『増間の昔話』ホームページ、
『若ゃー衆の柿盗み』(方言のみページ、
方言・標準語訳ページ、逐語訳ページ)
2018/07/22
若(わけ)ゃー衆(し)の柿盗み
カタカナ・標準語訳
- ムカーシ、
- 昔、
- マスマン
- 増間の
- ワケーシガ
- 若い衆が
- ロクニン、
- 六人、
- ジューヤン
- 十夜の
- ヨルニ、
- 夜に、
- 「カキー
- 「柿(を)
- ヌスミー
- 盗み(に)
- イグベーヤ」ッテ
- 行こうや」と
- ハナシガ
- 話が
- キマッテナ、
- 決まってな、
- オボロズキヨン
- おぼろ月夜の
- ナカオ
- 中を
- デカケルコトン
- 出かけることに
- シターダ。
- した(の)だ。
- コンコロワ、
- このころは、
- カキー
- 柿(を)
- ヌスムッチューコトワ、
- 盗むということは、
- ジブンガ
- 自分が
- クー
- 食べる
- ブンダケ
- 分だけ
- トンナラ、
- 取るなら、
- ワリーコトデー
- 悪いことで
- ナーッタダッテ。
- なかった(の)だって。
- カキー
- 柿(を)
- ヌスム
- 盗む
- トキン
- 時に
- ナッテ、
- なって、
- メッカット
- 見つかると
- オイネャーッチューワケデ、
- いけないというわけで、
- ヒトリオ
- 一人を
- ミハリニ
- 見張りに
- スッコトン
- することに
- キメターダ。
- 決めた(の)だ。
- ミハリワ
- 見張りは
- クジビキデ
- くじ引きで
- キメベーッテ、
- 決めようと、
- タケン
- 竹の
- エダー
- 枝(を)
- オッテ、
- 折って、
- イチバン
- 一番
- ナゲャーノオ
- 長いのを
- ヒーター
- 引いた
- モンガ
- 者が
- ミハリン
- 見張りに
- ナンベーッチューコトン
- なろうということに
- キメターワケダ。
- 決めたわけだ。
- クジー
- くじ(を)
- ヒーテ
- 引いて
- ミット、
- みると、
- コトシ
- 今年
- ワケーシン
- 若い衆に
- ナカマイリ
- 仲間入り
- シター
- した
- イチバン
- 一番
- ワケャー
- 若い衆に
- オトーガ、
- 男が
- ミハリン
- 見張りに
- アタッチマッターダ。
- 当たってしまった(の)だ。
- ソンデ、
- それで、
- ミハリン
- 見張りに
- アタッター
- 当たった
- オトーワ、
- 男は、
- シンペャーン
- 心配に
- ナッテ、
- なって、
- 「ヒトガ
- 「人が
- キタラ、
- 来たら、
- アジシテ
- どうやって
- アイズスレバ
- 合図すれば
- イイダカイ」ッテ
- いいのか」と
- キーターワケダ。
- 聞いたわけだ。
- ソー
- そう
- スット、
- すると、
- 「ソーダナー、
- そうだなあ、
- アジシヨーカ」ッテ
- どうしようか」と
- ミンナワ
- みんなは
- カンゲャータケン、
- 考えたけれども、
- ナカナカ
- なかなか
- イー
- 良い
- カンゲャーガ
- 考えが
- ウカバネャーデ
- 浮かばない(の)で
- コマッチャッターダッテ。
- 困ってしまった(の)だって。
- チョード
- ちょうど
- ソン
- その
- トキ、
- とき、
- マツムシガ、
- マツムシが、
- 「チンチロリン」ッテ
- 「チンチロリン」と
- ネャーターノオ
- 鳴いたのを
- キーテ、
- 聞いて、
- 「ソーダ、
- 「そうだ、
- アン
- あの
- コエガ
- 声が
- イーッペ」ッテ
- いいだろう」と
- ヒトリガ
- 一人が
- ユート、
- 言うと、
- イー
- 良い
- カンゲャーガ
- 考えが
- ウカバネャー
- 浮かばない
- ホカン
- 他の
- モンモ、
- 者も、
- 「ウン、
- 「うん、
- ソレガ
- それが
- イーヤ」ッテ、
- いいや」と
- マツムシン
- マツムシの
- コエー
- 声(を)
- アイズニ
- 合図に
- スッコトン
- することに
- ハナシガ
- 話が
- キマッターダ。
- 決まった(の)だ。
- アイズガ
- 合図が
- キマット、
- 決まると、
- ゴニンワ、
- 五人は、
- ミハリン
- 見張りの
- オトーニ、
- 男に、
- 「イー
- 「良い
- カキー
- 柿(を)
- ソーット
- そうっと
- クサン
- 草の
- ウエエ
- 上へ
- オトスカンナ」ッテ
- 落とすからな」と
- ユッテ、
- 言って、
- キー
- 木(に)
- ノボッテ
- 登って
- イッチマッターダ。
- 言ってしまった(の)だ。
- トコロガ、
- ところが、
- キン
- 木の
- ウエエ
- 上へ
- アガッテッター
- 上がって行った
- モンワ
- 者は、
- ジブンガ
- 自分が
- ウンメャー
- 美味い
- カキー
- 柿(を)
- ミツケテ
- 見つけて
- クーノン
- 食べるのに
