Last up date Apr.14 2004

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 このページでは、安斎育郎や大学院ゼミ生が書き記すコラムを掲載します。また、世の中の重大な事案に対して、安齋ゼミ有志が関係各方面に
「声明文」を出すことがあります。その際には、その「声明文」のコピーをこのページに掲載します。



目次
タイトル
著者
掲載
「イラク日本人人質問題緊急アンケート調査」の結果報告   安斎育郎 2004年4月14日
イラク日本人誘拐についての国際平和ミュージアム館長見解  安斎育郎 2004年4月14日
「世界社会フォーラム」に参加して 藤田明史(OB) 2004年2月25日
「イラク-アメリカ危機についての館長声明」 安斎育郎 2003年3月19日



「イラク日本人人質問題緊急アンケート調査」の結果報告

2004年4月14日
 調査者 安斎 育郎
文責 松村 博行

 4月13日の「平和学」の講義において、イラク日本人人質問題に関しての学生の意識を問う以下のアンケートを実施した。ここに、その結果を掲載する。


◇設問1:回答者についての質問
 (1)
回生
 (2)性別
 (3)年齢(何歳代か)

◇設問2:いずれかの項目を選んでください
 (1)自衛隊の派遣について
   1.自衛隊を派遣したこと自体は、国際貢献の方法として適切な政策である。
   2.自衛隊は派遣すべきではなかった
   3.その他
 (2)自衛隊の撤退要求について

   1.人名の重さを考えれば自衛隊の撤退も選択肢から排除すべきではなかった。
   2.自衛隊の撤退はテロリストに屈したことになるので、撤退すべきではない。
   3.その他
 (3)今回の事態の原因(複数回答可)
   1.今回の誘拐事件の原因は日本政府が米英軍を支持して自衛隊を派遣したことにある。
   2.今回の誘拐事件の原因はあえて危険地帯に入った3人の無謀な行動にある。
   3.今回の誘拐事件の原因はファルージャでアメリカの民間人を惨殺したイラク人にある。
   4.今回の誘拐事件の原因はファルージャのモスク等にアメリカが手荒な攻撃を仕掛けたことにある
   5.その他
 (4)民間人を誘拐した犯人の行為について
   1.自衛隊派遣という国家政策を変えさせるために民間人を誘拐するのは卑劣だ。
   2.戦争状態の下では国家に打撃を与えるために民間人を人質にとることも許される。
   3.その他
 (5)アルジャジーラの機能について
   1.アルジャジーラが犯人側の意向を伝える情報媒体として機能していることには意味がある。
   2.アルジャジーラはテロリストの肩代わりをするのような役割を果たすべきではない。
   3.その他
 (6)日本政府の対応について
   1.日本政府は今回の事態に対応してよくやっている。→どういう点が?(             )
   2.日本政府の対応は十分とはいえない。→どういう点が?(             )
   3.その他

◇設問3:あなたは今回の事件についてどんな行動をとりましたか?(複数回答可)
   1.特に何もしなかった
   2.署名運動に協力した
   3.デモなどの抗議行動や抗議集会に参加した。

   4.日本政府に対する要請を行なった→どんな方法で?
   5.国際社会に発信した→どんな方法で?
   6.友人たちと話し合った。
   7.その他

★アンケートの結果はこちら

自由記述部分の抜粋はこちら

アンケートの評価・分析についてはこちら

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「イラク日本人誘拐についての国際平和ミュージアム館長見解

2004年4月14日
館長 安斎育郎

(1)イラクでの日本人誘拐事件の事実関係
 2004年4月8日、イラクで3人の日本人が誘拐され、その模様がアルジャジーラで放映された。3人の人質の1人である今井紀明氏は、立命館慶祥高校を今春卒業した青年である。犯行グループは「3日以内の自衛隊の撤退」を求めており、それが叶わぬ場合には3人を殺害する意図があることも表明している。
 こうした事態のもとで、日本政府は「人質救出を第一とする」一方で、「自衛隊はイラクの人道復興支援に赴いているので、撤退する理由はない」として「駐留継続」の意向を表明し、アメリカもこれを適切な判断として歓迎している。

(2)イラクへの渡航に伴う危険性の判断
 外務省が発しているイラクに対する渡航情報では、「日本人や日本の関連施設等がテロ攻撃の標的となる可能性は依然として排除されない」とし、イラクに滞在している全ての日本人に対して退避勧告を発している。こうした状況の下で、立命館学園は、「イラク戦争とそれに関わる現在の国際情勢に鑑み、学生・院生・教職員の安全を第一に考え、当面の間、中東諸国への渡航は原則禁止」としている。今井氏が、こうした状況の下で、危険を承知で混迷の地に足を踏み入れた判断にはある種の「甘さ」があったと思量されるし、相応の自己責任が伴われることも否めないであろう。

