人間福祉専攻
丸山 里美 准教授

多様な個性を持った人々が生きていくための社会のありようを考えよう
なぜ女性のホームレスは少ないのでしょうか?

私が大学3回生だった時、大阪市西成区にある釜ヶ崎と呼ばれる、日雇労働者やホームレスの人が多くいる地域での炊き出しにボランティアとして通うようになりました。炊き出しの場にはホームレスの人や日雇労働者だけでなく、教会のシスター、主婦や学生、定年退職後の人など、さまざまな人が集います。そこに魅力を感じ、炊き出しの場をフィールドとして卒業論文を書きました。

ホームレスというと、多くの人は単身の高齢男性というイメージを持つでしょう。実際その通りで、現在約1万人といわれる日本のホームレスの人の中で、女性の割合はたった3%です。ここには、日本社会におけるジェンダーのあり方が如実に反映されています。ジェンダーとは、社会的・文化的に規定された性差のこと。女性の自立を阻む文化や、男女間の労働・社会保障の違いなどが女性のホームレスを少なくしているのです。ところが、支援策も、そもそもホームレスを把握する認識の枠組みも、目に見えやすい男性ホームレスを想定したものになっているので、実は社会に広く存在する貧しい女性がどんな困難を抱えどのように暮らしているのか、どのような対応が必要なのかなどがわからなくなっている。そういうことを、女性ホームレスのフィールドワークをしながら研究しています。

実社会に触れながら学ぶからおもしろい

このように大学の外に出て実社会に触れ、誰のために、何のために学ぶのか、自分はここで何がしたいのかを深く考えると、勉強は俄然おもしろいものになります。産業社会学部ではこうした体験を通じた能動的な学びを「アクティブ・ラーニング」として重視しています。人間福祉専攻では、社会福祉士の資格を取得できる課程を選択すると、福祉現場で1ヶ月間の実習を経験します。それ以外にも、多くの授業やゼミで「アクティブ・ラーニング」の機会が提供されているほか、社会調査士資格を取得できる課程や、ボランティアをしながら単位をとれるプログラムもあります。

関心に合わせて多様な分野を学べるのが魅力

社会福祉や心理学など、人に直接アプローチするミクロな領域から、社会政策や現代社会論などマクロな領域まで、さまざまな社会問題について異なるアプローチで学べるのが人間福祉専攻のおもしろいところです。たとえば子どもの虐待に関心があるなら、人間発達の理論、カウンセリング、福祉的援助のためのスキル、それを生じる社会の変動なども合わせて学ぶことができます。また他専攻の科目を履修する「クロスオーバー・ラーニング」も可能なので、子ども社会専攻の科目を受講して教育の視点を入れながら研究することもできます。

「実践しながら考える」をテーマとする私のゼミでは、ホームレス、難民、自助グループ、在日外国人、障害者の自立生活、ギャンブル依存など、学生はそれぞれの興味に沿って、地域の団体にボランティアなどに通いながら研究に取り組んでいます。ほかにも児童虐待やひきこもり、少年非行、発達障害など児童・青年期の課題、障害者・高齢者・女性などの生活に加えて、貧困・格差、年金問題、医療問題などの現代的なテーマ、地域づくりや第三世界の福祉など、学習テーマは実に多彩です。またこれほど多様な社会科学系の研究者の集まっている学部もなかなかありません。社会の人々が抱えるさまざまな生活困難の解決・改善をめざして、それぞれの関心にあわせて学問横断的に自由に取り組めるのが本専攻の魅力です。

社会問題に関心を持ち、自分は何ができるか考えてほしい

学生の皆さんには、自ら課題を発見し、その改善・解決に取り組む力を身につけてほしいと思っています。高校までのように知識を覚えていく学習とは異なり、大学では自分自身の考えや批判的な思考を持つことが大切です。しかし批判だけにとどまっていては事態を良くすることはできません。その解決・改善のために自分に何ができるかを考えること。それはいわば、社会に生きる一人の人間として、責任ある態度を学ぶことです。

人間福祉専攻の卒業生の中で、実際に福祉領域を就職先に選ぶ学生は少数派です。しかし学部の4年間を通して養う社会を見る視点、コミュニケーションする作法、問題発見・解決の力、自らの考えを発信していくスキルは、どのような分野に進んでも必要になるものです。だから福祉に興味を持ったきっかけを大切にし、身のまわりの社会問題に関心を持ってほしい。そして、そうした社会問題に取り組む自分自身の力を信じてください。さまざまな個性や背景を持つ人たちが共に生きていくための社会のありようを、これから一緒に考えていきましょう。

丸山 里美 准教授

丸山里美 准教授
専門分野
貧困研究、ジェンダー論
研究テーマ
貧困とジェンダーの関わり
担当科目
ジェンダー論、基礎演習、専門演習、卒業研究、プロジェクトスタディ、社会調査士Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ、現代と福祉、社会福祉援助技術実習指導Ⅰなど
詳しいプロフィール
立命館大学研究者データベース 丸山 里美
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