先週のブログで、一般社団法人日本経済団体連合会に加盟する企業の内、新卒者の採用を増やしている企業が全体の44.4%を示したという調査結果をご紹介しました(660社・回答率50.4%)。来年、就職活動を控える3回生にとって、この数年間における採用数の増加傾向は、朗報であることに間違いありません。
その一方で、採用者サイドとなる企業にも“苦悩”が存在します。それが「採用充足率」です。
株式会社マイナビが国内企業を対象に実施する「2015年卒マイナビ企業新卒内定状況調査(2195社・回答率27.4%)」によれば、採用充足率は83.0%と過去10年間で最低の値となりました。つまり、企業は、景気の回復や事業拡大にともない採用数の増加をめざすものの、内定者数は目標値に届かないという状況が生じています。中でも、非上場企業の充足率は78.3%、業種別では、小売業が75.8%、サービス・インフラ業が76.4%、そして建設業が77.4%とのことです。もちろん、ここで示された数値は、2014年8月1日から8月29日までという調査時期にも影響を受けていることが予想されます。
同調査において、企業サイドの採用活動に対する印象についての結果も提示されており、「前年よりも厳しかった」と回答する企業が全体の53.2%と、前年度よりも17パーセントポイントも増加していることが示されました。採用が厳しかった理由として上げられているのが、「母集団の確保」で、全体の6割以上と最も高い割合を示しました(前年度比:11.1パーセントポイント増)。次いで、「(採用)辞退の増加」と回答した企業が全体の45.6%と前年度よりも7.9パーセントポイントも増加しました。この傾向は、非上場だけでなく、上場企業にもあてはまり、特に金融業や小売業、また建設以外の製造業においてその傾向が強く、上場企業全体の55.8%が新卒者の採用辞退に頭を悩ませているようです。
「派遣切り」や「内定取り消し」など、企業の採用をめぐって、様々な社会問題が取り上げられていますが、“going concern”をめざす多くの企業は、組織にとって大切な財産である「人」の採用に対して責任を負うとともに、企業が社会に受け容れられ、存続するために必要な「品格」も問われます。ただ、その一方で、採用辞退者の増加、さらには、入社を希望する学生の「質の低下」にも頭を悩ませています。
採用数を増やそうとする企業が増加傾向にあることは、在学生にとってありがたい反面、企業の採用方針は、今後、より一層、「量より質」を重視することは間違いありません。ある意味、「品定め」をされる学生は、この採用状況の好転を楽観的に捉えるのではなく、企業に求められる人材となるべく、自身の「資質の向上」に努めてもらいたいと思います。
Jin