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2017.04.28

運動能力がアップする、効果的なドリンクは?

サッカーの試合で、開始後と終了前の5分間に失点が多いのはなぜだろう

高校生時代、サッカーに打ち込んでいた塚本くんが思った素朴な疑問。「身体が疲れているから?」「でも、試合開始直後は疲れていないのに」「もしかして脳が関係している?」。自分なりに答えを導き出そうと調べているなかで、スポーツと脳の関係について辿り着いた。スポーツのパフォーマンスにおいて重要になってくるのは身体機能だけではない。ボールをとらえる空間認識能力や、場の流れに相応しい動きをするための状況判断能力など、脳の“認知機能”も大切なのだ。特にサッカーやラグビーなど大人数で行われる複雑なスポーツにおいて、認知機能は重要度を増してくる。そもそも運動行為自体に、認知機能を高める効果があり、運動活発な子どものほうが大人よりも算数の成績が良くなると言われているという。

もし認知機能を高めるドリンクがあれば、もっとスポーツのパフォーマンスが上がるはずだと考えました。

▲スポーツ健康科学部 博士課程の塚本くん。日本学術振興会 特別研究員DC1でもあります。

身近な食品に含まれる、認知機能を高める成分“フラバノール”

脳と言えば、まず糖分だと考えました。でも、近年の論文を読むと糖分は脳への血液供給量を減らすとのこと。覚醒作用があるカフェインも脳を活発化させるのですが、大量に摂取したり、長期的に摂り続けたりすると様々な副作用があるのです。

そこで、さらにあらゆる論文を読みこんでいくなかで辿り着いたのが、“フラバノール”という成分。緑茶やストロベリー、ブルーベリー、穀物などに含まれていて、摂取すると脳の認知機能を上げることが証明されていた。

特にフラバノールが大量に含まれているのがカカオの実(カカオフラバノール以下CF)で、糖分を控えたココアなら認知機能向上のためのドリンクとしてふさわしいと考えました。ただ、単純に運動とCFの掛け合わせをすれば認知機能がさらに上がるのかはわかっていません。もしかしたら通常運動時と同じかもしれなくて、実験が必要でした。

では、どのように実験をしたらいいのか。そこで塚本くんはスポーツと脳の関係性について詳しい橋本健志教授のアドバイスを受けながら実験方法を考えていった。

▲全身のエネルギー代謝に関する研究をしている橋本先生。健康科学の発展に貢献しています。

橋本先生の指導のもと塚本くんが設計した実験方法は、被験者にココアドリンクを飲んでもらい、60分後にエアロバイクで30分間の運動をしてもらうというもの。全体を通して30分毎に身体・心理状況を調べる様々な検査をするという。具体的にはメインである認知機能に関するテストにはじまり、心拍数の測定や血糖値・血圧の測定、心理テストなどを行っていく。

新たに実験をするからには過去の実験内容を踏まえた上で、どうすれば新しい知見を客観的に見出せるのかを考えて新規性を出していくことが大切です。これまで運動後に認知機能が高まることや、CFは摂取して90分後には効果が出ることは知られていました。でも、運動後の認知機能がどれだけ持続するか、CF摂取後の効果の推移はどうなのかは未知数なんです。

新しい発見に期待を膨らませながら、いざ実験がスタート。

▲被験者は同学部の森井郁大さんでサッカー部に所属しています。ココア片手になぜか笑顔。

▲ゴクゴクゴクゴクゴク……(にがめで、甘くない)。

もし思うような効果が出た場合、本当にCFで上がったのかを証明しなければなりません。もしかしたら「ドリンクを飲む」という行為だけで上がることも考えられるからです。そこでココアドリンクだけではなく、もう一つ対象となるドリンクをつくってそちらでも実験することが必要でした。脳への影響を考えながら、カロリーなど統一する成分を考えるのが大変でしたね。幸い、立命館には管理栄養士の先生や生徒がいるので協力していただきました。

▲60分待ってからエアロバイクで運動。摂取後30分の時点で一度目の検査を行っています。

▲もうそろそろ30分。

▲運動後の検査。まずは心理テストから。検査の進行は同学部の武中沙葵さん(女子ラグビー部所属)が担当します。

認知テストの結果には、心理面が影響してしまうことも考えられます。そこで、疲労や集中力、意欲に関する心理状況を確認するのです。

▲次に認知機能をはかる『ストループ・カラーワード・テスト』。「赤」という字が緑色で表示されるといった色と文字の意味がバラバラの状態で、正答率や反応速度などを測定します。

認知機能といっても、状況判断能力や記憶力、空間認識能力など中身は色々です。今回は特にスポーツで重要になってくる状況判断能力を中心にテストしました。その測定のために『ストループ・カラーワード・テスト』を活用し、色と意味の違いに対する反応の遅れ(逆ストループ干渉)などを測定し、認知機能のうち実行機能に関する状況判断能力などを検査していきました。

森井くん以外にも複数名・複数回にわたって実験を行いました。さて、結果は……

見事、実行機能の向上を証明! さらに新たな発見も!

CFを摂取することで、運動のみを行うよりも実行機能が高まる実験結果が出ました。しかも、運動後に機能の向上がある程度維持されることも判明したんです。また、効果も90分以降だけではなく、30分後にすでに出始めていることも発見しました。実際にスポーツの現場で活用するためにはもっと様々な状況での実験を行い、有効性を探ることが必要ですが、2020年の日本選手活躍につながる知見を得ることができたのが嬉しいですね。
今後、さらなる実験で効果の解明が進めば、CFを使った商品を開発したり、運動嫌いの方でもCF摂取でパフォーマンスが向上してスポーツを好きになったり、認知機能が高まることで勉学においても好影響を与えられたりといった社会貢献につながるでしょう。認知機能に関する実験を通して、もっとスポーツや健康を楽しめる世の中にしていけたらと考えています。
立命館大学 スポーツ健康科学部

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