福祉インターフェイス論期末試験問題2017年度

1.以下のような特徴を持つ、ダンスのステップを踏む操縦型の二足ロボットのインターフェイスを設計せよ。単に図を書くだけではなく、どのような点に注意したのかを文章で説明すること。
・片手で操作する操縦装置とすること
・ロボットは自動的にバランスをとるものとする
・ロボットには上半身はなく、右図(省略)のように左右のいずれかの足を360度いずれかの方向へ一歩動かす指令をロボットに出すが、その際に最大±45度足首を旋回させることもできることとする。ただし、立ち足に干渉する命令にはロボットは動作しない
・その他の点は自由に設定してよい
2.障害者用車いすと高齢者用車いすとの違いを詳しく説明せよ。


解説

1.ロボティクス学科の学生には特にイメージしやすかった問題のようで、まったく書けていない人はいなかった。しかし、相当な難問であることは疑いなく、様々な解答があったので、採点は慎重に行った。操作できる方法はいろいろ考えられると思うが、操作できる方法をただ提案したら点がもらえるわけではない点には注意してほしい。使いやすさに重要なポイントに関して「どのような点に注意したのか」がきちんと書けていて、それが妥当ならば加点がなされるのです。逆に言えば、正答は一つではなく、いろいろな解答があってかまいません。
 中には足首の旋回機能の操作を書いていない解答もあったが、その場合はほかの部分がどんなによくできている解答であっても最大20点とした。また、「最大±45度」旋回できるということは、45度未満の旋回も可能と読めるはずだが、45度旋回するか全く旋回しないかしかできない操作方法を提案している解答もあった。これはほかができていても最大25点とした。このように、題意を満足しないものは、それだけ制限がなくなって解答しやすくなっているわけであるので、同じ基準で採点するのは不公平と考えてそれぞれ最大の点数を下げた。360度いずれかの方向に動かせる、と書いているのに、図にある3パターン×左右足で合計6パターンの動きだけできればよい、とか、右足しか動かさないこととと勝手にしてしまうなど、問題とは全く異なる解答があったのは本当に不思議である。 「その他の点は自由に設定してよい」というのは、問題文にある以外の点を自由に設定してよいということである。問題に指定してある内容まで自由に変えてよいわけではない。
 片手で操作するという条件だが、持ち替える操作方法を提案する人が意外に多かったのは、出題時には予想していなかった。ロボットが動作するのに時間がかかるのは事実で、時間面から見たら持ち替える方法もありうるだろうと思う。しかし1歩ごとにまたは足首の旋回が必要となるごとに持ち替える必要のある操作方法は、持ち替えが不要な提案に比べて使いにくいのは明確だろう。特にダンスをうまく踊るというタスクには問題になりかねないと思う。そのため持ち替える必要のある操作方法に関してはほかができていても最大25点とした。
 足を出す方向と操作の方向との対応付けに関しては大多数の人が書けていたが、その前提となる座標系についてきちんと考えられている人はいなかった。足首が旋回するので、足を出す方向というのが絶対座標系で指定しているか、立ち足を基準にした座標系で指定しているのかによって考え方が変わるはずである。特に、旋回するとロボットの向きが反対向きになることもありうるが、その場合には絶対座標系で対応付けを考えると、正しく機能しなくなる。この点を短時間で考えてくれた人は5人程度いた。
 足の出す方向をジョイスティック等で指定するのではなく、タッチパネルを使って二本指で次の足の位置と向きを指定する方式の解答もあったが、これならば座標系について考えなくてよい点では優れているし、直感的にわかりやすい。ただし、繊細な動きは難しいかもしれない。また設定を超えた移動距離や角度を指定した際の対応が重要になってくる。
 また、角度も検出できるマウスのような形状の装置を考えた人も数人いた。しかし、原点がしっかりしているジョイスティックに比べてマウスでは原点が明確ではないため、精緻な動作ができるとは思えない点が欠点であろう。もちろん、これらの欠点に関する指摘や解決策の提案があれば加点したが、それらはなかった。  また、足を出す方向だけではなく、足を出す距離の対応付けも考えられるはずだが、これを書けている人は一人しかいなかった。
 エラーに関して書いている人は多かったが、ダンスを間違えてもそれほど重大な事態にはならないだろう。特にダンスは間違って踊れば気が付きやすく、操作のエラーを表示したりする必要はないだろうと思うが、フィードバックなどで練習時にエラーを気が付かせやすくする工夫はあるかもしれない。またダンスの途中でエラーをしても普通はそれをもう一度やりなおすのではなく、次の動作に移っているだろうから、エラー処理はあまり意味がなさそうに思う。エラーに関して適切に書いている人はほとんど見られなかった。
 フィードバックで重要なのは、そのロボットの動きを直接見て操作するのか、または操作装置上に両足の位置関係などを表示して操作するのかである。このことを書いている人は非常に少なく残念であった。たぶん一番良い答えは、「初心者が練習するために足の位置関係等を装置に表示することもできるが、熟練者はロボットの動きを直接見て操作できるようになるので、その機能は不要になる」ではないかと思う。ロボットは動作に時間がかかるが、装置上に表示するのは即座にできるので、操作指示による動作を装置上で確認してから、最終的にロボットに動作指令を送るのがよいかもしれない。
 難問なのは出題する際にも自覚しているので、できる限り甘くは採点しているが、重要ではないことをいくら書いてもほとんど加点できないのは当然である。また全般に思い付きをただ並べて書いただけの解答が多く、その場合にはなぜそうしたのかの説明が適切でないと加点しづらかった。
 たとえば、「動かす左右の足の選択はL・Rボタンで行う」と書かれると加点できないが、「動かす足は左右に配置したボタンで選択することで対応付けを行った」と書いていれば3点加点した。また、上下に配置したボタンで選択する設計をした人もいたが、「上下に配置しているので対応付けは悪い」と書いてくれれば加点するが、書いてなかったので加点しなかった。同様に足首の旋回をボタンを押す時間等で操作する解答もあったが、これは対応付けが悪い。旋回は、ダイヤルなど回転する操作方法が対応付けがよい。そのため。対応付けと明確に書かなくてもダイヤル等の回転する操作方法ならば加点したが、ボタン等の場合は「対応付けが悪い」と書かれていなければ加点できない。そもそもジョイスティック等で操作すると書いているのに「対応付け」という用語を使っていない人が15人以上いたのが驚きました。この問題で一番大事なキーワードが「対応付け」なのに。

