生活は 人生の...耐えられないから」という所までは私も全く同感なのだが、そこから一気にフリーター 生活に飛んでくところが、戦略無き一本気なのか、はてまた光輝く黄金の愚直さの成せる技な のか、とにかく心のうす汚れたオジサンとしてはおおいに世代間ギャップを感じちゃいます。

世代間ギャップといえば、最近奈良女子大を定年退官された偏微分方程式論の 坂元禮子先生へのインタビューで、最近の学生と昔の学生の一番大きな違 いは、昔の学生はわけがわからないままにとにかく勉強してみるという芸が出 来たけれど、今の学生は何故それをやるか意味付けがわからない事には全然努 力ができない、というような事が語られていた。確かにそんな気がするな。

ところで、「何故ドイツ語を勉強しているか?」という質問は私には禁句 である。なぜならば、私にも分からないからである。ゲーテで新しいクラスが 始まる度に自己紹介でその事を話すはめになり、「趣味だから」とか「エッセ ン大学の昼食時にHerzog先生が一緒に居る学生や同僚達とドイツ語ばかり喋っ て意地悪するから、この野郎!と思ったから」とか色々なことを言って苦し紛 れに誤魔化しているのだが、本当のところは「勢いでやってます」としか言い 様がないのである。「勢いでやってます」ってドイツ語で何と言えば良いのか しら。

いつの日か、「私は『勢いでドイツ語を勉強しています』ということをド イツ語で言えるようになるためにドイツ語を勉強してきました」とドイツ語で 言えるようになるためにドイツ語を勉強しているのである、ということにして おこう。

2003年4月4日(金)
<<まだ春休み>>
午前中は山科駅前SBUXにてQing Liuの教科書を読み、その後「水と食料」を持って 大学へ。新入生達で食堂はパンク状態だが、水と食料さえ自前で確保しておけば 大丈夫だ。午後は整理整頓された研究室でQing Liuの続き、あっぷあっぷのドイツ語、 プレプリント眺めなど。立命館は今日から前期開講だが、今年の私はまだ春休み。

代数幾何学で必須の"Serreのtwisted sheaf"も以前からどうにもよく分からず、 可逆層だから階数1の局所自由加群になるのに大域的には複数個の大域切断で生成 されるって何だか矛盾した不思議な話のような気がしていた。本日やっと謎が氷解。 毎日一つずつ謎が解けていくのは、すこぶる気分がよろしい。

2003年4月4日(金)
<<水と食料>>
午前中は山科駅前SBUXにてQing Liuのお勉強。それから水と食料を持って出勤。 この備えがあれば、ごった返す新入生の嵐から身を守ることができる。立命館 は今日から開講だが、私の授業は来週から。午後は整理整頓された研究室で Qing Liu, プレプリント眺め、ドイツ語など。途中来週からの授業で使う教科 書を生協に買いに行く。

2003年4月3日(木)
<<皆さん春ですねえ>>
今、大学は新入生達でごった返しているので、極力近寄らないようにしようという ことで、本日自宅研修日。 昨日に引き続き Qing Liu の本やドイツ語のお勉強を したり、プレプリント・サーバからとってきた論文を眺めたり。

スキームの射による加群層の引き戻しはテンソル積層で定義され、アフィン・ スキーム上で考えると加群のテンソル積とうまく対応することはスキーム論の 基本である。しかし、恥ずかしながらこれがどうもすっきり理解できていなかった。 この定義は、Hartshorneの本でもQuig Liuの本でも演習問題になっているある 事実に基づいていて、その問題を解くのをずっとさぼっていたからである。実際 解いてみたら、ずいぶん長い解答になってしまった。

