ヒューマンインターフェイス中間試験問題2009年度

1.ヒューマンインターフェイスにおける概念モデルの重要性に関して説明せよ.
2.インターフェイスとヒューマンエラーの関係について例を挙げて説明せよ.


解説

1.過去に何度かだしている問題だが、今年は特に出来が悪い。特に独自の例を挙げているものはほとんどが間違っていた。また、可視化や対応付け等と混同している例も多数見られた。また、日本人であっても、日本語として何を書いているのかさっぱりわからないものがいくつかあった。たとえば、主語と述語とが一致しないものなどである。
平均点は12.9点/20点満点.満点は16名。

今年も、採点の実際をもう少し具体的に説明しよう。実際の解答にはもちろん数字はなく、あくまで説明のためにつけたものである。

1.概念モデルとは、人が機械または道具を扱うときに、実際にそれを使う前に経験として知っている事や、視覚情報から判断できる情報である。
2.よって、この概念モデルと機器の使用法や能力等が違う場合、使いにくい、または誤った使い方をする可能性がある。
3.例えば、ドアにノブが付いていた場合、ほとんどの人はそれを見ただけでノブを時計方向に回せばドアロックが外れ、部屋に入るときは押す、出る時は引けばよいということがわかる。
4.しかし、ノブの回転方向が反時計回りであったり、部屋から出るときに押さなければ開かないドアであれば、ほとんどの人は部屋の出入りがスムーズに行えなくなり、災害時などでパニックになれば、カギが空いていたとしても部屋から出られなくなり、命を落とす事も考えられる。
5.よって制品を作る場合、それを使う人の概念モデルを十分に考慮することが重要になってくる。

まず第一文は表現が不正確である。丸暗記はするなとは言っているが、「操作と操作結果との対応関係に関する頭の中に作られるモデル」ということが明確には読み取れない。全くの間違いとも言い切れないので、最大6点の所を2点だけ加点した。
第2文は、まず「概念モデルと機器の使用法や能力等が違う」という表現が正確ではない。この解答の表現であれば、『「概念モデルと機器の使用法が違う」場合や「概念モデルと機器の能力等が違う」場合』ということであり、概念モデルに関して正しく理解していないことが明らかとなる。そのあとの「使いにくい」という表現では加点はできないが、「誤った使い方」という表現に対して、文の前半が間違っているけれども甘く採点して2点加点した。
第3、4文は、具体例である。例を挙げて説明している場合、書いてあることが一般論と重複している場合でも、その内容によって最大3点加点している。もちろん例の中で大事なことが書かれていれば、その分は加点している。しかし、この解答例では、概念モデルについて正しく理解していないために、間違った例を挙げている。すなわち、概念モデルは「どの操作手段をどのように使用すればどのような機能が実現するのか」を頭の中でシミュレーションすることであるにも関わらず、この例はアフォーダンスに関して説明している。よって加点しにくい。しかし間違ってはいるが、まあ、何かは書いているので、1点加点した。
第5文は特に重要なことを言っているわけでもなくまとめただけであるので加点はしない。
なお、「カギが空いていた」(開いていた)、制品(製品)など漢字の間違いがあるが減点はしていない。ただし、漢字の間違いや日本語として不正確、字が汚くて判別が難しいなどのケースは減点はしていないが、甘めの加点が心情的にしづらくなっている。


2.そこそこ書けている人が多かったので、5点未満は少ないが、平均点は意外と伸びなかった。2005年度、2006年度の解説でも述べているように、2つのミステイクと1つのスリップは単に「ヒューマンエラーが論理的である」ことの具体的な事例として挙げているだけであり,重要度は低いのだから、こればかり長々と具体例を挙げて説明しても良い点はつけられない。ちなみにこの内容だけを20行以上にわたって具体例を挙げて説明しても、10点しかつけられない。もしも具体例だけで、ミステイクとスリップの一般的な特徴が何も書いてなかったら6点しかつけていない。満点は24%だった一方、10点未満が17%。
平均点は14.1点/20点満点.


なお,どうしても中間試験を受けられなかった人にはレポートを課した.しかし,例年と同じで、配布資料を見ながらレポートを書けるにもかかわらず,試験の満点の解答から比べて劣るものばかりだった.ましてレポートでは試験よりも厳しく採点をせざるをえないので,いい点を取るには相当がんばってもらいたいのだが.

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Last modified: Sat July 18 2009