リレーコラム

2013年04月01日

立命館大学 サービスラーニングセンター長
春日井 敏之

つながって生きるということ-「助けることで助けられている」

私たちは、この世に自分の意志で時代や場所を選択して生まれてきたわけではありません。このように、「第一の誕生」は受け身であり、与えられたいのちは、親や周囲の援助がなければ、そのまま失ってしまうような危うい存在なのです。そんな危うい誕生をした私たちが、何十年も生きられるのはなぜでしょう。それは、あまり意識していないかもしれませんが、自らが持って生まれた「いのちの力」と家族や周囲のさまざまな人々の「お世話(支援)」があったからでは ないでしょうか。「迷惑をかけた」のではなく、「お世話」になってきたのです。

こうして「お世話」になりながら育ってくるなかで、私たちの心には、「できることで、誰かを助けたい」「誰かのために役に立ちたい」といった気持ち が、育っていくのではないでしょうか。人と人がつながって生きるという双方向の人間関係の土台には、このようにお世話になったり、お世話をしたりすること を通して育つ人間への基本的信頼感があるのです。

 思春期・青年期は、受け身で誕生した いのちが、人生の主人公として主体的に生きようとするからこそ、「第二の誕生」と呼ばれるのです。先ほど述べた「誰かを助けたい」「誰かのために役に立ち たい」といった気持ちは、具体的には、働くこと(進路選択)、愛すること(性と生)、社会参加(ボランティアなど)を通して実現が図られていくのです。人生の主人公になるということは、それまでに、親や周囲の大人たちが、よかれと思って敷いてくれたレールを一旦相対化し、自分自身と対話しながら、隣人、社会、世界へと視野を広げていくことでもあるのです。立命館大学では、学内外の課外活動(サークル、NPO、ボランティアなど)に、70%以上の学生が参加しています。このようにして、「対人援助」につながる仕事や社会参加を志向する若者が多く生まれているのです。

立命館大学サービスラーニングセンターは、2004年(衣笠)、2006年(BKC)に創設されたボランティアセンターを発展させ、2008年に設立されました。学生のみなさんが学びと成長を深めるための教学プログラムを開発・体系化する機関として、また、大学と地域が課題解決に取り組むネットワークを構築する拠点としての役割を担っています。具体的には、教養教育におけるサービスラーニング科目(C群:社会で学ぶ自己形成科目)の開講、学生ボランティア・コーディネーターの養成、地域・社会へのインターンシップやボランティア活動の企画・展開などを行っています。

サービスラーニングとは、大学における学びと社会における諸課題の解決を、ボランティア活動などの具体的な実践を通して結合させていく学びの手法です。このような視点からの社会貢献活動などによって、双方向の人間関係を育て、学生のみなさんが市民としての資質や社会性を高め、課題解決力、チームとしての実践力などを高めていくことを目的としています。同時に、実践や体験を含めた学びを通して、自分の生き方やあり方、人とのかかわり方を深く考え、身につけていく場にもなっていくのです。

 サービスラーニングや「対人援助」と言われると、どこか偉そうで、ボランティアは学習材料なのかといった声が聞こえてきそうです。しかし、さまざま な活動に参加している学生のみなさんは、「対人援助」というかかわりを通して、視野を広げながら社会の課題に直面し、同時に「助けることで助けられている」ことを学んでいます。「誰かから助けてほしい」と思っているあなた。待っていないで、自分にできることで、あなたの隣人がしてほしいと思っていることをして、助けてあげてください。そこから視野が広がり、社会の課題にぶつかったり、つながって生きるということの意味を深く考え、実感していくことでしょう。サービスラーニングセンターは、そうした学生のみなさんに助けられながら、みなさんのためにありたいと考えています。