リレーコラム

2015年10月01日

立命館大学 政策科学部 准教授
豊田 祐輔 准教授

大学と地域コミュニティによる地域防災

防災には地域コミュニティの役割が重要
 これまで近隣地域コミュニティと共同で防災活動を進めてきました。そこでは、「救急医療情報キット」配布(http://www.rits-dmuch.jp/jp/project/ems.html)や、「防災マップづくり」、「避難シミュレーション訓練」という怪我人などの役割や災害時の地域の状況(道路閉塞など)を与えた訓練、「災害図上演習(DIG)」などが含まれます。
 活動を実施するにあたって重視していたのは、住民自身が課題を発見し、議論し、解決策を考えるということです。自分(家族)のことは自分で守るという「自助」に加えて、災害時、特に発災後72時間は行政(「公助」)や被災地外の力を借りずに、地域住民だけで協力して乗り切る「共助」が求められており、そのためにも平時から住民同士で協力して災害対策や問題解決に取り組む力をつけるとともに、災害に備えておくことが重要です。

地域防災活動によるリスク・マネジメント
 私の活動では、リスク・マネジメントのプロセスを重視しています。いくつか考え方がありますが、私の活動では、まず①「リスク・アセスメント(リスク評価)」を行います。それは、各地域コミュニティ独特のリスク(高齢者が多い、日本語が理解できない外国人が多い、細街路が多いなど)を発見することです。地域によって違うため、そこに居住し、土地の事をよく知っている住民自身がリスク発見のための活動に参加することが大切です。そして、②「リスク・コミュニケーション(リスク共有)」を行います。ここでは、発見したリスクを住民間で共有し、どのような対策がとれるのかを考え、対策について意思決定します。ここでは、できることは自分たちで行い、どうしても無理なことは行政などに依頼することになります。そして、③「リスク・マネジメント(リスク対策)」で、意思決定した対策を実施するという手順です。
 防災マップづくりを例にとると、参加者である住民に普段暮らしている町を、より小さな単位に地域を分け、その地域の住民でグループを組み、『災害時にどうなるのか』という事を常に頭に入れながら歩いてもらいます。これを一般的に「まち歩き」と呼びます。また、事前に決めていた防災を考えるにあたって重要な情報(消火器の位置、ブロック塀の位置、その他危険な個所など)を地図上にメモしていきます。どのようなリスクがあるかを常に考えながら歩くことで、リスク・アセスメントを実施します。「まち歩き」の後、部屋に戻ってみんなで模造紙にマップを書きだします。そのマップには、先ほどメモした消火器の位置などの情報を書きこみつつ、発見したリスクについて話し合ってもらいます(「リスク・コミュニケーション」)。また、「まち歩き」の際も、歩きながら参加者間でリスクについて話し合ったり、共有し合ったりすることがあれば、そこでも「リスク・コミュニケーション」が実施されていることになります。そして、どのような対策が実施できそうか、住民からどのような協力を引き出せそうか、といったことを議論し、対策として何をするのか決定、実施(「リスク・マネジメント」)します。このとき、引き出せそうな住民からの協力や地域の過去の(災害)経験など、地域住民しか知らないような事も議論には含まれます。つまり、防災に関する一般的な専門知識を持った専門家が防災マップづくりを実施し、地域の経験や知識を持った住民が参加することで、防災知識(「専門知」)と地域の知識(「地域知」・「経験知」)を融合することができるのです。

地域防災活動への学生参加に向けて
 この取り組みに学生がどのように参加できるのかについてはプラス面とマイナス面を考えていく必要があると思います。多々あると思いますが例を挙げると、プラス面としては、人的資源としての役割です。防災訓練においても学生ボランティアが訓練をサポートしている事例は多々あります。最初は訓練参加者などとして参加しつつ、それほど技術や能力を要求されないような協力(炊き出しや各種訓練の手伝いなど)から始め、企画段階から参加するようになり、さらに、企画の提案も行えるようになれば、立派な地域の主体となります。それに伴って、学生自身も成長し、社会貢献を通じて卒業後も社会に出て活躍するための基礎能力が培えるでしょう。基礎能力とは、例えば、「社会人基礎力」という経済産業省が提唱している考え方もあります。
 その一方、マイナス面となりえるのは、学生(大学)への依存です。高度経済成長期の日本は防潮堤などのハード面(建築物)の災害対策が進んだことで、より安全になった反面、行政への依存、安心感による防災意識の低下を招きました。同様に学生(大学)が様々な活動を実施するようになってくると、『学生や大学にやってもらえれば良い』と依存心が芽生えてくる可能性もあるので、関与については、うまくバランスをとることが重要です。実際に災害が発生した際に、平時に協力してくれている学生は地域の一員として活動できるのかどうか、災害時の事を考えながら活動を実施することが重要です。もう一つの面は、特に防災について重要なのが、知識を含む学生の能力の問題です。防災では『こうすれば良い』という一つの解答がないことが多いですが、誤った答えはあります。誤答を伝えることのないように、知識を獲得するとともに、その知識を活動の運営側として伝授する。さらに、参加者に答えのない問に取り組んでもらうために、まず自身がその思考方法を身に着け、今度はその思考方法を参加者に伝授するというように学生自身が成長していきつつ、それに見合った地域への関与が重要だと思いますし、学生が自分自身の活動や成長をふりかえる機会を用意するなどのサポートが重要です。
 地域コミュニティでの防災に興味がある学生は、自分自身の経験、知識、能力に見合った貢献方法がありますので、上記を参考にして、どのような活動から始めて、今後どのように貢献し、成長していきたいのかを考えながら積極的に参加していくことを期待しています。