STORY #03

パーツ一つひとつに
こだわった
小型サッカーロボットが
ゴールを決めた!

廣橋拓武

ロボット製作に取り組むプロジェクト団体「Ri-one」。中でも廣橋 拓武さん率いるSSLチームは、小型ロボットでサッカーを行うSSL部門に挑戦しています。細かいパーツの一つひとつまで手作りにこだわり、「ロボカップ世界一」を目指しています。

自律型サッカーロボットを製作し
アジア大会で5位入賞を果たす

2021年11月、自律移動型ロボットのアジア大会「ロボカップアジアパシフィック2021あいち」で、プロジェクト団体「Ri-one」が、「Small Size League(SSL)」部門で5位入賞を果たしました。

直径18cm、高さ15cmに満たない小型ロボットでサッカーを行うSSL。ロボットは人間が操作しなくても自動で動き、搭載されたカメラでフィールドを見渡すと、俊敏にボールを運び、鋭いキックでゴールを決めます。「Ri-one」は、キッカーやドリブラーなどポジション別に6台のロボットとともに大会に臨み、初勝利を飾りました。

SSLチームを率いるのは、チームリーダーの廣橋拓武さんです。廣橋さんは立命館守山高等学校の時からロボット作りに熱中。AIOLや工作センターに足しげく通い、さまざまな工作機を使いこなしてロボットを作っては、ロボカップのジュニア世界大会に出場していました。

大学生になった今、シニア大会にフィールドを変えた廣橋さん。「Ri-one」のロボット製作では、既製のパーツは使わず、すべて自分たちの手で作り上げることにこだわっています。「AIOLや工作センターを利用し、細かいパーツの一つひとつ、加工の難しい金属のパーツも一から手作りしています。パーツの形も自分たちで工夫できるので、最適な形や構成のロボットを追求できる。それが他大学にはない『Ri-one』の強みです」

試合ではロボット同士が激しくぶつかり合うため、強度は必須です。廣橋さんらはCNCフライス盤でアルミニウムの板を削り、タイヤやロボットを覆う外装を製作。一方、内部の細かいパーツは、3Dプリンタを使って一つひとつ作っていきます。製作にはチームワークが欠かせません。「この部分にセンサーを付けたいから、この部品はここに取り付けてほしいとか、この部品の大きさはこのくらいにしてほしいなど、各部分の製作を担当する仲間と全体設計を確認しながら互いに意見を話し合い、製作を進めていきました」

チームの中で廣橋さんは、自律型ロボットの要である制御回路の製作とプログラミングを担当。「苦心したのは、ロボットがボールを蹴り出す機構です。電磁石で鉄芯を振る仕組みを考案。キック力を高めるため、200Vもの電圧を流す回路の作製に挑戦しました。難しかったのは、高い電圧に耐えられるよう強度を保つとともに、狙ったところにボールを打ちこむ正確性を実現すること。蹴り出す方向や強さの調整に試行錯誤を重ねました。もちろんコイルも手作りです。約1000回もコイルを巻くために、コイル巻き装置まで作りました」と明かします。

1台目のロボットが完成したのは、目指す大会の約1ヵ月前。「大会までに何台作れるか、それからは時間との戦いです。チームの皆で、毎日夜遅くまでAIOLに籠り、2台目、3台目のロボット作りを進めました」。ロボット本体ができただけでは完成ではありません。廣橋さんは、制御プログラム製作という重要な役割も担っていました。大会2日前、3台目のロボットが完成。さらに夜を徹して製作を進め、6台目のロボットのプログラミングを終えたのは、大会当日の朝のことでした。

「満を持して臨んだ試合でしたが、序盤は苦戦を強いられました。床の摩擦の違いなど、さまざまな影響を受け、ロボットがなかなかプログラミングの通りには動いてくれなくて、やきもきしました。でも試合を重ねるごとに徐々に調子を上げ、初ゴールを決めた時は、ものすごく嬉しかったです」

問題を解決していく過程も
楽しい
実機を作って動かすのが
醍醐味

「小型ロボットが好き」という廣橋さん。中でもソフトウェアを構築する以上に、「実機」を作り、動かすところにおもしろさを感じています。「シミュレーションではうまくいっても、実際にロボットを動かすと、想定外の動きをしたり、ぶつかって破損したり、時には突然動かなくなったりと、予想もつかない問題が起こります。そのたびに原因を探り、修理や改良を加えていく。問題を一つひとつ解決し、ブラッシュアップしていく過程が楽しい」と言います。

自分たちで作ったロボットだからこそ、愛着もひとしお。「性能だけでなく、デザインにもこだわって、自慢できるロボットを作りたいと思っています」

ロボット製作だけに没頭できた高校時代とは異なり、「Ri-one」ではSSLチームのリーダーとして皆をまとめる役割も担っています。「大変だったのは、チーム全員で力を合わせてロボットを製作すること。僕と同じように高校時代からロボットを作っていたメンバーもいれば、ロボットを見るのも触るのも初めてというメンバーもいます。知識も技術もさまざまなメンバーそれぞれにロボット製作に関わってもらうため、役割分担に頭を悩ませました。全員にやりがいと意欲を持って取り組んでもらうのは、簡単ではありませんが、思っていた以上に全員が心を一つにした結果、6台ものロボットを完成させることができました」と廣橋さん。「リーダーを担って、チームをまとめる力はついたと思います」と自身の成長も語ります。

「目標は、SSLで世界一になること。その第一歩として、日本一を決める『ジャパンオープン』での優勝を狙っています」

全方位ロボットを開発するのが
目標
課外活動の経験が研究に
つながっていく

AIOLの学生スタッフとしても活動している廣橋さん。「AIOLには作りたいモノを作れる機器や道具が揃っています。光造形3Dプリンタなど、他にはあまりない装置も好きに使えます。いろんなモノづくりを楽しめるので、ぜひたくさんの学生に活用してほしいですね」

「Ri-one」やAIOLでの活動は、学びにもつながっています。「4回生からは生物知能機械学の研究室に所属し、ロボットの研究開発に取り組むつもり。小型の全方位ロボットを作ってみたいと思っています」と言います。全方位にわたって自動で移動するには、周囲を360°センシングして障害物を検知したり、それを回避して目的地までの最短距離を導き出すなど、高度な制御技術が必要になります。「『Ri-one』でサッカーロボットを製作してきた知識や経験が生かせると考えています」と、新たな目標に意欲を燃やしています。

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