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2017.12.13

植物にも「目」があるって本当?視力測定に挑戦!

太陽に向かってニョキニョキと成長していく植物。人や動物と違って、目や耳で食物を探したり、移動したりすることができない植物は、どのようにして栄養となる光を探し当てているのでしょうか?
シロイヌナズナというモデル植物を使ってその研究をしているのは、生命科学部生物工学科4回生の森智子さん。ある日の休憩時間、同じ研究室の大江遥介さんとの会話が聞こえてきました。

植物には「目」がある!?

森さんとは、同じ学部学科の同級生だけど、お互いどういう研究しているかあまり知らないよね。最近はどんな研究をしてるの?

▲生命科学部で「光屈性」をテーマに研究する森さん

最近だと植物の「光屈性」っていう現象を研究してるかな。植物って、光を当てるとその方向にどんどん伸びて成長していくでしょ? それがどういう仕組みで行われているのか明らかにするための研究。
へー。前から植物がどうやって光を見つけているのか、不思議に思ってたんだけど、「目」みたいなものがあるってことなの?

▲森さんと同じ生命科学部の大江さん

そうそう! 植物の「目」の役割をしているのはタンパク質で。私の研究は、その「目」が植物の成長にどんな役割を担っているのかってこと。シロイヌナズナっていうモデル植物に、ある一つの方向から青色の光を当てて、どんな風に成長していくか、観察実験をしているところ
青色の光じゃないとダメな理由ってあるの? 赤とか、黄色の光じゃダメ?
うん、植物の体の中には、赤い光に反応する「フィトクロム」っていうタンパク質とか、青い光に反応する「フォトトロピン」っていうタンパク質があることがわかっていて、シロイヌナズナは青色を感知するとその方向に伸びていく。植物は赤色光と青色光を感じることで、毎年巡ってくる季節や昼夜の環境変化に対応して、自分の体を光の方向に伸長させていくのね。光を感じることは、光合成によって栄養を作り出す植物が生きていくために欠かせない仕組みだから。

シロイヌナズナの視力測定

青色を感知するタンパク質って、すべての植物が持ってるの?

▲森さんが研究に使っている「シロイヌナズナ」

そう言われてるね。フォトトロピンの中には「LOVドメイン」というアミノ酸の配列があって、そこで青色の光を感知すると、光屈性が働き出すこともわかってる。フォトトロピンは光の刺激を感知すると、光合成を行う葉緑体の運動を活性化させたり、気孔の開閉とかの運動を起こしたり、シロイヌナズナの活動全般に働きかけるタンパク質なの。
シロイヌナズナにとって、フォトトロピンは重要な役割を果たしているんだね。実験のときは、どういう方法でシロイヌナズナの成長を見てるの?

▲タネから発芽した状態の「シロイヌナズナ」

まずシロイヌナズナのタネを寒天培地に植えて、もやしみたいに生えてきたら、そこに青色の光を当ててあげる。すると光の方向に曲がっていくから、どれくらいの角度で曲がったか計測する。
視力測定みたいだなあ。ヒマワリは、めっちゃ目が良さそう(笑) シロイヌナズナが実験に使える大きさになるまでには、どれくらいの時間がかかるの?
シロイヌナズナは成長が速い植物で、寒天培地にタネを植えてから4日間冷蔵庫で保管して、次に光に一日置くと芽が出る。DNA配列がすべてわかっているから、植物の研究では一番頻繁に使われるモデル植物なの。
実験の条件を変えたりもするの?
もちろん。光の強さを変えたり、シロイヌナズナの遺伝子をいじった変異株との比較なんかもしてる。変異したフォトトロピンと、正常なものとの比較実験を行うことで、光感度の影響を調べているところ。

目に見える成長が、研究の面白さ

ところで、森さんの研究って将来どんなことに役立つんだろう?
地球には薄暗いところを好む植物もいれば、炎天下を好む植物もいるでしょ。植物は動けないからこそ、自分が生えている環境の光条件に適応して、生きていくために体を進化させてきたんだよね。植物の体内にあるさまざまな光のセンサーも、その重要な仕組みの1つ。フォトトロピンの解明を通じて光反応の仕組みが明らかになれば、植物に理想的な成長を促すためのヒントになると思う。野菜を生産する食料工場なんかに応用できるかもしれない。
眼鏡をかけて植物の視力矯正をするみたいなことか。
確かに!想像したら面白い(笑)
話は変わるけど、研究でめっちゃ失敗したこととかってある?
あるよー。シロイヌナズナはすぐに大きく成長しちゃうから、一日でも実験が遅れると変化の過程の観察が飛んじゃう。だから実験のスケジュール管理が一番大変で、失敗も多いかな。
あー、植物は待ってくれないから苦労するよね。森さんは、この研究の何が一番面白い?

うーん。植物の成長が「目に見える」ことが面白いよね。フォトロロピンに変異を与えたり、光の条件を変えることで光屈性にはっきりと差が出る。それを観察できるのは興味深いし、何より一生懸命に生きていこうとするシロイヌナズナを見ていると「可愛いな」って感じる(笑)。
わかるわかる! 僕も、もともと樹木を見るのが好きでこの研究室を選んで、今はイチョウやソテツのタンパク質を研究してて、研究対象のイチョウの木はもらったりするんだけど、少し目を離しているうちに銀杏が一気に大きくなっていたりするんだよね。
やっぱり!
植物って、すごくゆっくりしたスピードで成長するイメージだけど、実際にはとてもダイナミックな生命活動をしているのが実感できる。肉眼で見えない小さな微生物を研究する面白さもあると思うけど、自分の目で生命の不思議を体感できるのが、植物研究の魅力だよね。
私も高校生の頃は、ミクロレベルのタンパク質とか酵素反応に関心があったんだけど、大学の笠原先生の授業で植物に触れたときに「生き物の生体反応そのものに興味があったんだ」って気づいた。私の研究は、どんな条件を変えればシロイヌナズナの成長に変化が見られるか、まだ重要な因子が見つけられていないから、それを卒業までに見つけられたらいいな。

生命力の神秘が、研究の面白さ

植物の光を見る「目」として重要な働きを果たしているタンパク質「フォトトロピン」が発見されたのは、実は1997年とごく最近のことです。フォトトロピンが光の刺激を受けてから、分子レベルでどのような応答を起こしているのか。それによりなぜ光屈性や光合成が活性化するのか。植物体内で起きているタンパク質レベルの反応の詳細は、まだ分からないことが多く、世界中の研究者が取り組むこれからの研究テーマです。植物は見ているだけでも美しく、心が癒されていくのを感じます。植物の持っている生命力の神秘に迫る研究に興味がある方に、ぜひ研究室を尋ねてほしいと思います。
立命館大学 生命科学部

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