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スポーツマネジメント論特別講義「スポーツビジネスのいまとこれから-コロナ禍スペシャル-」


去る2020727日の「スポーツマネジメント論」において、本学部の客員教授であり、桜美林大学教授の小林至先生をお招きし、コロナ禍において打撃を受けるスポーツビジネス界の現状を踏まえて、「スポーツビジネスのいまとこれから」というテーマでご講演いただきました。

小林先生は、東京大学から3名輩出されたプロ野球選手の一人であり、千葉ロッテマリーンズに2年間在籍され、引退後、海外で学位取得後、福岡ソフトバンクホークスの取締役などを歴任され、現在、桜美林大学教授として、スポーツ経済学などの教育・研究を手掛けられています。

講義では、まず、「新しい日常」や「withコロナ」という言葉が叫ばれる状況で、スポーツの興行がどれほどダメージを受けているのかについて、データを紹介されました。例えば、世界におけるスポーツ興行は、当初、1353億ドルの売り上げが見込まれていたにもかかわらず、予定イベントの47%が中止となり、その市場規模は735億ドルまで減じ、アメリカのプロスポーツに限っていえば、55億ドル、また大学スポーツが39億ドルを損失したというデータを紹介された。ちなみに、日本のプロスポーツ界においても1272億円を損失したものの、アメリカの興行収入の規模の大きさを実感するような値だと述べられていました。とりわけ、コロナ禍で経営上の打撃を受けたのは、入場料、放映権料、スポンサー料、マーチャンダイジングという4大収入源のうち、入場料やスタジアム内での飲食など収入比率が高く、メディア放映権などの収入の比率が低い球団だということでした。

このような打撃を受けたスポーツ興行ビジネスは、産業として成長できるのかということを次に話されました。とりわけ、無観客にもかかわらず、収入が減じていないのが中央競馬であり、ダービーの売り上げは、約234億円で、昨年比の92.3%であり、世界のスポーツ興行にあって、日本にないものが「スポーツベッティング」であり、スポーツへの賭け事は世界におけるスポーツビジネスの中核であり、これがスポーツ産業の成長にとって鍵を握ると述べられました。実際、アメリカでは、2023年までに36州で「スポーツベッティング」が合法化され、その市場規模は17兆円にも上るものと言われているようです。日本でも倫理的・道徳的な問題をクリアする必要はあるものの、5兆円程度の市場が見込まれると述べられました。

世界のスポーツ興行ビジネスにあって、日本にないものとしてもう1つ例示されたのが、PPV(ペイパービュー)であり、これが市場規模拡大に鍵を握ると主張されました。つまり、有料のコンテンツに料金を支払って視聴するというスタイルが日本に定着すれば、多額の放映権料収入による恩恵がプロスポーツ界にもたらされると述べられました。NHKを除き、地上波キー局は、企業による広告協賛によってビジネスを進めているものの、WOWOWやスカイパーフェクトTV、またDAZNのような有料チャンネルへのアクセスが日常化すれば、日本のスポーツ興行ビジネスは、世界のスポーツ興行ビジネスに一歩近づくであろうということを述べられました。

小林先生の講義は、先端のスポーツビジネスに関する情報を提示され、有意義であっただけでなく、2時間にもわたる熱心な講義をしていただきました。次年度は、客員教授として、BKCにお越しいただけることを楽しみにしたいと思っています。

(ニュース)20200821-1