「生き急いだカミナリ族」氏は、いつも高そうなスーツを無造作に着て、ギリ シャ彫刻風の微笑をたたえ煙草をふかしながら一日中黙って計算機の端末に向 かっていた、何を考えていたのか分らない人である。
某中部地方の病院の一人息子で、家業を継ぐのを嫌いハッカーの道に入ったと か、東京の某一流私立大学で、全優の成績で学長から金時計か何かをもらった とか、3000行ぐらいのプログラムを書いても決して「デバッグなどという 下品な事」はしないのだとか、某令嬢とお見合いをして東京中の公園をデート して回ったとか、華やかでちょっぴり可笑しい伝説が絶えない人でもあった。 ICOT出向後、某超一流通信関連企業の研究所で相変わらずハック人生を送っ ていたようであるが、最後に30代前半の若さでクモ膜下出血であっけなく死 んでしまうところも、何となく彼の美学の一貫のような気がするのである。