[ research ] の記事一覧

2020.01.12

アートで健康に

今週は暖かい日が続いてなんだか一月らしくないですが、
皆様いかがお過ごしですか。

先週、京都国立博物館の展示について書きましたが、
先日アートと健康に関する興味深い論文が出ていましたので
紹介したいと思います。
https://www.bmj.com/content/367/bmj.l6377

この論文では、イギリスで 50歳以上の 6710名 (平均 65.9歳) を対象に
14年間の追跡調査を行ったところ、
美術館やギャラリー、展覧会や劇場、コンサートやオペラに
年に1-2回行った人は、行かない人より14%、
2-3ヶ月に1回行っているような人では 31% も、
死亡率が低いという結果が出ました。

一般的にこういった研究では、性別や社会経済的地位などが影響するのですが、
今回の結果は、これらの要素をコントロールしても見られるということです。

健康になるというと、ついつい運動やスポーツをイメージして、
それは正しいことなのですが、運動やスポーツに加えて、
健康的な生活を維持するために、「アート」も取り入れてみてはいかがでしょうか?
ゆったりと過ごすことでストレスも下がりますしね。

それでは、また。失礼致します。
良い休日を
Atsushi


2020.01.11

Corporate social responsibilityからCreating Shared Valueへ

最近、講演や企業の方々とお話させていただく際、「スポーツをもっと使ってください」とお伝えするようにしています。
その一つのきっかけになったのは、昨年「スポーツマーケティング論」にお招きしたJ2クラブ、ツエーゲン金沢から灰田さちさんが、Jリーグの「『シャレン活動』:社会連携活動」という新しいプロジェクトを紹介してくださったことです。
「ホームタウン活動」の違いは、ホームタウン活動がクラブから地域に対する一方向の活動であることに対して、シャレン活動は各Jクラブが地域のステークホルダーたちとともに地域の課題解決と未来に向けての共通価値を創造することを目的としています。
「Jリーグをつかおう!」というキャッチフレーズを掲げる理由に、サッカーやクラブには社会に貢献できるもっと多様な価値があることを発信しているものと個人的には捉えています。

スポーツチームによる社会貢献活動は、「Corporate social responsibility(CSR)」や「Outreach activities」といったキーワードでスポーツマネジメント領域の研究対象となっています。
また、スポーツチームは企業からスポンサードを受けることでより充実した活動が可能になり、企業側もスポーツを通じた広報活動やCSR活動が可能になります。
企業がCSRやSDG'sに取り組む傍ら、近年注目されているのが、「Creating Shared Value(CSV)」(Porter and Kramer, 2011)です。
日本語では「共有的(共通)価値の創造」と呼ばれています。

(ゆ)20200111-01

Porter and Kramer. 2011は、CSVの特徴を、CSRは企業の評判に注力しており、ビジネスとのかかわりが限られているため、長期的に正当化し維持することが難しい一方で、CSVは、企業の固有の資源と専門性を用いて社会的価値を創造することで経済的価値を創造する(p. 16)と述べています。
簡単にまとめると、CSVは、企業が得意とする本業を用いて社会貢献をする、ビジネス色が濃い取り組みといったことになるでしょう。

企業側の視点に立ち、スポーツマネジメント領域で注目すべきCSVが、リヴァプールFCとパートナーシップ契約を結んだ日本ハム株式会社(英語名:NH FOODS)の事例です。
リヴァプールFCの既存の社会貢献事業の取り組みの一つであるフードバンクに日本ハム株式会社が支援を行うものですが、説明するよりもまず、Forbes Japanに掲載されたインタビュー記事をお読みいただくのが良いでしょう。

リヴァプールFC×日本ハム株式会社の取り組み
前編:https://forbesjapan.com/articles/detail/30459/1/1/1
後編:https://forbesjapan.com/articles/detail/30471

この支援活動が日本ハム株式会社の企業理念の実現に直結していることからも、CSV活動と捉えられますが、注目すべきは企業がリヴァプールFCというスポーツ組織を通じてCSV活動を実施していることです。
企業のCSVの事例一つをとっても、スポーツチームと掛け合わされたとき、その価値や効果は双方の組織とその融合において高まることが期待できるわけですから、スポーツは社会における非常に柔軟なプラットフォームであると言えるでしょう。

昨年末からリヴァプールFCは、世界一に輝き、その後日本人選手が加入するなど、国内でもホットなニュースが続いています。
メディアではいつもアスリートやチームの成績だけにスポットライトが当たりますが、それは時に瞬間の出来事です。
スポーツを使って社会に新しい価値をもたらすことは、時間がかかることですが、その背景には必ずそれを動かす人たちがいます。
リヴァプールFCと日本ハム株式会社はそれを証明する一つの画期的な事例であり、何よりもこのプロジェクト携わっているのはリヴァプールFC側も企業側も日本の方々だということにはとても感銘を受けます。