平均点14.6点/30点満点と悪い。難しい問題なのはその通りだが、相変わらず操作と無関係なロボットのことを書いている人が少数いるのと、勝手に設定を変えてしまったために高い点にはならない人が10名程度いた。満点はおらず、最高は29点が1名、28点が2名。

2.講義の最後の時間に「過去に出した問題と類似の問題を出す」と宣言したのだからしっかり勉強してくれると期待していたが、きわめて出来が悪い。最後に出したのが2008年としばらく前だったから、そんな前の問題まで勉強しなかったというのだろうか?2008年の解説には「過去に2回出した」と合計過去に3回出した問題であって、今回が4回目の出題。つまり手嶋が重要視している問題なのですけど。折角過去の問題とその解説を公開しているのに、これでは公開する必要がないかと思ってしまう。
 障害者用と高齢者用との違いではなく、一般的な車いすの説明をしている解答が多い。しかしそれではほとんど加点できない。たとえば、車いすにおいてじょくそうは大きな問題であるのは事実だが、それは高齢者と障害者のどちらでも同じである。厳密にいえば違いはあるが、講義ではそこまで丁寧には説明できていない。正しく違いを説明できているなら加点したが、両者に共通の内容しか書けていなかったり、違いの説明が間違っているならば基本的に加点はできない。
 この問題で最も配点を高くしたのは、車軸の位置と安定性・漕ぎやすさの問題であった。これを正しくかけているだけで30点満点中14〜16点を加点したのだが、この点を書いている人が1割程度しかいなかったのは本当に驚いた。類似の車いす関連の過去の問題でも「取り付け位置を変えたりする理由を説明せよ」など、違う形で何回もこの点を問う問題を出しているのだが。その数少ない書いている人の中で、高齢者と障害者を逆に書いている人が3人もいた。
 それ以外も、実際に二台の車いすを講義室に持っていって見せながら違いを説明したので印象が深かったはずと勝手に思っていたのだが、出来の悪さには本当に驚いた。こちらの説明がそんなに悪かったのだろうか、と心配になったほどである。
 あいまいな解答も多く、加点できなかった。たとえば、「移乗のことを考えている」などと書いている人も多かったが、もっと具体的に移乗のことを考えてどうなっているのか、を書かねば点にはならない。
 その一方、的外れや間違ったことを書いている人も多かった。たとえば、高齢者用車いすは使い方が簡単で分かりやすいものが良い、と書いていた人は多いが、車いすの使い方が難しくて困っている高齢者って見たことがありますか?直感的に操作可能な車いすでは、そんなことはまずないでしょう。高齢者は電動車いすが基本です、とか、高齢者は介助者がいないとなにもできない、とか、まったく理解していない解答が多くて、頭を抱えました。一生懸命講義を通じて伝えようとしてきたのに、ここまで間違って理解している人が多いのかと。

平均点9.4点/30点満点は過去最低だろう。0点は8人。63%が10点未満。満点は2人。


A+:0% A:8% B:17% C:26% F:49%。

過去と比べてあまりに成績が悪く、ここまで悪いと教え方の影響が全くなかったとも言い切れない(そのつもりはまったくないが)ので、少し得点調整をした結果上記の結果となった。その結果、もしも中間試験が満点ならば、まずF評価にはなるはずがない。それでもF評価が半分というのはどうしてなのでしょう?また得点調整をしてもA+が一人もいなかった。期末試験の2番が満点だった人は1番では13点と15点しかとれていないなど、1番も2番もできている人は皆無だった。1番29点で2番0点という極端な人までいた。これも過去には見られないことである。

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Last modified: Aug 9 2017