リレーコラム

2013年10月01日

NPO法人 D.Live 代表理事
田中 洋輔

社会に対して、いったいなにが出来るだろう?

大学時代、ずっと自分に問い続けていたこと。それが、「社会に対して、自分は一体なにが出来るのか?」ということでした。

学生のときは、立命館大学文学部の人文総合科学インスティテュート学科に所属。学際プログラムという、広く多様なことを学ぶ学科でした。講義やたくさんのゲスト(知事や知識人)の話を大学で聞き、特に関心を持ったのが社会問題について。
どうすれば、様々な社会問題を解決出来るのか、漠然とそんなことを考えていました。

学生時代は、政治家の秘書インターンやテレビ制作会社でのアルバイトなど、社会を変えることが出来る仕事に興味を持って活動。就職活動の際には、商社を希望しました。しかし、海外よりも日本の社会問題を変えることが先ではないかと思い、日本の課題へ取り組む道を選びました。

そんなときに、NPOという働き方を知り、今の団体を設立させることになります。


一冊の雑誌との出会い

NPOは聞いたことがあるくらいのレベル。就職、仕事という選択肢には全く入っていませんでした。たまたま立ち寄った本屋さんで見た『週刊 ダイヤモンド』の特集が、「社会起業家 あなたにもできる世直しビジネス」というもの。ビジネスで社会を変えるという仕事は、私がずっと探し求めていた将来の道でした。

NPO法人にしたのは、2012年の5月。団体の設立は、2009年の5月。法人化までの3年間は、“どうやって社会を変えるか?”をずっと考え、試行錯誤している期間でした。

私たちが解決したいのは、日本の子どもが自分に自信を持てていない現状。韓国、中国、アメリカなどと比べても、“自分のことが好き”という質問に肯定的に答える子の数が日本は少ないのです。

自分のあるがままを受け止める力を自己肯定感(自尊感情)と言います。この自己肯定感は、鬱や自殺などの社会問題とも深い繋がりがあります。子どもの自己肯定感を高めることで、日本が抱えている社会問題の予防になると思い、その解決へ向けて事業を考えました。


社会を変えたいのか?社会に良いことをしたいのか?

常に心に記している言葉があります。

『あなたは、社会を変えたいのか?社会に良さそうなことをしたいだけなのか?』

これは、NPOの研修などをおこなっているIIHOEの川北秀人さんがおっしゃっていたことです。自分たちがおもしろそうだからやりたいとか、多分必要だと思うからおこなう。そんな中途半端なことだったらサークルでやればいい。NPOでおこなう必要はない。そう川北さんはおっしゃいます。

私たちがやろうとしていることは、本当に社会に必要なのか。具体的になにを、どうすれば良いのか。その問いに答えるために、3年という時間を要しました。
統計を調べ、子どもの現状を知り、あいまいに思っている部分を実証するデータを集めました。

これは、自分たちが「これは必要だ」と確信を持てるためにも必要な作業。私たちが解決したい社会問題を因数分解のように要素に分け、どうやって解決していくかを考える時間でした。


自分の未来に期待が出来る子を育む


私たちが掲げた未来への目標は、『誰もが夢を目指せる社会を創る』です。どんな能力や環境の子であっても、自分の未来に期待が出来る社会を創ろうと決めました。勉強が少し苦手なだけで、未来を絶望するなんてあまりにもモッタイナイ。

どんな子にも無限の可能性があります。その可能性を拡げる手伝いを私たちはしたい。どうしたら、子どもの未来を創ることができるのか。一過性ではなく、子どものためにどんな社会を創ることが出来るのか。

私たちがたどり着いた結論は、“応援団”でした。自分に自信が持てるようになるためには、成功体験が非常に重要です。うまく出来たことは子どもの自信になります。しかし、自信は浮き沈みするもの。特に思春期になってくると、人と比べ、落ち込むことも増えます。そんなときに大切なのが、相談する人。地域の希薄化が叫ばれ、一人っ子が増えて相談する人が少なくなっています。自分のあるがままを認めてくれる人の存在がいることで、人は救われます。

親や友達、教師以外の第三者をナナメの関係と言いますが、そういう人が子どもの周りに存在する地域をつくろう。そう考えて、“こどもしゅっぱん社”という事業をおこなうことに決めました。


こどもしゅっぱん社とは?

こどもしゅっぱん社では、小学生が企画から作成まで全てをおこなう教室です。習い事と同じように毎週通い、授業を受け、雑誌を作っていきます。授業内容は、デザインやカメラ、コンセプトの作り方、クリティカルシンキング(批判的思考)、作文など多岐に渡ります。対象は小学生で、約半年をかけて1冊の雑誌を作成。

大切にしたのは、必然性。応援団を作るためには、子どもと大人が触れ合う機会が不可欠です。雑誌作りだと、必ず取材で大人に話しをします。自分で考えることも大切にしており、質問も子ども達自身で考え、ときには町へ出て、大人に声をかけて取材をおこなうこともあります。

雑誌には、テストのように正解がありません。子ども達で話し合い、どうするかを考え、実際に行動へうつす。小学校や他の習い事では出来ない経験がここでは出来ます。挑戦、失敗、大人との触れ合い。雑誌作りには全て含まれているので、この事業をおこなうことにしました。

とりわけ、大事にしているのが失敗する経験。子ども時代に失敗する経験はなかなか出来ません。“こどもしゅっぱん社”では、失敗も大切な経験だと生徒に伝えています。取材のとき、2時間ほど声をかけられずに悔しい顔をして家へ帰った生徒がいました。その子は、翌週には意を決した顔で現れ、道行く大人へ自ら声をかけることが出来ました。普段、自分のことを褒めない子が「今日は、私めっちゃガンバった」と言った姿は忘れられません。


学生の皆さんへ


少しずつNPOで働くことが認識されるようになってきました。しかし、まだまだよく分かっていないかたも多くいらっしゃることだと思います。私も、なにもわからないままこの業界へ飛び込みました。ただ、「社会を変えたい」という思いだけで。

今の社会に問題意識を抱えていたり、気になっているかたは、インターンやボランティアという形で良いので、ぜひNPOの門を叩いてみてください。

社会は1人では変えられないかも知れませんが、その1人がいないと社会を変えることはできません。学校の中だけでなく、どんどん外へ出ていってください。実際に経験することは、本当に多くの学びになります。社会を変える仕事は、とてもやりがいがあります。

私たちは、社会を変えたいと思っている人をいつでもお待ちしております。
一緒に、よりよき未来を創りましょう。