(3)脅迫的誘拐犯の意図とその影響
 しかし、今井氏は、劣化ウラン弾被害を含むイラク戦争の真実を人々に知らせるために、自らの目、自らの耳で実情を見聞する目的をもって現地視察を試みたものであり、もとよりイラク国民に敵対する行為を企てていた訳ではない。犯行グループが、自衛隊派遣という日本政府の政策の変更を迫る目的で、そのことについての直接的な決定権をもたない個人を誘拐し、殺害をさえ示唆する脅迫的なやり方をとっていることは、犯行グループの意図とは逆に、善意の日本人の心をイラク国民から離反させ、イラク国民を孤立させる結果を導くものと考えられる。
 私は犯行グループが直ちに人質を解放することを求める。

(4)事態の根本原因
 そもそもこうした危険な事態をもたらした根本原因は、国連と国際世論に背馳して米英軍がイラク攻撃に踏み切り、日本政府がそれを積極的に支持して自衛隊を派遣したことにある。私は、こうした事態の経過の中で、日本政府が憲法の不戦原則に基づいて平和裡に事態を解決することへの期待を表明し、米英軍による対イラク武力行使と日本政府の支持、および、その延長線上での自衛隊派遣を批判する見解を発表してきたところである。いま、民間人が誘拐され、生命の危険にさらされているという今日的状況を重く受け止め、わが国の国際貢献のあり方や安全保障政策について仕切り直した議論が真剣になされるべきであると考える。

以上
2004年4月9日

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「世界社会フォーラム」に参加して

2004年1月26日
藤田 明史

 私は、2004年1月16日から21日までインドのムンバイで開かれたWorld Social Forum(世界社会フォーラム、以下WSF)に、日本原水協代表団に加わって参加しました。合言葉は”Another World is Possible.”(「もう一つの世界は可能だ」)。様々な思念が渦巻いて整理して書くことはとうていできませんが、とくに強く感じたことを忘れないうちに記しておきます。

 まず、既存の言葉や概念では把握できない何か――しかも世界の未来にとって第一級の重要性をもつもの――がここで確かに起こっていると強く感じました。何しろアジア・アフリカを主体に世界から集まった10数万の人々(もちろんインド人が大きな割合を占める)が、スラムに隣接する広い会場(工場か倉庫群の跡地のような場所)の埃と喧騒の中で、必死になって議論し、踊り、行進し、自分を表現しようとしたのですから。そのエネルギーは生半可な総括を拒否するものであり、これからじっくり自分の生き方と重ね合わせてそれを表現する的確な言葉を見つけ出さねばなりません。しかし同時にそれは、いま少しでも表現しておかないとすぐに分らなくなってしまう何かでもあります。

 私は日本原水協が主宰する行事(被爆者の証言と原水爆禁止の署名集め)に参加するとともに、時間と体力の許す限りいくつかのワークショップにも出てみました。

 深く印象に残ったのは”Make Tibet a Zone of Peace”(「チベットを平和地帯に」)と”Moving towards Peace in Kashmir”(「カシミールにおける平和に向かって」)です。仮設テントの会場に前者には約百人、後者には約二百人が参加していました(発言は英語とヒンドゥー語)。「チベットを平和地帯に」では、チベットの中国からの自立(autonomy)が主張され、とくに女性の活動家が目立ちました。パネラーの一人であるチベットの知識人(男性)のスピーチに、仏教学者としてガルトゥングの名が出てきたのには驚きました。若い中国人のインドへの留学生(女性)が、「私たちはチベットに巨額の資本を投下し、チベットの人たちを愛しているのだ」と発言しましたが、やや公式的でした。 

   カシミール紛争をめぐるワークショップでは、パキスタンからのスピーカーとして物理学者のP.フードボーイが招待されていたのには驚きました(私はピースデポの「印パ速報」に彼の論稿を掲載したことがあり、また横浜の集会でも彼に会いました)。フードボーイは、カシミールをめぐって印パ間に戦争が起こればそれは必然的に核戦争につながり(今まで4回その危険があった)、したがってカシミール紛争は何としても解決されなければならない、そのためには、心理的にいかに困難であっても、お互いが相手を認め合い共存するほかないことを理性的かつ情熱的に主張しました。会場のざわめきで発言が中断されましたが、司会者がここは議論の場だと発言を続けるよう促す場面もありました。発言が終わると彼は数人に守られるように会場を出て行きましたが、まさに命懸けで発言しているように私には思えました。インド人の発言も、ヒンドゥーおよびイスラム原理主義的な心情に訴える印パ両政府の政策を批判し、民衆レベルの対話を呼びかけるきわめて理性的なものでした。カシミール問題のような政治的にきわめて微妙な問題がワークショップのテーマとして取り上げられ、民衆レベルで活発に討論されている事実に、私はここにこそWSFの意義があると思いました。それを可能にしたのは、多くの国の人々がカシミール紛争に関心をもちワークショップに参加したからであり、このことをフードボーイも指摘していました。

