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2018/07/22

海へ流れた増間島


 むかーし、増間川の上(かみ)ん方にでっけゃー岩ん島があって、水神様(すいじんさま)が祀(まつ)ってあっただって。 昔、増間川の上流に大きな岩の島があって、水神様が祀ってあったそうだ。

 ある年、二日二晩物凄(すげ)え大雨が続(ちじ)いたぁもんで、あっちこっちん山が崩れて、増間川は、泥水がゴーゴー音ぉ立てて、でっけゃー岩まん押し流しただ。 ある年、二日二晩物凄い大雨が続いたので、至る所の山が崩れて、増間川は氾濫し、濁流はゴーゴーと音を立てて、大きな岩までも押し流した。

 だーけん、雨が上がっとカラリと日本晴れんなって、いつん間にか水が引いてたぁ。みんなは被害を見廻(まあ)ってから神社ん下へ集まってぶったまげた。あんでかっちゅうと、水神様ぁ祀った島が無あなってたぁかんだ。大水で流されちまったぁだ。 しかし、雨があがるとカラリと日本晴れとなり、いつの間にか水が引いていた。人々は被害を見廻ったあと神社の下へ集まってびっくりした。なぜなら、水神様を祀った島がなくなっていたからだ。大水で流されてしまったのだ。

 村中ん旦那達が総出で隣の滝田との境(さけゃー)まで探したぁけん、判んなぁっただ。そんで、「海の方へ流れてっかもしんねゃあ。」っちゅうことで、そん島ぁ探しん、大勢でぞろぞろと川(かあ)土手ん沿って、下へ下へと下って行ったぁだ。平群川かん湊川へ出て、とうとう湊の川口まで出てしまったぁけん、見(め)っかぁんなぁったもんで、みんながっかりしちゃったぁだ。 村中の旦那達が総出で隣の滝田との境まで探したが、判らなかった。それで、海へ流れているかもしれないということで、その島を探しに、大勢でゾロゾロと川土手に沿って、下へ下へと下って行った。平群川から湊川へ出て、とうとう港の川口まで出てしまったが、見つからなかったので、みんなはがっかりしてしまった。

 そうすっと、一人ん年寄(とっしょ)りが、 すると、一人の老人が、

「折角(せっかあ)此処(こう)まで来たぁだかん、船ぇ雇って海ぃ探してんべぇよ。」 「折角此処まで来たのだから、船を雇って海を探して見よう。」

って言(ゆ)ったもんだかん、八幡(やあた)ん船頭ぉ頼んで、那古ん海岸沿いに、船形かん大房(てゃーぶさ)ん方へと探しん行ったぁだよ。 と言ったので、八幡の船頭を頼んで、那古の海岸沿いに船形から大房岬の方へと探しに行った。

 ちょうど大房の出っ鼻ん所(とうろ)まで来っと、水神様とそっくりん島があったもんだかん、みんなは口ぃそろえて、 ちょうど大房の出っ鼻の所に来ると、水神様の島とそっくりの島があったので、みんなは異口同音に、

「これゃあ、水神様ん島とそっくりだでよ。増間かん此処(こう)まで流れてきたぁだのう。」って言(ゆ)ったぁ。 「これは、水神様の島とそっくりだ。増間から此処まで流れてきたんだなぁ。」と言った。

 やっと島が見(め)っかって、大喜びですぐん神主さん頼んで注連縄(しめなわ)ぁ張って、元ん通りの水神様ぁ祀ったぁだ。そっから毎年(めゃーとし)、増間ん者(もん)は、正月と秋祭りに、供物(くもつ)ぅ持ってお詣(まい)りに行ったぁだよ。 やっと島が見つかって、大喜びですぐに神主さんを頼んで注連縄を張り、元通りの水神様を祀った。それから毎年、増間の者たちは、正月と秋祭りに、供物を持ってお詣りに行った。

 他所(よそ)ん村ん人達ゃー、 他の村の人達は、

「島が海ん中へ流れて来んもんか、増間ん馬鹿が見(め)っけたぁ増間島かぁ。」 「島が海の中へ流れてくるものか。増間の馬鹿が見つけた増間島か。」

っちゅって、悪口ぃたてゃーて笑ったぁけん、増間ん者(もん)は、一向に頓着しねゃーで平気だったっちゅうこんだ。 と言って、悪口をたたいて笑ったが、増間の者は、一向に頓着せずに平気だったということだ。


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