2017.03.31

スマホのバッテリーを、長持ちさせるには?

▲リチウムイオン電池について研究している松井さん(左)と古谷さん(右)

スマホの充電を気にしないで、1日過ごしてみたい。

「ヤバい、もう30%しかない」「20%からけっこう粘れる」など、スマホのバッテリーに関する会話をよく耳にします。カメラもインターネットもゲームも1台で楽しめるスマホは、バッテリーの消耗が早く、ヘビーユザーだと1日もたないことも珍しくありません。長持ちさせる方法はないでしょうか。「バッテリーを使い切ってから充電する」「こまめにWi-FiをOFFにする」など、世の中にはバッテリーを長持ちさせる裏技がたくさん出回っていますが、そもそも、もっと長持ちするバッテリーをつくれないのでしょうか。リチウムイオン電池について研究している松井さんと古谷さんに話を聞いてみました。

スマホのバッテリーの正体、リチウムイオン電池とは?

電池には、マンガン電池、アルカリ電池などの使い切りタイプの「一次電池」と、ニッケル水素電池、ニカド電池などの繰り返して使える「二次電池」があります。スマホのバッテリーに使われているのは、リチウムイオン電池という種類の二次電池。電池の中では一番新しい種類で、電気自動車などにも使われています。
そもそも、どういう仕組みで充電・放電中をしているのか。簡単な図を用意したので、古谷先輩、解説お願いします。
えー、ムチャぶり(笑)

リチウムイオン電池は、正極にリチウムと金属の酸化物、負極には黒鉛(グラファイト)が使われています。充電するときは、正極から放出されたリチウムイオンが負極に蓄えられます。放電(電気を使うとき)はその逆。負極に蓄えられていたリチウムイオンが正極へ戻っていきます。このリチウムイオンのやりとりによって電気が発生しているので、単純に考えると、リチウムイオンの量を増やせば、バッテリーも長持ちするかもしれません。
つまり下図のようなことですね。

そうです。正極・負極に使う材料の種類や量を変えることで、さまざまな特徴の電池をつくることができます。ということで今回は、2倍のリチウムイオンを持った長持ち電池をつくってみましょう。

リチウムイオン2倍、長持ち電池をつくってみよう!

まずは、電極に使用する試薬を選びます。今回はコバルト、リチウム、鉄。今回はリチウムを大目に配合します。

次にこれらの試薬を混ぜます。より接合するように、粒子を粉砕しながら混ぜるのがポイントです。僕は心配性なので、30分以上混ぜます。

よく混ぜたら、試薬をシリンダーに移してプレス機で圧縮。

錠剤みたいになりました。今度はこれを電気炉で焼きます。

650〜750℃くらいに設定して、まる1日かけて反応させます。その後は、溶液と混ぜたペースト状にし、アルミ箔に塗ればリチウムイオンを含んだ電極の完成。最後に、この電極に電解液とリチウム金属を組み合わせて、試験用の電池に仕上げます。

リチウム金属は、外気に触れるとすぐに反応してしまうため、グローブボックスという装置の中で組み合わせます。

電池の完成です。左が今回つくった電池、右が通常のリチウム量の電池。では、本当に長持ちするのか、実験してみたいと思います。

従来電池vs古谷オリジナル電池!

実験方法は簡単。従来品と改良品を「せーの」で電気回路につないで、どちらの電球が長く光るか競います。ではいきますよ。

3分経ちました。まだどちらも光っていますね。

あっ!従来品の電球が消えました。ということで、松井オリジナルの勝利です。

リチウムイオンに変わる次世代電池を考えよう

▲生命科学部の折笠有基准教授

なるほど、電池を長持ちさせるために、リチウム組成を2倍にする。ストレートな発想だけど、考え方は間違っていないと思います。ただ、これでは充電に時間がかかったり、充電を進めるうちにリチウムイオンが減少して、電極材料の結晶構造がスカスカになることもあります。繰り返し使えないと二次電池としては世の中に送り出せません。
実用的ではないということですか?
そうですね。リチウムイオン電池が世の中に誕生したのは1980年。以来、改良を重ねて、今では自動車を200km近く走らせることができるまでになりました。でも、それはあくまでもテクノロジーの進化によるもの。しくみ自体は、そろそろ限界に近づいているのかもしれません。
つまり、バッテリーを長持ちさせるには、リチウムイオン電池に変わる、新しいしくみを持った電池を生み出す必要があるということですね?
その通り。次の電池が必要なのはみんなわかっているけど、それがどういう電池なのかは誰もわかっていないんです。もし、リチウムイオン電池よりも高容量で高寿命な電池が開発されたら、世の中はもっと進化するでしょう。未来のかたちは、電池にかかっているかもしれません。

▲折笠先生の話に「新しい電池を生み出したい」と意欲を燃やす二人でした

立命館大学 生命科学部

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