オトナになって大学院に通い、本学部に着任して2年目を終えようとしています。
その間、多くの学生が「スポーツにかかわりたい」と研究室を訪ねてくれます。
「あなたの言う、スポーツにかかわるとはどういうことなのか、それに対してどう貢献できるのか」という宿題をいつも持って帰ってもらっています。
試合や与えられる情報から感動を受けるだけではなく、スポーツが持つ可能性をもっと探り、スポーツで社会を動かす人になって欲しいと思っています。

まずは私からですね。



日本ハムスポーツによるリヴァプールFCのサイトはこちらから https://nh-sports.jp/liverpoolfc/
リヴァプールFCの日本語版公式アカウント(Twitter)はこちらから @LFCJapan

写真はPorter and Kramer (2011) Creating Shared Value, Harvard Business Review, p.1-22.
撮影:ゆ
写真の無断転記はご遠慮ください。

#人を動かすスポーツの力
#スポーツを動かす人の力
#"You'll Never Walk Alone"


2020.01.10

疲れ気味です。。。

こんにちは、嶋村です。今グレン・グールドが弾くバッハのゴルドベルグ変奏曲のアリアを聴きこのブログを書いております。とてもいいので皆さんも是非。


さて今日は疲れているので手短に。。。


今週から大学が始まりましたが、月曜と火曜の授業をしてさっそく風邪をひいて寝込んでしまいました。久しぶりに大学に来てしっかり授業をして(というか学生さんの発表を聞いたので)疲れたのだと思います。そして今日は学生さんとのアポがたくさんあって今日もなんだか熱が出そうです。


授業関連と並行して自分の論文の修正もあるし、今月末は神戸市外大で出張授業をするんですが、その内容が結構ややこしい、しかも300ページ以上ある言語学の論文なのでその準備もあるし疲れ気味です(言語学の論文を読むのはそれはそれで楽しいのですが)。そして家に帰れば取り扱い要注意の娘もいるのであんまり心が休まりません。あと、タームペーパーを急に送ってきて見てとかいう人もいるので爆発しそうです。まあ頑張ります。。。


というわけで、今日はこれで勘弁してください。学生さんも学期末で大変でしょうがお互いに頑張りましょう。

2020.01.06

「不可能」はいつか誰かが「可能」にする

明けましておめでとうございます

穏やかな天候に恵まれた新年です
皆様におかれましても素晴らしい新年をお迎えのことと思います

本年もどうぞよろしくお願いいたします

年末に、下記の写真の広告が、日米同時に発信されました。

 

動画サイト
https://www.ritsumei.ac.jp/global2040/

https://mainichi.jp/articles/20191231/pls/00m/020/250000c


不可能は、いつか誰かが可能にする。
ならば、その「誰か」になれ。

強烈なメッセージです。
急激な変化が起こっている世界において、10年先、いや5年先を正確に予測することは困難です。
一方で、10年先に、こんな未来であって欲しい、なって欲しいと願うこと、イメージすることはできます。

新しい創造を生み出す原点は、新しいことを想像すること、といわれています。

新年を迎えた今、未来のありたい姿、あるべき姿を描き、その未来へ向かって進んでいきましょう!

本年も立命館へのご理解、ご支援のほどお願い申し上げます。

<<今週のちょっと、もっと、ほっとな話>>
今日から授業再開、業務再開です。
新たな気持ちで、新しい一歩を踏み出していきましょう!

2020年1月10日(金) 16-19時 @立命館 朱雀キャンパス5F ホール
総長 PITCH CHALLENGE 最終公開発表会があります。
https://sdgsimpactlab.org/rimix/archives/188
【忠】

2020.01.04

Happy 2020!