 開会式でスピーチを行なったインド人女性作家アルンダティ・ロイをはじめ(彼女は、「アメリカのブッシュもわれわれとは正反対の方向に『もう一つの世界は可能だ』と考えている。批判だけではなく、われわれは行動を起こさなければならない。アメリカの製品をわれわれの生活から締め出そう」との趣旨の発言をしました)、ここで述べたような民衆の立場に立つまったく新しい知識人が力強く出現し始めていることに、私は強烈な印象を受けました。

  「もう一つの世界は可能だ」と感性的に確信することはとても重要でまた絶対に必要なことです。それがなければ何事も始まりません(英語の表現としてはAnotherと言ったところが素晴らしい。これだと誰にでも分ります。並みの知識人であればAlternativeという言葉を使いたいところでしょう)。しかし、次の段階として、ブッシュのとは異なった、われわれが希求する「もう一つの世界」はいかにして実現可能か、という課題が出てくるでしょう。こうした問題の解決の筋道を理論化することがまさに知識人――もし知識人というものが存在するのであれば――に与えられた課題です。われわれの平和学もそれに実質的に貢献するものでありたいと思います(それ以外に平和学の存在意義があるでしょうか)。

 最終日にはムンバイの中心街を4キロほど行進しました。私はこのような大規模なデモは初めての経験で、感動しました。通りの両側の窓から住民が顔をだして行進を眺め、中には手を振る人もいました。原水協の横断幕を見たどこかの国のテレビ局に私はインタビューを受けました。歩きながらいくつかの質問に答えたあと、私は”The future is ours, not theirs!”(「未来はわれわれのものだ、彼らには未来はない」)と大声で叫んでいました。日本被団協の小西さんが、後ろを歩くインドの女性のグループに合わせて、”Koizumi, Down! Down!”とやり始めると、彼女らもつられて”Koizumi, Down! Down!”とやり始めました。 

 今回のWSFへの参加が私にとって心に残るものになったのは、行きと帰りの飛行機でたまたま隣り合わせた被爆者の75歳のおばあさんと、じっくり話し合うことができたからです。私には貴重な経験でした。75歳にもかかわらず、とても元気で好奇心が旺盛であり、皆がバスで帰ったあとも二人で残って、メーンステージで行なわれたローマのスパルタクスの反乱を題材にした劇を遅くまで見たりしました。ホテルまでタクシーで帰りましたが、低い目線で見る町の光景はすさまじいものでした。

  私が強く感じたのは被爆者とWSFに集まった政治的・経済的・文化的に抑圧された世界の人々とは何の抵抗もなく連帯し合えるということです(「被爆者の証言」への人々の敏感な反応、3000筆以上の署名が集まったことにもそれが表れていると思います)。それは”Expendables” (この言葉は被爆者の証言集会で誰かから発せられました。「棄民」とでも訳すのでしょうか)としての連帯です。そうした抑圧・搾取された人々が立ち上がり、異議をとなえ、さらに人間として生きる権利を積極的に主張することの中に、未来につながる希望があると私は思いました。

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「イラク−アメリカ危機」についての館長声明


2003年3月19日
立命館国際平和ミュージアム
館長 安斎育郎

 「イラク−アメリカ危機」(あえてそう呼ぶ)で、世界史が逆流してい
 大量破壊兵器開発や武力攻撃に固執し、世界に深い亀裂を生じさせたサダム・フセイン政権とジョージ・ブッシュ政権に対し、厳重な抗議の意を表明する。

 問題の背景には、「フセイン独裁主義政権」の太々(ふてぶて)しいばかりの不気味な不透明感と、「ブッシュ単独主義政権」の「まず戦争ありき」と言わんばかりの驚くべき好戦性がある。
 やがて還暦を迎えようという国連は、依然として大国やテロ組織の身勝手な行動に翻弄され、その姿は痛々しいばかりだ。私は、例えひ弱ではあっても、国家群が犇(ひし)めきあう現状において、国連は、国家間の利害を平和的に調停する機関として、第一級の重要性をもつと信じている。だが、ブッシュ政権はそうは考えていない。国連は、アメリカの国益追求に役立つ限りにおいて利用すべき機関であり、それが意のままにならぬなら頼むに足りないという程の理解に見える。
 国連憲章が例外的に武力行使を認めているのは、(1)他国から攻撃されたにもかかわらず、国連安全保障理事会が必要な措置をとらない場合、および、(2)平和が脅かされたり、破壊されたり、侵略行為があった場合に、安保理が武力行使を決定した場合、の二つに限られる。しかし、今回の武力行使の決定は、これらいずれにも該当せず、正当化される理由はない。日本政府が、内閣官房長官も説明に窮するこの不条理な戦争を支持したことは、単に国連憲章の精神に反するだけでなく、国際紛争を解決する手段としての戦争を放棄した日本国憲法の精神に真っ向から背馳するものと言わなければならない。

