風船爆弾


この人とその手下の○×さんと一緒に歩いている姿は、まさにブルース・ブラ ザーズのジョン・ベルーシそのものである。この人はICOT研究所海側部屋の 「最終兵器」とも「体重平気」とも呼ばれている。実際このひとのクローンが 空から百も二百も爆弾のように降って来たらさぞかし恐ろしいことだろう。

この人はいつも席を離れ、あちこち漂っている。これについては、彼はギリシャ の哲学者のように歩きながら思索にふけっているのだろう説と、いや単に風船 爆弾の真似をしているだけだろうという説が対立するという、「シュレディン ガーの猫」的状況にある。

ちなみに「私は繊細だから」と言ってホロホロホローと笑うのがこのひとの口 癖である。私とて、「私はまともな人間だ」という人の言うことを真に受けて はならない、という程度の処世訓は身につけているが、「私は繊細だから」と いう人の発言はどう受け止めれば良いかは、大いに悩むところである。「私は 繊細だから」と言って真面目な顔をしていたら、要するにこの人は神経質なだ けなのだろうと判断することにしているが、その後にホロホロホローと笑うと ころが曲者である。「微笑みをもって真実を語れ」というから、これはひょっ として本物かも知れない思ったりする。

<<註>> ”ホロホロホロー”が「微笑み」に該当するかは、事実認定に争いが あるところであるが、この人には私の結婚式にツボを突いた大変良い挨拶をし てもらって大いに気を良くしたから、「微笑みである」と判断することにする。