夕方、散歩がてらに山科駅前SBUXへ。ひところ多かった看護師試験の受験 勉強をしている人は姿を消した。先日新聞に合格発表が出ていたから、彼女達はこの春 から晴れて看護師として働いているのであろう。今日の私の左隣は、50代ぐらいの アメリカ人男性と20代ぐらいの日本人女性のペア。どうやら近くにある語学学校の 個人レッスン(初級レベル)をやっているように思われる。今日は初顔合わせみたいな 感じだった。私の右隣は今日はこの春から京大の理系学部に進学する男の子が、高校 の後輩の女の子とデート(のようなもの)をしていた。何でも最近の京大理系の 数学の入試問題はべらぼうに簡単で、「なめとんのか!」と思うぐらいらしい (その男の子の話による)。うーん。皆さん春ですねえ。  

2002年4月2日(水)
<<広義単調減少>>
午前中は山科駅前SBUXにて、あっぷあっぷのドイツ語の勉強。それから大学に 出勤。キャンパスは新入生達で溢れ、玩具箱をひっくり返したような状態。食 堂もパンク状態で、とりあえずコンビニで買ったパンで食いつないだものの、 ちゃんとした昼食にありつけたのは14時半頃。昼食をはさんで夕方頃まで細々 とした仕事をやってから、Qing Liuの本の勉強に移行。

途中廊下で出会ったO坂先生に、システム管理者たることと親切で良い人で ある事は相矛盾する概念で、「親切なシステム管理者」というのはまさに絶対 矛盾の自己同一ならぬ"形容矛盾の自己同一"に他ならない、という持論をぶつ。 世界中の大学間では既に「意地悪でない(形容矛盾の自己同一型)システム管理 者」という希少種の引っこ抜き合戦が行われていて、立命館の数理科学科もそ の戦いに巻き込まれている。願わくば、この過程の中でこの世から意地悪なシ ステム管理者達が淘汰されんことを。

そういえば例年新入生ガイダンスの時に教室の教員が集められ、新入生と の顔合せなどをやっていたのだが、今年から省略されたようだ。情報学科時代 は年を追う毎に形式的な学校行事が狭義単調増加していったが、数理科学科は その逆で広義単調減少傾向にあるようだ。ということで、私がスーツを着るの は年1回だけになってしまった。

2002年4月1日(火)
<< またまたこの日がやってきた >>
ドイツから帰ってちょうど2年が経った。時の経つのは速いもので新しい歴史 は着々と作られている。ちなみに、私の頭の中ではドイツに行く前が「紀元前」 でドイツから帰ってきてからが「紀元後」である。

本日午前中は山科駅前SBUXにて代数幾何学のお勉強。Qing Liu "Algebraic Geometry and Arithmetic Curves"(Oxford Graduate Texts in Mathematics 6). この美しいデザインの分厚い本は、Hartshorneの教科書に比べて少し可換 環論寄りの書き方がしてあるようだ。そのためか、私には読みやすい。8章の blowing upや双有理変換の所をきちんと読みたいのだけど、例によって途中で 何だかんだと忙しくなってきて放り出すことになるであろう、という悲しい予 測が脳裏をよぎる。

blow up環とかRees環とか呼ばれているものは可換環論では重要な研究対象 だけれど、恥ずかしながら私はまだあまりよく理解していない。この際だからちゃんと 勉強しておこうと思うのだが。また、blow upは代数幾何学でも重要な概念 のはずだけど、Herzog先生が言うように「俺は今までRees環の論文を10本 前後書いた。しかし代数幾何学の連中は見向きもしない」のは何故なのかも ちょっと興味がある。

午後は大学へ。昨日に引続き細々とした仕事を片付けたり、あっぷあっぷ 状態のドイツ語の勉強をしたり。昨日は合州国とカナダにWebが継らなかった が、今日は学内の計算機ネットワークの調子が悪くてどうしょうもない。途中、 今年の卒研生のT君が、お供の手下たち(?)を引き連れて現れる。T君は春休み 惚けのせいか、言葉がちゃんと出てこないように見えた。ま、新学期が始まっ てしばらくすれば、元に戻ることでしょう。