稲葉ゼミ・ホームページ

知識+情報+コミュニティ

Knowledge, Information, and Communities


(1)プロフィール

ハワイ大学大学院インフォメーション&コンピュータサイエンス研究科修了。富士通株式会社、ハワイ大学ソフトウェア工学研究所客員研究員、ハワイ大学インフォメーション&コンピュータサイエンス学科研究助手を経て、1998年より現職。2005年9月から1年間、カリフォルニア大学サン・ディエゴ校比較人間認知研究所客員研究員。

(2)ゼミのテーマ:「知識+情報+コミュニティ」

(3)専門演習の研究内容・目標

本演習では、インターネットやモバイル通信技術によって開かれる、新しいビジネスモデルやコミュニティの可能性について、文献調査、現行システムの分析、あるいは実験システムの開発などを通して研究を進めて行く予定です。
各受講生の具体的な研究内容については、それぞれの研究計画を元に、アドバイスとテーマ設定を行っていきますが、各自の研究計画を策定する際の参考として、本演習においてこれまで行ってきた主な研究活動について紹介します。

コミュニティとネットワーク〜新しい「つながり」の形成

近年、ネット上のBBSやSNS(ソーシャルネットワーキングサービス)などによって様々なコミュニティが形成されはじめています。これらのコミュニティにおいては、平等性やボランタリズムといった価値観に基づいて、従来の階層型組織が実現できなかった新しいつながりが形成されています。しかしその一方で、ネット犯罪や有害情報流通の温床にもなりつつあることが懸念されています。

このような状況の中で、本演習では、ネット上のコミュニティが持つプラスの面を保持しながら、現実社会における規範や市場と協調的に発展できるコミュニティのあり方について、技術的、認知科学的、あるいは社会学的な視点から調査と分析を行ってきました。またこれまでに、いくつかの実験システムの開発も行いまいた。今後の演習においても、理論と実践の両面から研究を進めていく予定です。

コンピュータと協調学習〜次世代Eラーニングシステムの開発

現在、ITを使った学習(Eラーニング)のための様々な仕組みが提案され、実際に導入されはじめています。しかしそれらの仕組みのほとんどは、伝統的な「教育」のスタイル、つまり教える側から学ぶ側への一方向の知識伝達を基本としています。

本演習でのゴールとしては、誰もが「教え」かつ「学ぶ」という、「協調学習」と呼ばれる新しい学びのスタイルをネット上で実現することを目指しています。本演習ではこれまで、既存システムの情報収集、学習科学に関する文献調査、新しいシステムの提案などを行ってきました。またこれまでの研究成果によって、学部および大学院の学習支援を目的とした「薀蓄」・「含蓄」システム、さらには、小学校での「総合的な学習の時間」を対象とした「耕蓄」システムが開発され、現在も継続的に利用されています。今後も、現場での実践を通して、新しい協調学習支援の仕組みの実現を目指していきます。

文化と知識創造〜ナレッジブル・アーカイブの実現

近年、博物館や教育機関などが中心となって、有形・無形の文化遺産をデジタル化し保存する取り組み(デジタルアーカイブ)が活発になってきました。本学でも、京都文化のデジタルアーカイブ化の拠点として「アート・リサーチセンター」が設立されました。 本演習では、このアート・リサーチセンターを拠点として、ネット上で公開されたアーカイブを元に、新しい知識や文化の創造を行っていくコミュニティ作りに関する研究を進めてきました。本研究の成果は、日本の古典文学を素材とした知識交換のコミュニティ作りを目指す「可知納書院」や、戦争体験者から集めた写真をベースに戦時中の生活や平和について対話を交わすコミュニティである「ピース・アーカイブ・コミュニティ」などとして公開されています。今後も、新しい知的資産の創造のためのネット・コミュニティのインフラ(ナレッジブル・アーカイブ)に関する研究開発を継続していく予定です。

(4)専門演習の運営方法

本演習では、文献調査や情報収集を基本とする「文社系的」なアプローチに興味がある学生と、実際にプログラミングやシステム開発を行う「理工系的」なアプローチに興味がある学生の双方のコラボレーションによって学習を進めていきたいと考えています。

また、本演習担当教員がプロジェクトリーダーを務めている、アート・リサーチセンターなどでの研究や産学協同プロジェクトと連携し、机上の学習にとどまらず、実践を通した検証を積極的に行って行きたいと考えています。

(5)テキスト、参考文献

各自のテーマに応じて適宜指示・推奨をしていきます。ゼミ全体に関する参考文献・リンク集は、以下を参考にしてください。

稲葉ゼミホームページ:http://www.ritsumei.ac.jp/~inabam/seminar/

(6)受講生に望むこと

様々な情報通信技術の動向に敏感であると同時に、その社会的意義や新しい活用方法について考えていく姿勢を持ってください。


Mitsuyuki Inaba(inabam@sps.ritsumei.ac.jp)
Last modified: Wed Jul 25 15:31:45 JST 2007