スポーツ社会専攻
市井 吉興 教授

社会との関係の中でスポーツをとらえることで本質が見えてくる
スポーツはいまやライフスタイル全般に浸透した文化

スポーツは今日、競技スポーツだけでなく、ファッション、健康増進、ダイエットなどとも結びつき、ライフスタイル全般に浸透しています。スポーツは、単なる身体運動にとどまらない人間によって創造された多様で豊かな文化なのです。

その一方で、ドーピング、スポーツ指導者の暴力(体罰)、ファンの暴動、判定に対する選手や指導者の粗暴な振る舞い、勝利至上主義、スポーツの商業主義路線の強化など、スポーツに関連した事件や問題は枚挙にいとまがありません。このような問題が持ち上がるたび、「スポーツそのものがおかしいのでは?」と人々は疑念を抱くことがあります。しかしスポーツをめぐる数々の問題の原因をすべてスポーツの本質に帰結させることでは、決して問題は解決しません。

たとえば皆さんが何かのスポーツ、野球やサッカー、水泳などをやりたいと思った時、そのスポーツができる環境が整備されているか? たとえ環境は整備されていたとして、その設備を利用するのにかかる費用を払う金銭的なゆとりはあるのか? そもそも自分にはスポーツを楽しむ時間的なゆとりはあるのか?といったことを考えるでしょう。スポーツを考察する時、私たちの生活を取り巻く社会のあり方を無視することはできません。もちろん、先のスポーツをめぐる事件や問題を考えるときにも、このような視点が欠かせません。スポーツと社会のさまざまなものごととの関係性をとらえ直し、そこから本質に迫ることが大切なのです。

スポーツにまつわる現代社会の諸問題を解決できる人材を育てる

スポーツ社会専攻では、これまでのスポーツ科学的な枠組みでは把握しきれなかったスポーツにまつわる現代社会の諸問題に焦点を当て、社会科学の多面的な知見を動員してそれらを解決できる人材を育成することをめざしています。

教室での学びと同じくらい重視しているのは、実践を通じて学ぶ「アクティブラーニング」です。地域に学生が飛び込み、企業・行政・NPO法人・地域住民と一緒に京都市内の芝生化活動(自主ゼミ)や京都市障害者スポーツセンターにおけるボランティア活動、さらには、海外研修プログラム(夏休みに韓国やアメリカにわたり現地大学での学術交流や各種スポーツ施設、イベントの視察などを行う)などを通して授業とは違った学びを得ます。また「ゼミ共同研究発表会」など、学年や専攻、学問の壁を越えて学ぶ「クロスオーバーラーニング」も産業社会学部ならではです。その他にも、スポーツ業界を中心としたキャリア形成意識企画(講演会)など、多様なプログラムが揃っています。

歴史、ビジネス、行政、教育、多様な側面からスポーツを学ぶ

スポーツのどのような側面に着目するかによって、学びは多様に広がります。たとえば、「スポーツと歴史・社会」に関心のある人は、スポーツという文化がいつ、どこで誕生し、どのような過程を経て現代まで発展してきたのかを学びます。歴史からスポーツの普及形態を知ることで、現代のスポーツのグローバルな展開についても考察できるようになります。また、「スポーツマネジメント・ビジネス」に焦点を当てた学びもあります。オリンピックやW杯に代表される国際的なスポーツイベントの開催から地域に密着したスポーツクラブの運営まで、スポーツ文化の多様化とともにスポーツビジネスの分野にもさまざまな需要が生まれてきています。授業を通じてそうした分野で求められるマネジメント能力を身につけることができます。

「スポーツと行政・政策」に関わる学びでは、スポーツ行政や政策、法学などを身につけるとともに、社会の多様な立場からスポーツ像をとらえ、社会に豊かなスポーツ環境を創り出す力を育みます。最後に、「スポーツと教育」との関わりも重要です。残念なことに、体育の授業や部活動といった教育現場における事件、事故、不祥事は後を絶ちません。なぜこのような問題が起こってしまうのか。その答えを探りながら、教育現場における豊かなスポーツ環境を創る担い手となれる力を養成します。さらに本専攻では、第一種中学校・高等学校保健体育教員免許の取得が可能です。

スポーツ好きはもちろん、
「スポーツってちょっと…」という人にも飛び込んできてほしい

「スポーツ大好き」という人は当専攻を志望することに迷いはないはずです。しかし私は「スポーツってちょっと…」と思っている人にもぜひ本専攻に関心を持ってほしい。いやむしろそう思っている人にこそ、思い切って本専攻に飛び込んできてほしいと思っています。

スポーツは、現代社会の「矛盾」と「希望」をはらんでいるからこそ、スポーツへの知的で冷静な分析が求められています。少し大袈裟に言うならば、スポーツは現代社会を切り開いていく「鍵」を獲得するための重要な研究対象となっているのです。それゆえに、スポーツが好きとか嫌いとか、「スポーツをやっていた」といった個人的な経験に留まっていては、スポーツの本質を理解し、これからのスポーツを語ることはできません。

スポーツ好きもスポーツ嫌いも、スポーツ経験者もスポーツ未経験者も、一度自分の経験から離れてスポーツと向き合ってみましょう。その時、どんなスポーツが見えてくるでしょうか? 本専攻でならきっと新たなスポーツの世界が見つかるはずです。皆さんが本専攻の扉を開くことを心待ちにしています。

市井 吉興 教授

市井吉興 教授
専門分野
スポーツ文化論、レジャー研究、エイジングとポピュラーカルチャー
研究テーマ
社会的諸関係からスポーツの位置づけを捉え直しつつ、スポーツの本質と構造を探究
担当科目(2013年度)
基礎演習、専門演習、卒業演習、スポーツ文化論、現代余暇論、スポーツ教育論実習(水泳)など
詳しいプロフィール
立命館大学研究者データベース 市井 吉興
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