リレーコラム

2015年02月01日

立命館大学BKC地域連携課
山田 一隆

地域連携事例集から見えること――地域での活動を通して学ぶ意義

 1994年4月に開学したびわこ・くさつキャンパス(以下、BKC)は、2014年度、20周年を迎えました。BKCは、その開設にあたり、滋賀県や草津市から土地や周辺インフラを含めた整備のために、多くのご支援をいただき、また、地域・近隣のみなさまからも、物心両面で多くのお力添えをいただきました。そのような経緯から、開設当初から、「地域に開かれたキャンパス」づくりを目指してきました。「ともに、未来を生みだす場所になる。――立命館大学びわこ・くさつキャンパス、二十歳の宣言。」の、BKC開設20周年のキーメッセージには、これまで、オトナの仲間入りをするまでに育てていただいた地域経済社会のみなさまへの感謝と、これまで以上に、オトナになったBKCが、地域経済社会のみなさまと協働して、発展していくことの決意が込められています。
 開設以来、「地域に開かれたキャンパス」づくりを進めてきたBKCでは、各学部・部課や、学生団体が、多様で多彩な地域連携を取り入れた教育、研究、社会貢献活動を展開してきました。他方で、それらの活動が多方面であるがゆえに、拡散的で属人的な営みになっていることも多く、BKCの地域連携の全体像を理解することが難しい、という状況も生まれていました。BKC地域連携担当では、BKC開設20周年の時宜を得て、改めてBKCの地域連携を横断的に把握する媒体として、「BKC地域連携事例集」を2013年度から作成することとし、現在、第2版となる2014年度版を編集中です。
 「BKC地域連携事例集」の編集の過程で、BKCの地域連携には、1)学生の地域交流活動の多さ、2)「正課から課外へ」つながる学び、3)地域経済社会の「困りごと」に向き合う実践的教育・研究の惹起、といった特徴が見出されるように感じています。
 1つめの「学生の地域交流活動の多さ」は、衣笠・朱雀キャンパスの学生団体に比べ、BKCを拠点にする学生団体は、地域のお祭りやイベントなどの行事に出演依頼を受けることが多く、また、それに応じることが活動の中心的な目的になっている団体も少なくないということです。これは、自宅外・下宿生の比率が高いといわれる本学やBKCにおいて、下宿とキャンパスの往復にとどまらない、それ以外の居場所(サードプレイス)を地域に見出す可能性を示唆していると思います。実際、地域の行事に参加した学生団体からは、「地域の方から、感謝される気持ちを味わい、BKCでサークル活動ができてよかったと感じている」、地域の方からは、「学生さんのすばらしいパフォーマンスに子どもたちだけでなく、わたしたち大人も元気をいただきました」といった声が聞かれ、地域と学生の信頼関係が醸成されてきていることを感じます。
 2つめの「「正課から課外へ」つながる学び」は、正課で学んだ知識を、自主的諸活動として課外で生かそうとする学生が少なくないということです。設計やプランニングの授業で得た知識を、実際のモデルルームやワークショップの開催に生かしてきた理工学部環境都市系の学生をはじめ、地域のミドル・シニア層をターゲットにした健康増進を啓発するスポーツ健康科学部の学生、マーケットやブランディングを学んだ経営学部の学生による商品開発やイベント開催、など、実学志向の学部構成が特徴のBKCらしい正課と課外の学びの相乗効果がみられると感じます。
 3つめの「地域経済社会の「困りごと」に向き合う実践的教育・研究の惹起」は、2つめの特徴の延長線上にあるということもできますが、先生方が取り組む地域課題への実践的研究に先導される形で、学生の学びの場が構築されるというケースが、昨今広がってきているということです。これは、問題解決型学習(PBL、Project/Problem Based Learning)と呼ばれる教育手法にあたるものです。「○○が地域の課題です。××によって解決できると思います」的な、「「問題発見」型」報告会や報告書で教育・学習が終わるのではなく、具体的な解決策にまでかかわりながら、「現実の課題はそんなに簡単には解決し得ない」という気づきを含めた実践力を身につけるようとするものです。こうした取組は、BKCの教職員、学生による努力だけでは成功しません。これまでに培ってきた地域との信頼関係という礎があり、地域のみなさまが、「立命館の学生さんのためになるんやったら」と、地域を開いてくださるから実現できるものです。
 これらの3つの特徴が、相互により円滑に高みを目指せるように、相乗的にはらたいている。これが、BKCの地域連携の強みだと考えています。
 最後に、「BKC地域連携事例集」の創刊から編集に携わって、これからのBKCの地域連携に求められるであろうと個人的に考えるものを、2つ提起しておきたいと思います。「広域化」と「構造化」の課題です。
 まず「広域化」の課題です。2015年1月、本学は滋賀県と包括連携協定を締結しました。「地域における大学の役割は、Town-and-Gownの関係を越えていかなければならない」、そういわれてから20年です。その意味で、BKCは開学当初から「ともに」歩んできたのだと思います。BKCやその周辺だけをみていると、全国屈指の人口学的・経済的な成長を依然として続けています。ですが、県全体では、湖北、湖東、湖西は、人口減少が進んでおり、「右肩上がり」と「右肩下がり」を同時に内包するという葛藤があります。学生数、教職員数とも、県内随一の規模を誇るBKCは、県全体を見据え、これらの課題に先導的に向き合わなければならないと感じています。
 次に「構造化」の課題です。「BKC地域連携事例集」は、あくまで、「カタログ」を作ったにすぎません。その意味では「構成」がわかったにすぎません。今後は、このカタログに掲載されている取組や、掲載されていないもの、これから始まる未知のものを含め、化学反応が起こり、地域と大学との新しい関係性が生まれてくることが期待されます。産学官が連携しながら、大学の知的インフラストラクチャーを動員して、地域の課題を解決していく。そうしたプラットフォームが全国で立ち上がりつつあります。BKCが、そうした関係性を構造化するキーノード(結節点)として機能していかなければならないと感じています。

【参考】
立命館大学BKC地域連携課(2015):「立命館大学びわこ・くさつキャンパス地域連携室」。
http://www.ritsumei.ac.jp/mng/cm/sokan/rco/rco.html(2015年1月31日現在)。