あけましておめでとうございます。
2020年、いよいよ我が国では、「東京オリンピック・パラリンピック競技大会」を迎えます。
昨年は、ラグビーの世界一を決める大会、ワールドカップが全国12会場で開催されました。
来年には、「ワールドマスターズゲームズ関西2021」も予定され、2019年からの3年間は「ゴールデンスポーツイヤーズ」と呼ばれています。

ゴールデンスポーツイヤーズによってもたらされるレガシーとは?という議論がされていますが、
昨年末、フロンティアメイカーに参加された方から「『レガシー』とよく聞くのだが、正直、理解できていないんです」といったご相談を受けました。
スポーツマネジメント領域では、レガシーをまずは直訳である「遺産」として捉え、遺産=長期にわたる影響として理解されています。
それ以外は、レガシーは明確に定義されておらず、また一般的にレガシーを測定する尺度もありません。
ですので、「レガシー」が理解できていないというのは、もしかしたら多くの方が感じられていることなのかもしれません。

レガシーが注目されるようになったきっかけの一つが、国際オリンピック委員会(「IOC」)が定める「オリンピック憲章」です。
オリンピック憲章(「2003年7月14日から有効」版)第1章IOCの使命と役割において、「オリンピック競技大会の有益な遺産(Positive legacy)を、 開催国と開催都市が引き継ぐよう奨励する」といった文面が追記されました。
また、我が国においても、スポーツ庁が2017年4月に「第二期スポーツ基本計画」を策定し、「これからの5年間が、スポーツの価値をさらに高め、日本の未来にレガシー(遺産)を残す」と示されています。

スポーツマネジメント領域では、「レガシー」を捉えるために、それと類似した概念と差別化することで理解が試みられています。
例えば、レバレッジ(Leveraging)、持続可能な発展(Sustainability)、効果(Impact)といった概念です(Preuss, 2015)。
詳しい説明は省きますが、レガシーには、オリンピック憲章に掲げられているような有益(Positive) だけではなく、ネガティブなレガシーもあります。
オリンピックのために建設した施設がその後ほとんど使われない、といったことは代表的な事例です。
その他レガシーを理解するために一般的に使われはじめているのは、「レガシーキューブ」(Preuss, 2007, 2010, 2015)と呼ばれるものです。
レガシーキューブには、有形レガシー/無形レガシー、計画的レガシー/偶発的レガシー、ポジティブなレガシー/ネガティブなレガシーという6面があります。
例えば、メガスポーツイベントとによって旅行者の増加に期待していたものの、騒音や建造物の破損、治安の悪化などによって徐々に観光地としての価値が落ち始めたといったことがあれば、無形の、偶発的なネガティブなレガシーとなります。

(ゆ)20200104-01

2019年に開催されたワールドカップにおいて、地域の人々が試合会場やイベント会場で来日したチームの国歌を歌う姿が見られました。
個人的には、今後も競技を問わず、地域住民や観戦者が対戦相手国の国歌を歌うようなことが根付くことを期待しています。
スポーツのイベントを通じて、地域住民の他国に対する関心が高まり、両国の友好に貢献できれば、これは今回のラグビーワールドカップが残した無形の偶発的なそしてポジティブなレガシーといえるでしょう。

最後に、「遺産」を英訳すと「レガシー」の他に「ヘリテージ(Heritage)」という言葉があります。
レガシーは貨幣的価値を伴う一方で、ヘリテージは金銭的に換算ができない、かけがえのない価値があるものとして捉えられます。
世界遺産(World Heritage)が資産的価値への換算できないといえば、ご理解いただけるでしょうか。
私たちが目指すものは、その時その時精一杯の力を注いで、次の世代へとつなぎ、スポーツによってHeritageを生み出していくことのように思います。


写真はワールドカップの公認球
撮影:フロンティアメイカーの参加者ご提供
写真の無断転載はご遠慮ください。

#本年もどうぞよろしくお願いいたします
#ゴールデンスポーツイヤーズの2年目ですね
#何よりも世界が安全で皆様にとって健やかな一年になりますように

2019.12.15

研究会に参加してきました

今週は、先週よりも暖かい日に恵まれていますが
皆様いかがお過ごしですか。

先週の土曜日に、関西心理言語学研究会 (KCP) に参加してきました。
https://www.konan-u.ac.jp/hp/nakatani/kcp/

日本で言語学を学べる大学では、理論言語学が中心で、
心理言語学という分野があまり身近でないのですが、
「ことばがどうやって理解されているか、また話せるのかを
実験の手法を用いて検証する」大変面白い分野です。

日本全国でも学べる場所が少ないのですが、
関西に限るとさらに少ないので、
この研究会はたいへん貴重な交流の場です。

今回は、神戸市外大の Franklin Chang 先生が発表され
大変興味深く拝聴しました。

もしもこのブログを読まれている方で、
心理言語学に興味のお持ちの方は、
参加自由ですので、ぜひ気軽に覗いてみてください

それでは、また。失礼致します。
よい休日を
Atsushi

2019.12.10

登壇報告『ボランティアで学生は変わるのか―「体験の言語化」からの挑戦』 出版記念シンポジウム

こんにちは、かわいです。

先週金曜日に早稲田大学で開催されたシンポジウム

『ボランティアで学生は変わるのか―「体験の言語化」からの挑戦』

出版記念シンポジウムにてパネリストとして登壇してきました。

 (kawai)20191203_2

前半は学生のみなさんの体験の言語化が続きました。
学生が自らの経験からふりかえって言葉にしていく姿に圧倒されました。
発表の中では触れられませんでしたが、先生方がときに優しく問いかけ、
ときに厳しく指導されたことと思います。


