光通信システム研究室 [佐野研究室] の紹介

1. はじめに

私たちの家庭とインターネットを接続するアクセスネットワークから、データセンタ内ネットワーク、さらには国内・国際の長距離通信を担うコアネットワークに至るまで、様々な光通信システムを対象として、そこで用いられる通信技術に関する研究を進めています。

レーザー光源、光ファイバ、受光器など、様々な光デバイスにより構成されている光通信システムですが、当研究室では、これらの個別の光デバイスを組み合わせてどのように通信システム全体を構築するかを考える、光通信方式に関する研究に取り組みます。

各光デバイスや光ファイバの物理特性を考慮して新しい通信方式を提案し、ネットワークの大容量化・長距離化・経済化に貢献することを目的としています。

 

2. 研究室運営と指導の方針

卒業研究は、前半に関連技術のテキスト・論文を輪読するゼミを行い、後半から実験・シミュレーションなどの個別の研究という流れで行います。

実際の研究は実験と計算機シミュレーションを中心として進めていきます。

通信工学や光エレクトロニクスに関する基礎技術や、C/C++やMATLABなどによるプログラミング技術など、実社会に出てからも幅広い分野で役立つ技術を習得できるように指導していきます。

また、研究室内では日々のミーティングを通して研究状況を共有し、アイディアを出し合うなどのディスカッションに基づいて研究を進めていきます。

さらに大学院に進んだ場合は、論文発表および国内学会や国際会議での発表を積極的に行うことを奨励します。

以上の取り組みにより、光通信分野の研究実績の蓄積に加え、今後社会人として活躍していくためのコミュニケーション能力やプレゼンテーション能力の向上に資する指導をしていきます。

 

3. 研究テーマ

(1) 長距離光ファイバ通信システムにおける低雑音光増幅、非線形補償技術の研究
長距離光ファイバ通信システムにおいて低雑音の光増幅が可能な分布ラマン光増幅の高性能化に関する研究です。
従来の分布ラマン光増幅とは、伝送ファイバの後端から励起光を入射して、伝送ファイバ中での誘導ラマン散乱により信号光を増幅する方法です。
本研究では、これを発展させ、伝送ファイバ中に共振器を形成し、ラマン励起光をレーザー増幅する構成をとります。
この伝送系における距離延伸効果や雑音特性を計算機シミュレーションにより行うとともに、実験による光増幅特性の検証実験を行い、本構成の有効性を明確化することを目指します。
また、このような多中継光増幅中継伝送系では、光ファイバ中での非線形光学効果による波形歪により伝送可能距離が制限されます。
本研究では、送受信器内でディジタル信号処理を適用することにより波形歪を補償する方式についても研究を行います。
(2) 空間多重光ファイバ通信システムのシステム構成技術の研究
光ファイバの伝送容量を飛躍的に拡大する技術として、空間多重光通信技術が近年大きな期待を集めています。
本研究テーマでは、光ファイバ中の複数の伝搬モード(光ファイバ中での光信号の伝わり方)を利用したモード多重に注目し、長距離伝送特性を計算機シミュレーションにより明確化することを目的とします。
(3) 短距離光ファイバ通信の研究
データセンタ内光ネットワークでは、マルチモード光ファイバ(MMF)が広く用いられています。
低コストで接続が容易なMMFですが、モード間の伝搬遅延差であるモード分散による波形歪のために、通信速度が制限されるという課題があります。
本研究テーマでは、MMFを用いた通信システムの高速化、伝送距離の長延化の実現に向けた低コストの送受信方式について研究を行います。
本研究では、実際に送受信機を構築し、伝送実験を行って提案方式の効果を実証することを目指します。