福祉機械論試験問題2009年度

1.インターネットや携帯電話などの通信技術が障害者に現在与えている恩恵、または近い将来生み出すであろう恩恵について、どのような障害者に対してどういう利点があるかを考えて詳細に述べよ

2.車いすを選択する際に、@長時間座るいすとして重要なポイント、A移乗する際に重要なポイント、のそれぞれについて詳細に述べよ。

3.次の福祉機器から1つを選び,知っていることをできるだけ詳しく書け.

(1)視覚障害者用歩行補助機器 (2)聴覚障害者用の警報音への対応機器 (3)装具 (4)入浴機器 (5)ベッド (6)共用品


解説

1.講義では個別にいろいろ話は出したが、まとまった形では話をしていない。講義で話をしていない部分も含めて、障害者の困っている点を全体としてきちんと理解しているかどうかを見ている問題。「通信技術によって与えられる恩恵」について問うているのに、「こういう配慮をすればこういう通信技術が使えるようになる」ということばかり書いている人が複数いた。これでは加点できない。またメールの予測変換機能の恩恵を挙げている人がいたが、携帯電話の機能であっても通信技術の恩恵とは言い難いので、甘くして1点のみ加点した。
視覚障害・聴覚言語障害・肢体不自由のそれぞれに関していろいろ書くことを期待して問題を出している。各障害に関してそれぞれ恩恵が2つ以上書いてあり、匿名性や共用品としての安価な利用などプラスアルファの記述があれば満点にしようと考えていたのだが、書けている人があまりにも少なかった。そのため、当初想定していた採点基準を変更して、加点要素を増やして採点した。
ちなみに手嶋が採点しながら大笑いしてかつ呆れた解答を挙げる。「〜の障害者にとっては情報技術の発達と普及がもたらす利点は言うまでもないだろう」。問題として出しているところを、具体的に書かずに「言うまでもない」と書くのは初めて見ましたね。もちろんこれでは加点できません。
平均点は14.7点/30点満点と採点基準を変えてもできが悪かった.最高23点、最低5点。問題が難しかったというよりは、2つ、3つの利点だけを書いてそれで十分と思ってしまった人が多かったようである。もっとほかに何かないか、と考える訓練が足りないように思える。

2.車いすに関する問題は何度も出しているが、今年は「移乗」と明示して書かせている点が例年と違うところ。だが、予想の範囲内ではなかっただろうか?と思ったのだが意外とできが悪い。走行特性に山をはって勉強してきたのだろうか?書くべき内容の分量が違うので、@を配点20点、Aを配点10点とした。
@でできない人が意外と多く驚いた。例えばクッションについてだけしか書いていないのでは最大7点しかつけられない。また、「各パーツのサイズを調節できるように」と書いている人は基本的には正しいが、それが具体的にどこのパーツなのかを明示していないのでは、部分点は付けられるが、十分な知識があるとは判断しづらい。
@は平均点は9.7点/20点満点.
Aに関して、移乗の仕方はひとによって異なるという点が重要である。だからアームレストが取り外せたりはね上げたりする機能を必要とするような移乗の仕方をする人と、必要としない方法の人とがいる。このことを明確に書いている人はほとんどいなかった。中には車いすのことを書かずに移乗機器のことばかり書いている人もいたが、当然点はつけられない。
Aは平均点は5.3点/10点満点.

3.例年だしている知識を問う問題。毎年言っていることだが、複数の選択肢の中で一つだけを選んで詳しく書けというのであるのだから、その内容が間違っていたり、内容が乏しかったりするのでは、その他の項目はもっと理解していないということを意味していると手嶋は考える。つまり、量だけがすべてではないが、一定量の文章を書いていなければ良い点には結びつかない。また、量があっても論理的でない文章では点には結びつかない。一文一文がまったくつながっていない答案を書いている人がいる。各文が正しくても、なにが言いたいのかさっぱりわからない。そういう人は基本的な日本語力を鍛えてほしい。


A+:5% A:28% B:26% C:21% F:21%
1、2番はできが悪かったが3番の出来が例年よりも良かったのと、レポートの影響で意外とF評価は少なかった。採点中は40%ぐらいFになるかと不安だったが。


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Last modified: Fri Aug 7 2009