リレーコラム

2012年10月01日

特定非営利活動法人日本ボランティアコーディネーター協会  事務局スタッフ
足立 陽子

市民の社会参加を支えるボランティアコーディネーション力をつけよう!

ボランティアコーディネーターの現状と課題

 皆さんは、「ボランティアコーディネーター」という存在をご存知でしょうか?立命館大学においては、1999年より「ボランティアコーディネーター養成プログラム」が開講され、多くの修了生を輩出し、活躍の輪が広がっているので、聞いたことのある方も多いかもしれません。

 全国的にはまだ十分浸透しているとは言えませんが、1995年の阪神・淡路大震災時にボランティアが大勢駆けつけた際、活動希望者と現地のニーズ調整がうまくいかなかった体験をしたことで、“コーディネーターが必要だ”という論調と認識がずいぶん広がりました。

 私が働いている日本ボランティアコーディネーター協会(以下、JVCA)は、市民が主体的に社会の課題解決に取り組む市民社会の実現を願い、そのために重要な存在であるボランティアコーディネーターの専門性を確立し、社会的な認知を得ていくことを目的に、2001年に設立されました。JVCAでは、ボランティアコーディネーターを単にボランティアしたい人と受け入れたいニーズをつなぐという狭い意味だけの役割でなく、「ボランティア活動を理解してその意義を認め、その活動のプロセスで多様な人や組織が対等な関係でつながり、新たな力を生み出せるように調整することにより、一人ひとりが市民社会づくりに参加することを可能にするというボランティアコーディネーションの役割を、仕事として担っている人材(スタッフ)」ととらえています。社会福祉協議会のボランティアセンターや民間のボランティア協会では、職名として「ボランティアコーディネーター」を名乗るスタッフは珍しくありませんが、最近ではボランティア活動が多様なスタイルの市民活動として展開されるなか、職名は別として、福祉施設や病院、博物館や文化ホール、公園などの公共施設、NPO、そして大学ボランティアセンターなど多様な分野においてボランティアを支えるスタッフは確実に増えています。

  一方で、JVCAのミッションの一つであるボランティアコーディネーターの社会的認知が進んだかと言えば、残念ながら「専門職としての認知や配置」は進んでおらず、むしろ、正職(正規雇用)化は後退しているという現状もあります。

 市町村に設置されているボランティアセンター等においては、自治体の合併等によりボランティアコーディネーターの人数そのものが減っていることや、一部ではありますが、「ボランティアはもう古い」といったような誤った理解から、ボランティア活動の推進や支援に関する事業の職員や予算が削減される状況も生まれています。また、任期制の嘱託職員などの場合も少なくないのが現状です。

「ボランティアコーディネーション力」を高める・広げる
~「ボランティアコーディネーション力検定」と「認定ボランティアコーディネーター」~

  そこで、JVCAでは「ボランティアコーディネーターは専門性がいる仕事なのだ」ということや、「これだけの専門性と実力のある人だ」ということ客観的に示していく必要があると考え、「認定ボランティアコーディネーター」の仕組みを開発していくことにしました。

 また同時に、多様な分野や場面で“市民参加”や“協働”が重要視されている昨今、そもそもボランティアの価値や「ボランティアコーディネーション」という働きが、施設や団体、そして地域社会の中で重要であるということが広く理解されていなければ、それらを進めていくことは難しく、「ボランティアコーディネーション」の考え方とスキルは、一部の専門職だけが身につければいいとうものではありません。「ボランティアコーディネーション力を身につけた市民や職業人が増え、その力を個々のフィールドで発揮してもらう」その基盤をつくるため、「ボランティアコーディネーション力検定」を始めました。

  つまり、私たちは市民社会の創造を目指し、そのために重要な働きである「ボランティアコーディネーション」について、一つは市民参加を支えるプロとしてボランティアコーディネーターの専門性を高めること、もう一つは幅広くこの力の重要性を知っていただき、その力を身につけ、幅広い市民活動の場面で発揮していただく基盤をつくること、「高める」と「広げる」の2つを両輪に事業を展開しています。


