ヒューマンインターフェイス期末試験問題2007年度

1.成人識別たばこ自動販売機(たばこを購入するものが成人であることを確認する機能を有する自動販売機)の操作性についてヒューマンインターフェイスの観点から論ぜよ。

2.宇宙のかなたにあるA星は大気の成分や気温などの環境が地球とそっくりであり、そこに住む高等生物Xは人類とそっくりであったが、ただひとつ記憶力がとてつもなく優れている点が異なっているとする。この星における使いやすいインターフェイスに関して考察せよ。


解説

1.どんなに講義の内容を丸暗記しても、現実問題に使えないのであれば勉強したことにはならない。講義の知識をどのように現実の問題に応用できるかを試すことで本当に講義の内容を理解できているかどうかを見ている。2008年に話題の新製品のひとつにiPhoneがあり、これを問題として出そうかと思ったのだが、買った人と買わない人とで不公平になりそうなのと手嶋も使っていないのでよくわからないので出題をやめ、それ以上に何度も政府などが広報をし、またニュースでその不正使用について報道された成人識別たばこ自動販売機を題材にすることとした。使用したことのある人とない人とでやや答案の書きやすさが変わる可能性はあるが、後述するように実際の機械の操作性を知らなければ手嶋の想定した正答を書けないわけではない(手嶋はこの販売機をみたことはあるが使ったことはない)。もしもたばこを吸わなくても、頻繁に広報され、不正使用などさまざま問題が発生して何度もニュースで報道されているのだから、それについて全く知らないではエンジニアとしては問題がある。自分が不要なものでも、話題となっている新しい機器に興味ぐらい持ってほしい。
この成人識別たばこ自動販売機の操作性の最大のポイントは、未成年には使えないようにしている点である。講義中にも同様の例をあげて話したように、これはわざと使いにくくしている装置なのである。未成年に使えないようにすることは、使いやすさよりも優先されると考えられて作られた装置なのだという点である。このことを指摘しただけで15点つけている。「TASPOを使わないと買えないようにすることは制約である」と書いている人が何名かおり、そのこと自体は正しい。しかし、それは操作性を向上させるための制約ではないので、この点の説明なしに単に「制約である」と書くだけでは加点していない。「成人にしか買えないようにすることは制約である」と書いている人も何名かいたが、これは厳密には正しくない(減点はしていない)。その上で、TASPOや顔認識などほかの成人識別技術について、完全に不正使用をなくすことは現状では難しいこと、それをやろうとすればするほど使いにくくなることについて書いていれば、その内容に応じて最大20点つけている(とはいえ、ここで20点を取った人は誰もいなかった)。つまり一般の自動販売機と共通となる操作性について何一つ書かずに満点を取れる配点にしている。それに対して、単に自動販売機の操作性や、ICカードの操作性を書いただけでは、どんなに詳しく書いても最大で20点しかつけていない。この成人識別たばこ自動販売機の操作性の本質をきちんと指摘していないから、それだけでは満点にできないと考えるからである。ただし、この普通の自動販売機の操作性に関しては例年に比較してよく書けている人が多かった。その一方、TASPOの機能や特徴などをながながと書いている人がいたが、例年通りインターフェイスに関係していない説明は採点対象とはしていない。
平均点は17.2点/30点満点.満点は3名のみ。81%の人が20点またはそれ以下だった。既存の機器のインターフェイスについて書かせる問題では書きやすいからか過去は毎回平均点20点以上であったが、今回は少しいつもとは違う使いにくさに関する出題だったためか点が低かった。その一方で、例年の如くこの種の問題は書きやすいので0点は1名のみと極端に点数が悪い人も少ない。

2.2000年度にほぼ同じ問題、2005年度に逆の設定の問題を出している。なので、
「外界の知識」の中でも「取扱説明書」は一度読めばよいのに対して「ラベル」や選択肢の中から選ばせる入力方法はほぼ不要になること、「可視化」・「対応付け」・「制約」等は不要にはならないが地球よりも重要性は低いこと、その結果として相対的に「物理的インターフェイス」の重要性が増すことが特に重要で、(そんな人はいなかったが)もしもこれだけ全部書ければ25点つけた。そのほか、パスワードなど無意味なものの記憶が容易なこと、標準化、1つのスイッチに多くの機能を対応させてよいこと、Rasmussenの人間行為の3階層やヒューマンエラーなどについて書かれていれば加点した。用語が正確に書けなくても例などでそのことを指摘していることが明確な場合には加点しているが、やはりきちんとした専門用語を使う方がすっきりと説明できるだろう。具体例を書くことは悪いことではないが、具体例だけで一般化できないていない場合はきちんと理解しているとは評価しづらい。また、地球との差がないものを長々と書いても点数はつけられない。
この手の問題はできが悪いことが多いが、それにしても今年は特にできが悪かった印象がある。誤字の減点もしていないし、やや書いていることがおかしくても気が付いていれば部分点をあげるなど甘めに点数を付けたつもりなのだが、35%の人が10点以下。満点は2人のみ。平均点14.1点/30点満点.

A+:3% A:15% B:29% C:25% F:27%


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Last modified: Mon Aug 11 2008