ヒューマンインターフェイス期末試験問題2009年度

1.高齢者向け携帯電話の操作性についてヒューマンインターフェイスの観点から論ぜよ。

2.下記の機能を持つ、琵琶湖の湖底を探査するための有線操縦方式の無人潜水ロボットのインターフェイスを設計せよ。単に図を書くだけではなく、どのような点に注意したのかを文章で説明すること。
・大型スクリューで前後進する。また船体の前部と後部にスラスタと呼ばれる小型のスクリューが上下左右向きに取り付けられており、それを動作させることで方向転換を行うが、スラスタには十分なパワーはないので、その場回転はできるが、真上や真横方向への移動はできない。
・センサで姿勢はわかる。しかし水流があるので水中のどこを走行しているのか正確な位置はわからない。カメラはついている。
・その他の機能は各自が適当に設定してもかまわないが、想定した内容は答案に明確に書くこと。


解説

1.2002年度にほぼ同じ問題を出しており、詳しく解説している。なのでこれを事前に読んで考えていた人はよい答案が書けるだろう。解説もほぼこの年のものを見てもらえばよい。
機能を減らすこととボタンを減らすことを混同して書いている回答が多数あった。機能を減らさずにボタンの数を減らせば使いにくくなるので、単にボタンの数を減らすと書いたら間違いである。また、答案の最後に「ボタンの大きさ、数字の表記、ボタンの色、電話帳の機能など多くの点が改善されるべきである」と書いている人がいた。書いていることは正しいけれども、どのように改善するのか、なぜ改善が必要なのかを全く書かずに項目を挙げるだけでは加点しづらい。高齢者向けではない一般の携帯電話のインターフェイスに関して詳しく書いている人もいたが、題意とは異なるので正しいことが書いてあっても少ししか加点できない。また、今や携帯電話の一番必要な機能は電話ではなくメールである、という意見も複数見られた。現代の大学生の使い方ではそうかもしれないが、高齢者の場合にもそうだという考えはおかしいだろう。配点を一番大きくした項目は、「あまり使わない機能を減らすべき」ことで、次いで「携帯性と使いやすさは相反する」こと。前者を書いている人は多かったが、後者を書いている人はほとんどいなかった。「視力が低いので液晶画面を大きくすればよい」と書く人は多かったが、小型の形状を維持して液晶を大きくするのは難しく、「全体のサイズを大きくしても液晶画面を大きくする」のか、それ以外の方法を取るのかまで考えてほしかった。
全体的にできは悪くない。とはいえ満点は8名のみというのは満点とするための要求レベルが厳しかったか?最低点は8点1名、9点4名。平均点19.1点/30点満点.

2.2006年度のヘリコプタ、2007年度の蛇型ロボットと同じ傾向の問題。これらの問題の解説を読み、よく自分で考えてみた人は、それとの相違点・共通点を考えることで、考えるヒントになったはずである。もちろんキーワードは「対応付け」であるが、前後左右上下回転の4自由度の動きをするヘリコプタよりも、頭の向いている方向に進む場合の蛇型ロボットに近いことに気がつけば、自動車の操縦にジョイスティックが向かないのと同様にジョイスティックでは対応付けが必ずしもよくないことはわかるはず。旋回なのだから自動車と同じようにハンドル形状の方が対応付けはよい。もちろん浮上・沈降の自由度もあるのでハンドル1つではダメだが。ハンドルでなくても旋回と回転系の操作とが対応付けてある操作方法ならばOK。なのにほとんどの人がジョイスティックを使うとしているのはなぜでしょう?講義で説明しましたよね?ジョイスティックでの自動車の運転は対応付けが悪いと。ただし、前後進は別の操作手段にして姿勢変更2自由度だけをジョイスティックに割り当てるのは、うまく対応付けをすればよい手段になりうる。つまり、コントローラ上のジョイスティックのニュートラルの方向を前向きにして配置し、ジョイスティックの向きと潜水艦の姿勢とを対応付けする方法はわかりやすくてよい。しかし、ジョイスティックのニュートラルの位置が上方に向いており、左右に倒すと左右に旋回するというのでは、自動車の操作と同じで対応付けは悪い(A)。ゲーム機などで使われる+型のキー入力は、On-Offだけしかできない、斜め方向への操作ができないなどジョイスティックよりも操作性が劣り、メリットは小型化できることなどしかないので、あえてこれを使う理由はないと思う。にもかかわらず、相当数の人たちがこの+型のキーを選んでいるのも理解できなかった。この手の問題で家庭用ゲーム機のコントローラを使うと書く人が毎年出るのだが、それだけでこの講義を理解していないということがわかる。ゲーム機は各ゲームの操作性を考えてコントローラを作っているのではない。操作可能だとしてもこの講義の内容を十分に理解していれば、それが最適な操作方法ではないことがわかると思うのだが。それしか思いつかないほど毎日ゲームばかりやっているのだろうかと思ってしまう。飛行機の操縦桿と同じ方式という回答も複数あったが、操縦桿は左右に動かすと翼の傾きが変化する。すなわち、機体の前後軸を中心とした回転(ロール)をし、その傾きを利用して飛行機は旋回する。そのために、この機体の動きと操縦桿の操作とは対応付けがよいが、問題の潜水艦の動きとは全く異なるので、これでは対応付けは悪い。
移動をどのような操作方法で対応付けするかに20点を配点し、それ以外の記述(たとえば、操作者は専門家か素人か?など)で10点取れば満点とした。操作が可能ならば対応付けが悪かったり説明が十分でなくてもとりあえず5点、上記のAの場合10点とした。対応付けの20点分が満点の人、すなわち適切な対応付けの操作方法を書けた人は15名のみというのは少なすぎませんか?
毎回のことだが、操作方法について何も書かずに潜水艦の機能ばかり書いている人はなにを勉強しているのでしょうか?操作と無関係な機能についていくら書いても0点です。しかも位置計測にGPSを使うとまで書いた人も何人も!なんとかのひとつ覚えですかね。必ずこの手の問題で「GPSで位置計測」と書く人がいますが、GPSの電波は水中では拡散して計測できません。はじめから問題に「正確な位置はわからない」と書いているのに・・・。ちなみに、GPSで自分の位置計測をしながら、超音波を使って水中の潜水ロボットまでの距離を計測するブイを複数個使用する方法が、おそらく一番精度の高い位置の計測方法だと思います。しかしこれも、水温によって音速が変わるので、それほど精度はよくないはずです。
予想以上に「対応付け」についてきちんと考えられていない人ばかりで、平均点14.8点/30点満点と悪い.2006年度、2007年度に比較して簡単だと思ったのですが。満点は2名のみ。一方機能ばかり書いて0点だった人は4名。

A+:4% A:18% B:19% C:36% F:23%


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Last modified: Wed Aug 12 2009