コラム

自分らしさって何だろう?

 自分らしさって何だろう?という問いは、誰しも一度は抱いたことのあるものではないでしょうか。今回のコラムでは、そのことについて考えてみたいと思います。
突然ですが、まずここで皆さんに質問です。次の画像の真ん中の黒い丸は、左側と右側のどちらの方が大きく見えるでしょうか?

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 この問いに対して、「右側の黒い丸の方が大きく見える」と答える人が多いのですが、実際はそうではありません。驚く方もいるかもしれませんが、「大きさはどちらも同じ」というのが正解です。左側の画像では、大きい丸に囲まれているので真ん中の黒い丸が小さく見え、右側の画像では、小さい丸に囲まれているので真ん中の黒い丸が大きく見えるだけなのです。これは心理学の「錯視」と言われる現象です。これは、ひとの脳が、無意識のうちに周りとの比較で、物を見てしまうということを表しています。
なぜこのような例を挙げたかと言うと、私たちも普段ついつい誰かと自分を比較して、一喜一憂していないだろうかと考えてみたかったためです。この画像の真ん中の丸を、あなた自身だと想像してみてください。左側の画像のように、優秀な人に囲まれていると感じると自分が委縮して自信がなくなってしまうことはないでしょうか?一方、右側の画像のように、周りよりも自分の方が優れていると感じると態度が大きくなってしまうことはないでしょうか?この錯視の例のように、我々は、無意識のうちに、周囲の人との比較で自分を捉えてしまいがちなのです。周りと比較することなく、自分らしくありたいと思っていても、自信が持てずに誰かと比べてしまいがちですし、ついつい周りに合わせてしまうものです。それでは、自分らしくいるためには、いったいどうしたらよいのでしょうか?

 それを考えるために、今度はこの画像のうち、周りの丸を全て取り除いてみたいと思います。

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 すると、やはり真ん中の黒い丸は、どちらも同じ大きさの丸になることがわかると思います。加えて、もう一つ気づくことがあります。それは、その黒い丸が、大きいのか小さいのかどうかは、もはや判断ができなくなるということです。比較できる対象がないため、この黒い丸は、大きいでもなく小さいでもなく、「ただの丸」でしかなくなってしまうのです。

 あなた自身も、周りの人との比較をやめてみた途端、自分が優秀なのかそうでないのか、自分が明るいのかそうでないのか、自分が優しいのかそうでないのかなどが見えなくなり、自分が何なのかという手がかりがなくなるために、不安な気持ちに陥るかもしれません。誰かと大きさを競うことの方がずっとわかりやすく、単純なことに思えてくるかもしれません。ですが、それでも、周りの人との比較をやめて、自分自身を見つめていると、今のあなた自身の本当の姿が見えてくるのではないでしょうか?大きくもなく小さくもなく、「ただの丸」にしかすぎない自分自身の姿が浮かび上がってくるはずです。「ただの丸」でしかないという現実は厳しくもありますが、よい意味での諦めと軽やかな気持ちを同時に感じることになるのではないでしょうか?なぜなら、「ただの丸」でしかないということは、この先どんな形にもどんな色にもなりうる可能性も秘めていることに気づくからです。

 自分自身を見つめることは勇気がいる作業です。しかし、その作業を通して初めて、誰かと比べるのではない、「私だけの」「僕だけの」自分らしさを発見できるのかもしれません。同時に、自分が「ただの丸」でしかないことを確認できて初めて、そこに色付けをしたり形を変えたりして、自分だけの「何か」を作っていけるのかもしれません。学生サポートルームでは、悩みや困り事の相談だけではなく、こんなふうに自分らしさを見つけるためのお手伝いをさせていただくこともできます。いつでも足を運んでみてくださいね。

学生サポートルームカウンセラー