リレーコラム

2012年08月01日

都留文科大学 教授
高田 研

地域(フィールド)から学ぶ ~都留文科大学における教育実践総括~

 動物学者でありナチュラリストである今泉吉晴先生から、当時岐阜県立森林文化アカデミーに勤めていた私に後任の仕事をご指名いただいたのが6年前。「高田さん教室でなんか講義しないで外に学生を連れて出てくださいね。外には真実に満ちた学びの材料がいくらでもある。」この言葉に心動かされて私は都留に参りました。

 この5年間でやってまいりました事を総括いたしますと、まず環境教育の主軸となるチームを育てました。これはグローワイルドライフ(略称GWL)というサークルです。元は教育産業のベネッセと協働で学生の人材育成を始めました。キャンプというとなんとなく未だ体育の範疇にある教育(大学の授業は体育)を、ヘンリー・デイヴィッド・ソロー(1817~1862)のメッセージ「野生にこそ世界の救い。」つまり本来もっている自然への感覚を取り戻すことこそ重要であるというメッセージを、都留の自然に生きる野生動物や地域の人々の生活から学ぶ教育しての転換する企てです。今年も宝の山しぜんふれあいセンター(今泉先生がデザインされた施設)で地域の子どもたちを集めて実践しました。

 この野外系環境教育と並行して始めたのが「フィールドミュージアムカフェ」当初は文科省の現代GPの取り組みとしてスタートさせた事業です。2年間で市内の5カ所+大学で開催。空いている民家や集会所をお借りし、食べ物はすべて持ち寄り。オープニングコンサートに始まり、学生が1ヶ月ほど地域を歩き回って人々から聴き取り、撮影して来た写真を元にがやがやと地域の問題を語り合う3時間のイベントです。この取り組みのゴールは地域での環境問題を話し合うプラットフォームを作る事です。この取り組みから生まれたのがNPO法人都留環境フォーラム(加藤大吾代表)で、現在3人の卒業生が働いています。カフェは月例になり、エコハウスで「つながるエコカフェ」というネーミングで様々な視点から環境問題をテーマにゲストをお呼びして開催しています。立役者は比較文化学科出身の河野いたる君です。

 3つ目が「鹿留こどもふれあいの森」です。これは森林環境教育の場として放置された森を整備する取り組みです。県林務、市の産業観光課、大学、小学校、保育園、森を所有する地区の人々と多様な主体が関わっております。アセスメント調査から始まり、森林整備計画をみなさんと市民参加で立案いたしました。そして実際の子どものイベントには環境教育ゼミ、GWL、野外教育サークル、福祉系ボランティアサークルなど多数の学生が関わります。小学校へ総合的な学習の時間に学生と森の中のデザインを考える授業を行っています。

 この事業は大学での環境教育実習「森のようちえん」を生み出しました。「森のようちえん」は4月から1回ペースでGWLによってスタートし、後期10月からは環境教育実習で毎週実施となります。幼児教育というまさに教育の原点とむきあう機会は先生になる学生にとっては重要な経験となっています。

 4つ目の実践。3.11以後、NPO法人都留環境フォーラムを中心に大学駐車場で支援物資を被災地に送る仕事を始めました。全国から大学に届けられる物資はおよそ20トン余。これを学生が連日仕分け、24日にはトラックを仕立てて遠野,登米のバックヤード経由で釜石から南三陸町に届けました。これ以後、5月の連休までに学生はそれぞれ個別にボランティア活動を始めました。NPO法人都留環境フォーラムが主宰して釜石への学生ボランティアバスを出したのが6月。

 同月、学生たちは学生災害ボランティアチームバーサス(略称V.S)を組織し、計10回のボランティアバスを運行し200余の学生を被災地に送り出しました。

 災害ボランティアの経験は、阪神淡路の経験から川中大輔さんがシチズンシップ共育企画を作ったように、起業する前向きな若者を創出して来ました。

 今泉先生が私に求めたのは、学内講義で養われる知を実践と結びながら肉となして行く経験教育の根幹の部分です。かのJ.デューイも実践と知の絶えざる往復があってこそ知識として身体に織りこまれていくことを述べております。

 裏返せば如何にアカデミックな学びと架け渡して行くかを問い続けなければなりません。この問いに明確な実践として答えを持っている教育実践は少ないですが、この5年間の活動の中心となっているのはつねに自由の森学園の卒業生たちでした。彼らは自分で考え、よく学びます。きのくに子どもの村学園の小中等部から自由の森学園高校に進んだ経歴の学生がおいて、現在GWL,VSともに運営チームの中心です。きのくに子どもの村学園の堀真一郎さんは小学1年生から始めないと遅いと語られます。

 一環した自由教育の連携体制を今後はこれらの学校と作って行く必要性を強く感じているところです。