福祉インターフェイス論期末試験問題2015年度

1.下記の機能を持つ屋外用の無線操縦式の小型無人ヘリコプタ(いわゆるドローン)のインターフェイスを設計せよ.単に図を書くだけではなく,どのような点に注意したのかを文章で説明すること
・上下前後左右斜めいずれの方向にも進むことが可能であるほか,垂直軸周りの姿勢の回転もできるが,水平軸周りの姿勢は一定とする.すなわちこのヘリコプタの下側は必ず地面方向を向いている.
・下方を撮影する固定カメラがついている.
・操縦はドローンを目視しながら行うことを前提とする.
・その他の機能は各自が適当に想定してかまわないが,想定した内容は答案に明確に書くこと.
2.BKCキャンパス(及びそのアクセス)において障害者・高齢者に配慮している,又は配慮が欠けている設備・機器についてできる限りたくさん箇条書きし,それぞれについて2行以内で説明せよ.(制度等は除く)


解説

1.今年話題になったのでドローンについて出題してみましたが、ほぼ同じ問題は2006年に出していて(当時はドローンなんて言葉はなかった)、解説も公表していたから、これを見て勉強していた人には簡単だったはず。実際によくできている人が多かった。特に最も重要なポイントである「対応付け」についてはほとんどの人が書けていたが、垂直軸周りの回転を忘れている人も意外と多かったほか、上下だけ、左右だけを書いていない人もいた。もちろんいずれも減点しています。
 とはいえ、垂直軸周りに旋回するドローンを目視で操縦する場合、180度旋回したら対応付けは逆になってしまう。そういう問題及び解決策について書いてくれることを期待したが、さすがにそこまで書けている人は10名ほどと少なかった。
 2006年との違いのひとつは、当時の問題は災害状況調査用としていたので専門家が操作すると想定できたが、いまや誰でもドローンは購入でき、撮影などさまざまな用途で使われ始めているのだから、素人でも使える、という点である。とはいっても、ドローンを取扱説明書もなしに操縦できるようにとか、練習がまったくいらないとは言いがたいだろう。また、ドローンの墜落事故等も多く報道され、そのことへの配慮について言及してくれている人も多く、このことも加点した。
 また、タッチパネルで操作する方式を提案している人もいたが、機体を目視しながらタッチパネルを操作するのは難しいだろうから、減点した。

平均点23.5/30点満点。過去最高によくできていました。ちょっと甘く採点しすぎたかも?30%の人が満点。相変わらずインターフェースではなくドローン自体を設計してしまう人がいて、10点未満の人も5%いた。

2.これも過去何回か(福祉機械論で)出していた問題。講義中に何度も言っていたように、知識の暗記ではなく、正しい知識を実際問題に応用できるかどうかを問うている。過去に出した問題なので、しっかり勉強していた人には予想の範囲内で、しっかり準備ができていたと思う。とはいえ、福祉機械論の時代には1セメスターにわたって福祉機器の話をしていたのに対して、この福祉インターフェイス論ではその半分も話をできていないので、同じ採点基準にはしていない。以前よりも少ない数の指摘で満点になるように配点した。とはいえ、3つ、4つではそれなりの点にしかならない。
 教室間の距離が長くて10分の休み時間では障害者や高齢者の移動は難しい点を挙げていた人は結構多かった。これに気がついたことはよいことだが、しかし、そういう学生がいる場合に優先的に近い教室で受けられるようにカリキュラムを組んだり、または電動車いすを使うなど、ある程度解決可能な点からすると、ほかの項目と同じだけの加点はできない。同様に、メディアセンターの入り口が通りにくいとか、セルフサービスの食堂での問題などを指摘している人もいたが、これも同様に解決可能である。図書館では、そういう人が困っていればカウンタの職員が横から回ってもらうように対応すればよいだけのことである。必ずだれか人がいる場所で簡単に助けられることで解決することの指摘は、高い加点はしていない。もちろん、車いすを持ち上げるなどが必要になると、助けるひとが周囲にいても簡単には助けられないので、そこは大きな問題となる。コンビニなど通路が狭くて混雑していると使えない、などは解決しようもない問題で加点できない。すべての通路を広くしろなど、過大な要求で妥当とはいえないからである。
 障害者・高齢者専用エレベータがないから混雑時に乗れない、などという大幅減点したいぐらい、講義で言ったことの逆を書いている人もいた。若くて元気な学生諸君が譲ればいいだけなのに、それが問題だと書くということは、譲る気などまったくないということなのだろうか。バスの優先席もまったく同じ。そんなものがなくても若くて元気な人が席を譲ればよい。皆がそうすれば解決するものは、加点対象にはならない。実際、バスに乗って真っ先に優先席に座る学生が結構多いのには呆れています。
 「この建物に〜がある」と書かれると、それ以外の建物にもあるにも関わらず気がついていないと判定されてしまうので減点したなど、過去の採点基準もある程度踏襲している。

平均点18.1点/30点満点。できがよい人と悪い人との差が大きい。満点は12%、29点も6%いた一方、10点未満も18%いた。毎日通っている大学になにがあるか(ないか)見ているはずなのだが、問題意識がまったくない人には見えていないということなのだろう。もしも山が外れたってある程度はできるだろうに。


A+:7% A:15% B:33% C:30% F:20%。満点は0名。最高点は97点。

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Last modified: Tue Aug 4 2015