 ブッシュ政権には、単独主義の本義に反して国連に期待をかけ過ぎた結果、決議の取り下げ等という大失態を演じてしまったという反省があるに相違ない。今後、同政権は、「国連頼むに足らず」という単独主義的な行動様式を一段と強める懸念がある。現状では、アメリカは国連の内にあって、外にもある。まるで、「ユナイテッド・ネイションズ」の外にもう一つ「ユナイテッド・ステイツ」という名の世界決定機関があるかのようである。
 国連は、難民支援や、女性や子どもの権利など、人道・人権の面で大きな成果を上げてきたが、経済や政治に関わる問題では、大国の利害が剥き出しになり、機能不全に陥ることが少なくなかった。地球環境保護も、核兵器廃絶も、遅々として進まないように見える。行きつ戻りつ、しかしそれでも少しずつ、温暖化防止の国際協調が進み、核兵器の違法性が明るみに出されている。澱(よど)みなくとは行かないが、大局的に見て国連は人類史の進歩の流れに沿っていることをこそ評価すべきである。国連は、平和のための調整機関として育むべき存在でこそあれ、それを敵視したり、妨害したり、恣意的に利用したり、機能不全に陥らせるべき存在ではない。

 私は、さる2月17日の「館長声明」において、次の3点を要求した。
(1)ブッシュ政権は、世界の反戦世論を無視して独善的な軍事攻撃路線に突き進む政策を直ちに転換すること。ブッシュ政権は、単独主義的な外交政策を改め、世界が直面する諸問題は国連を中心とし、世界のNGOの声をも踏まえて平和的・民主的に解決する原則を支持すること。

(2)イラクは、大量破壊兵器についての疑惑に透明性をもって誠実に応えること。すべての国々は、大量破壊兵器の廃絶にむけて責任ある行動をとること。とりわけブッシュ政権は、新型核兵器開発を含む自らの大量破壊兵器の開発・配備をやめ、核兵器廃絶に向けて責任ある行動をとること。

(3)日本政府は、ブッシュ政権の尻馬に乗る危険なロデオをやめ、最高法規において「国際紛争を解決する手段としての戦争」を放棄した国に相応しく、国際社会において紛争解決の不戦原則を主張し、その原則に沿った平和的対話外交を強力に推進すること。アメリカの「核の傘」に依存する安全保障政策を転換し、核兵器廃絶のために責任ある行動をとること。

 私は、これらの諸点を改めて要求するとともに、とりわけ日本政府がブッシュ政権の国連憲章無視の対イラク軍事攻撃を公然と支持したことに対し、厳重に抗議する。
 私たちは、いま、世界の命運に関わる問題を国連を中心とする平和的な方法によって解決する道を選ぶのか、それとも、国連憲章を無視する好戦的な超大国の横車を許す道を選ぶのか、その岐路にある。私は、人類が夥しい数の犠牲の上に築き上げてきた不戦原則を尊重し、人類史上空前の規模の反戦集会に反映された人々の平和の意志に依拠し、忍耐と寛容と英知と勇気をもって国際問題の平和的解決のために精力的な努力を払うべきことを心から期待する。

 しばしば、このような主張は、「あまりに理想主義的で、非現実的かつナイーヴ」との悪罵を投げられてきたが、超大国に追随して戦争の現実を容認し、国連憲章や最高法規たる日本国憲法を足蹴にして憚らないような「現実主義」は、国家運営の責任ある立場にある政府が軽々にとるべき道ではない。「今日の理想」を「明日の現実」とするためにも、現に私たちが手にしている国連憲章や日本国憲法の理想を玉のように慈しむ姿勢を安易に崩すべきではない。

 平和と民主主義を教学理念とする立命館大学が世界の大学に先駆けて開設した国際平和ミュージアムの館長として、私は、開設10年を経た当ミュージアムが引き続き平和の価値の尊さを発信する場として、また、学生や市民が自ら平和創造の主体的な担い手となることを支援する場としてさらに発展するよう、高度化にむけて一層の努力を払うことを誓うものである。

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