【3級】ボランティアならびにボランティアコーディネーションに関する基礎的な知識を理解できている(2009年開始)

【2級】ボランティアならびにボランティアコーディネーションに関する知識を実務に応用する力を身につけている(2010年開始)

【1級】ボランティアコーディネーション力を使って、社会課題解決に向けた有効で実行可能な方策を提案できる力を身につけている(2012年開始)

 ※合格者数は2012年10月末時点

 上記のような課題意識をもとに2009年から段階的に開始し4年目を迎えた「ボランティアコーディネーション力検定」ですが、現在、3級合格者は1,000人を超え、全国にボランティアコーディネーションの価値を共有した仲間が広がっています。受験者の分野や活動の場面も多様で、直接的にボランティアと関わる立場の方はもちろんのこと、市民との協働を進める自治体(行政)の方や、CSRや社会貢献を進める企業の方も多く受験されています。少しずつではありますが、検定の実績が評価され、合格したことで非常勤のコーディネーターの時給が上がったという例や、採用条件に検定合格を加える組織、職員研修の一環として本検定を位置づけている組織などが生まれてきました。そして、今年、ついに1級検定が始まり、検定システムが完成しました。2013年からは「認定ボランティアコーディネーター」のシステムを開始するべく、現在、議論を重ねているところです。

 本検定・認定システムは、ボランティアコーディネーション力を身につけた個人を増やすことがゴールではありません。そのような人たちが多様な分野、組織に広がることで、より多くの市民参加を進め、つながりを生み出し協働することにより、新たな社会を創りだしていくためのものと考えています。

学生の皆さんへ
~ボランティアコーディネーターという職業とボランティアコーディネーション力をもって生きること~

  ここまで、市民が主体的に社会の課題解決に取り組む市民社会を実現する、そのために「ボランティアコーディネーション力」が重要だという話をしてきました。

 学生の皆さんは、学んでいる学問領域も経験や関心事、また卒業後の進路も様々だと思います。しかし、誰もがみんな、これからの社会を創る“若き市民”であることに変わりありません。

 東日本大震災においては、多くの若者が被災地に赴き、あるいは自らの地域で、「ほっとけない」という気持ちから行動を起こしました。一人のチカラは小さいかもしれませんが、他者と協力し、巻き込み、広げ、やがて大きなうねりとなりました。それらの力は確実に社会を動かしたはずです。そのプロセスが、まさに「ボランティアコーディネーション力」だと思います。

 ぜひ、学生の皆さんにも「市民の社会参加を支えるチカラ=ボランティアコーディネーション力」を身につけて、それぞれのフィールドでそのチカラを活かしていただきたいと思います。将来は、企業に就職しても公務員になってもどんな現場でも必ずそのチカラは社会づくりに活かされると思いますし、また私たち市民セクターで活動するものにとってもそのチカラやマインドをもった仲間が全国の多様な領域に広がっていることは大変心強いことです。また、その中から「ボランティアコーディネーター」を職業にする仲間が増えればこんなに嬉しいことはありません。

  私が現在の仕事をするうえで、私を支えている核となっている信念は、立命館大学ボランティアセンターの設立に関わり、ボランティアコーディネーターとして学生の皆さんとともに歩んだ経験が原点となっています。今は、直接的に学生の皆さんと接する立場にはありませんが、ボランティアコーディネーションの重要性を伝えたり、ボランティアコーディネーターの認知度を高めることで、“若き市民”の皆さんの社会参加に少しでも寄与できるよう、これからも日々奮闘していきます。

 

【参考】

  日本ボランティアコーディネーター協会 http://www.jvca2001.org

・ 日本ボランティアコーディネーター協会編 早瀬昇・筒井のり子著
  『市民社会の創造とボランティアコーディネーション』筒井書房、2009年

【略歴】
2004年3月 立命館大学大学院社会学研究科 修了
                 大学院在学中より「ボランティアコーディネーター養成プログラム」の修了生や関係者とともに
                 ボランティアセンター設立に向けた活動や調査・研究に関わる

2004年6月~2006年3月 立命館大学ボランティアセンター開設とともに主事として勤務