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光電子顕微鏡を用いたNd-Fe-B磁石の減磁過程観察

Nd-Fe-B磁石の表面における磁区構造や元素分布を光電子顕微鏡(PEEM)を用いて観察しました。Nd-Fe-B磁石はNd2Fe14Bを主成分とする世界最強の磁石として知られています。

下図の(a)のように磁化した磁石試料を純鉄のヨークに組み込むことで、試料からの磁場漏れを大幅に低減し、磁化状態のPEEM像を観察することに成功しました。


磁区構造を観察した例が次のとおりです。(a)がDyをドープしていないNd-Fe-B磁石、(b)がDyをドープしたNd-Fe-B磁石の表面の磁区構造で、いずれも室温で観察しました。黄色い2本の矢印のうち、「Magnetized direction」と書かれた方の向き(磁石全体の磁化方向に対応)に磁化している領域が薄い灰色で、「Reversec magnetization」と書かれた矢印の向きに磁化している領域(逆磁区と呼ばれます)が濃い灰色で示されています。


昇温時の磁区構造を観察した例が次のとおりです。(a)~(b)つまり70℃以下の時は、逆磁区が徐々に増えていくものの、逆磁区の形が細長いのが特徴です。ところが、80℃程度以上になると、黄色い矢印で示したような「細長くない」逆磁区が発生し始めます。このことと呼応するように、逆磁区の面積が急激に増加し始めることが(j)図から分かります。


「細長くない」逆磁区が発生することが、減磁の主な原因だということがわかったわけですが、それはどのような部分に発生しやすいのでしょうか。FeとDyの濃度分布を観測したのが下の(a), (b)です。明るい場所ほど濃度が高いことを示します。Fe濃度が低い場所を黄色で、Dy濃度が低い場所を水色で示したのが(c)で、それを77~82℃の磁区構造に重ねたのが(d)~(f)です。「細長くない」逆磁区が、Dy濃度が低い場所の付近で発生しやすい傾向にあることがわかります。


詳細は論文(IBM J. Res. Dev. 55/4, 12/1-6 (2011/08) DOI:10.1147/JRD.2011.2159148.  [PDF])をご覧下さい。


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