愛すべき「打ち上げ花火」型上司


大構想のぶち上げを得意技とし、OHP一枚で何時間でも景気の良い話ができる 演説の名手である。「総論には滅法強いが、各論に弱い」と悪口をたたかれる こともあるらしいが、人間得意・不得意があって当然であるし、人の上に立つ 者は細かい事にとらわれていてはダメで、大局で物を見なければいけないのだ、 とも言える。

ところで、俗に東大vs京大の対比と称して、「京大は自由の気風にあふれ、浮 き世離れした突拍子も無いことを考える事をよしとするのに対し、東大はわり と現実主義的秀才指向であるのでノーベル賞でも京大に負けるのだ」と言われ る。この説の真偽はさておき、工学部の情報系だけに関して言えば、全く逆だ と思われる。というのも、ICOTやその母体となった電総研は東大工学部系の人 が中心になっており、どうも50年100年の長い時間軸の中で、浮き世離れ したとんでもない事を考えたり、怪しげな研究をしている人が多いような気が する。また、とんでもないアイディアであっても、「まあ、面白そうだからやっ てみなはれ。」という気風も感じられる。100個のアイディアのうち1つで も当たればもうけもの、という感じだ。それに対して、「ICOTや電総研みたい な浮き世離れした事をやってたんじゃいかん。メーカなどと一緒に地道かつ現 実主義的にやるのが正しいのだ。」と言う人は決まって京大工学部系の人であ る。これはホームランは狙うな、地道にヒットを打って塁に出よ、という路線 である。以上の意味で、”愛すべき「打ち上げ花火」型上司”はすこぶる東大 工学部的で、大変よろしい。

かように大物風をぶんぶん吹かせ、かつ、人の良い事この上無しという上司を持っ た部下は、すこぶる気分が良い。何せ景気の良い雰囲気が漂う中で、何をやっ ても「よくやった。」「労作だな、うん。」「もっとパーっと発展させてみろ。」 「面白い!頑張ってもっとやれ。」と始終おだてられるのだから。しかし「各論に弱 い」ゆえ、こちらが研究の方向性について壁にぶち当たった時、具体的な点で 良いサジェスチョンは期待できないので一寸辛い面もある。