こうした教員と学生との近い距離で関係を築いて、お互いに触発されるような
関係を生み出すことは容易ではないと思います。

さて、立命館大学、スポーツ健康科学部に何を持ち帰ることができるでしょうか。

書籍では、後半の座談会の聴き手を務めています。
座談会に参加してくれた学生さんの語る言葉とエピソードは力強く、大学教育の
可能性に目が開かれるとともに、その責任を痛感しました。

いくつか、座談会で学生さんに問いかけた内容を記しておきます。
・活動の経験はどういった影響をもたらしましたか?
・活動していなかったとしたら、どんな大学生活だったでしょうか?
・これからの人生、どうしていきたいですか?


座談会の熱に押され、最後は予定しなかった質問に進みました。

・どんな未来になれば良いでしょうか? どんな社会にしていきたいですか?

まわりの学生たちにも聞いていきたいと思っています。(卒論が終わったら・・・)




かわい

2019.12.08

「博士人材育成セミナー:社会・起業が求める博士のチカラ」が開催されました

今週は1月末の寒さだそうで
本当に冷え込みましたが
皆様いかがお過ごしですか。

先週の月曜日に、
「博士人材育成セミナー:社会・起業が求める博士のチカラ」が
開催されたので覗いてきました。

 (atsush)20191208-01

昨今、日本の大学では博士課程に進学する
若者の数が減少しています。
テレビや新聞などで、
「将来、日本はノーベル賞が取れなくなる」という
ノーベル賞受賞者の声を聞かれたこともあると思います。

なぜ日本の大学では博士課程に進学する若者の数が
減少しているかというと複合的な要因が原因だと思われますが、
その一つが「博士号を取っても、安定したポジション
(アカデミア・企業ともに) に就けない」ということがあると思います。

今回のセミナーでは、企業で活躍している博士の方による
パネルディスカッションに始まり、その後
企業によるプレゼンテーション & 個別説明会が
開かれ、参加者の間で積極的な交流で行われました。

上記の問題の解決は容易ではありませんが、
少しずつでも改善して、日本の将来の研究を担う、
博士課程に進む学生が増えてほしいものです。

それでは、また。失礼致します。
良い休日を
Atsushi

2019.11.24

学会に参加してきました

今週は冷え込む日が多いですが、
みなさまいかがお過ごしですか?

先週の土日に、名古屋学院大学で開催された
第159回日本言語学会で研究発表を行ってきました。

 (atsushi)20191124-04

学会前に発表練習してみたのですが、
持ち時間20分の所、1分半も時間が余ったので余裕かなと
思っていたのですが、よく考えると結論のスライドを
作っていないというあり得ないミスに気づきました。
やっぱりきちんと練習するのは大切ですね・・・

面白い研究も聞けたので、大変充実した時間を
過ごすことが出来、研究活動の現場に
参加することの大切さを感じた週末でした。

それでは、また。失礼致します。
良い休日を
Atsushi

2019.11.12

関西地区大学ボランティアセンター連絡協議会

こんにちは、かわいです。


関西地区大学ボランティアセンター連絡協議会は、
関西地区の大学ボランティアセンターのボランティアコーディネーションの
専門性向上とネットワーク強化をめざして職員・関係者の連絡・研修を担っている
組織です。

立命館大学では、学生がボランティア活動に取り組みたいと思った時に、
サービス・ラーニングセンターに足を運べば情報を得ることができます。
https://www.ritsumei.ac.jp/slc/
BKCでは、アドセミナリオ1Fです。

連絡協議会で職員・関係者の皆さんの議論に講師として参加してきました。

学生の成長をどう理解したらいいのか、どう評価すればいいのか

大事なことは学生のためになることだという原則を確認しながら、
議論が積み重ねられていました。
参加されたプロフェッショナルの皆さんの視点は鋭く、私の役割は
それをまとめて組織的なアクションにつなげていくことでした。
 (kawai)20191112
(せっかく撮っていただいたのに、動き回っていたので、ぶれぶれですね)

短い時間でしたが、収束点をラフスケッチしてプロトタイプを
作成することができました。今後は、このプロトタイプがどう発展していくか
に関わっていきながら、大学の関わるボランティア活動に貢献していきたい
と思います。

かわい