2017.01.31

食後の血糖値は運動で下がる。でもどれくらいの運動が最適なの?

健康な人に潜む万病の種、「血糖値スパイク」とは?

血糖値とは、血液中に含まれるブドウ糖の濃度。健康な人であれば、空腹時の血糖値は110mg/dL未満に保たれており、この血糖値が常時126mg/dL以上になると糖尿病と診断されます。
しかし、血糖値は常に変動していて、健康な人でも食後の血糖値は140mg/dL以上になることも珍しくありません。この食後の血糖値の急激な上昇は「血糖値スパイク」と呼ばれ、放っておくと糖尿病だけでなく、動脈硬化や心筋梗塞、ガン、認知症など、様々な病気を引き起こすことが最近の研究によってわかってきました。しかし、症状が現れるのは食後のみだから、健康診断では見破れない。なんとも厄介な病気ですね。

運動すれば血糖値は下がる。でもハードな運動は長続きしない

▲研究メンバーのひとり、4年生の浜口さん。家族が糖尿病を患ったことから当研究に興味を持った。

「血糖値スパイク」にも、対策法はあります。その一つが食後の運動。血糖値が上がる前に、ブドウ糖を消費してしまおうというわけです。
言うのは簡単ですが、忙しい毎日のなかで、運動の時間を作るのはなかなか大変。まして、糖尿病リスクの高い中高年ほど、運動する機会も減ってしまいますから。「昼休憩などを使った負担の少ない運動で、効率的に血糖値を下げられないだろうか」。僕たちの研究室では、自分たちが被験者になりながら、血糖値を下げるために最適な運動時間・運動量を探す研究に挑んでいます。それでは、実験の流れをご説明しますね。

それでは、実験の流れをご説明します

今回被験者として協力してもらうのは、研究メンバーの馬さんです。今彼女が食べているのは、ブドウ糖が30g含まれているゼリー。食事の条件を同じにするために、被験者は必ず空腹状態で参加して、まずこのゼリーを摂取します。

続いて、血糖値を測定。指先に小さな針を刺して血をとり、専用の装置で測ります。余談ですが、ちょっとチクッとするので最初は怖がっていましたが、人間慣れるもので今はみんな平気ですね(笑)

15分間安静にしたのちに、ふたたび血糖値を測定します。外的要因による血糖値の変動をなるべく抑えるために、淡々と時間が過ぎるのを待ちます。

さあ、いよいよ運動開始です。エルゴメーターという測定用の自転車を一定時間こいでもらいます。この運動時間を15分・20分・30分、運動強度も10w・20w・30w(数字が大きくなるほどペダルが重くなり、負荷がかる)という風に、さまざまな条件で実施しました。

運動終了後はまた安静にしながら、定期的に測定。食後120分間の血糖値の変化を記録します。この、何もしないで待つ時間が、一番大変だったかもしれないです。

「15分後に、15分間、15wの運動」が効果的

いろいろな条件を試した結果、今のところ、食事の15分後に、15分間、15w(ジョギングとウォーキングの中間くらい)の運動が効果的なのではと考えています。この場合、何も運動しない状態では140mg/dLまで上昇した血糖値を、130 mg/dLに抑えることができます(下図)。

実は別の条件でも、運動をすればするほど、一定量まで血糖値が下がったのですが、急激に血糖値が下がると、体が血糖値を欲して、その後逆に血糖値が上がるという結果になりました。15分、15wの運動であれば、頑張れば続けられる条件だと思います。

無酸素運動、サプリなどと合わせたら、もっと下がるかも

食後すぐの運動は消化吸収にとって良くないと言われているのですが、血糖値スパイク防止にはよいことがわかってきています。15分後の15分間の軽度の運動でも良い結果出たというのは、なかなか興味深いですね。結論付けるには被験者数が少ないので、今後はより多くの方のデータをとってみるといいでしょう。また、いろいろな条件を増やして研究してみるのも面白いかもしれません。
例えば、今回は足の筋肉による有酸素運動だけだったので、上半身の筋肉を使ってみたり、一部無酸素運動を取り入れてみたり。また、BCAAのアミノ酸サプリなどを摂取することで、運動効率が上がり、血糖値をもっと下げられるかもしれません。今後の彼らの研究が楽しみです。
立命館大学 生命科学部

おすすめ記事