- ムチューデ、
- 夢中で、
- ミハリン
- 見張りに
- オトシテ
- 落として
- ヤッコトオ
- やることを
- スッカリ
- すっかり
- ワスレチャッターダ。
- 忘れてしまった(の)だ。
- ミハリン
- 見張りの
- オトーワ、
- 男は、
- オチテクル
- 落ちて
-
- くる
- カキワ、
- 柿は、
- シビー
- 渋い
- ヤツカ
- やつか
- クイカシダーモンダカン、
- 食べかけなものだから、
- ウンメャーノガ
- 美味いのが
- クイテャーッテ、
- 食べたいと、
- ナマツババーリ
- 生唾ばかり
- ノミコンデターケン、
- 飲み込んでいたけれども、
- トートー
- とうとう
- ガマンガ
- 我慢が
- デキナーナッテ、
- できなくなって、
- 「チンチロリン」ッテ
- 「チンチロリン」と
- ヤッテシマッターダ。
- やってしまった(の)だ。
- ソー
- そう
- スット、
- すると、
- キン
- 木の
- ウエン
- 上の
- ナカマワ
- 仲間は
- オッタマゲテ、
- ビックリして、
- キカラ
- 木から
- スベリオリテ
- 滑り降りて
- キテ、
- 来て、
- 「オイ、
- 「おい、
- ドーエ
- どこへ
- キターダヨ。
- 来た(の)だよ。
- ダーモ
- 誰も
- メエネャーデヨ。
- 見えないじゃないか。
- ウソッポーダッペ」ッテ
- 嘘だろう」と
- ユッタートーロガ、
- 行ったところが、
- 「アンガ。
- 「いや。
- キターダト
- 来た(の)だと
- オモッタカン
- 思ったから
- アイズシターダヨ。
- 合図した(の)だよ。
- ウンメャー
- 美味い
- カキー
- 柿(を)
- オイテッテクラッシャーヨ」ッテ
- 置いていって下さいよ」と
- ユッテ、
- 言って、
- ヤット、
- やっと
- ミンナト
- みんなと
- オンナジヨーナ
- 同じような
- ウンメャー
- 美味い
- カキー
- 柿(を)
- モラッテ
- もらって
- クーコトガ
- 耐えることが
- デキタダ。
- できた(の)だ。
- ナカマン
- 仲間の
- モンワ、
- 者は、
- メッカンネャーノガ
- 見つからないのが
- ワカット、
- わかると、
- マタ
- また
- キン
- 木の
- ウエエ
- 上へ
- アガッテイッチャッター。
- 上がって行ってしまった。
- ミハリン
- 見張りの
- オトーワ、
- 男は、
- キン
- 木の
- ネモトカラ
- 根元から
- チットバーシ
- 少しばかり
- ハナレタ
- 離れた
- トコロサ
- ところに
- イッテ、
- 行って、
- カキー
- 柿(を)
- ムチューン
- 夢中に
- ナッテ
- なって
- クッテターダ。
- 食べていた(の)だ。
- ソー
- そう
- スット、
- すると、
- ナカマン
- 仲間の
- ヒトリガ
- 一人が
- カキン
- 柿の
- キー
- 木(を)
- テッペンマデ
- てっぺんまで
- アガッテイッターモンデ、
- 上がって行ったもので、
- エダガ
- 枝が
- オレテ、
- 折れて、
- 「ポキーン」チュー
- 「ポキーン」という
- オトガ
- 音が
- マーリニ
- 回りに
- ヒビータ。
- 響いた。
- シズカナ
- 静かな
- ツキヨダッタモンデ、
- 月夜だったもので、
- カキン
- 柿の
- モチヌシン
- 持ち主の
- ウチマデ
- 家まで
- キコエチャッターダ。
- 聞こえてしまった(の)だ。
- チットバーシ
- 少しばかり
- スット、
- すると、
- ソン
- その
- ウチン
- 家の
- オヤジサンガ
- 親父さんが
- ソトエ
- 外へ
- デテキテ、
- 出て来て、
- ジーット
- じいっと
- カキン
- 柿の
- キン
- 木の
- ホーオ
- 方を
- ニランデイターダ。
- にらんでいた(の)だ。
- ソン
- その
- トキン
- ときに
- マタ、
- また、
- 「ポキーン」ッテ
- 「ポキーン」と
- キン
- 木の
- エダー
- 枝(を)
- オッタ
- 折った
- モンガ
- 者が
- イターモンダカン、
- いたものだから、
- 「コン
- 「この
- カキドロボー。
- 柿どろぼう。
- ドン
- どこの
- ヤンドモダー。
- やろうどもだ。
- トンデモネャー
- とんでもない
- ヤンドモダー」ッテ、
- やろうどもだ」と、
- ボーオ
- 棒を
- モッテ
- 持って
- チカジーテ
- 近づいて
- キターモンダカン、
- 来たものだから、
- ミハリン
- 見張りの
- オトーワ、
- 男は
- 「チンチロリン、
- 「チンチロリン、
- チンチロリン」ッテ
- チンチロリン」と
- アイズシターワケダ。
- 合図したわけだ。
- ダーケン、
- けれど、
- ナカマン
- 仲間の
- モンタチワ、
- 者たちは、
- マタ
- また
- ミハリガ
- 見張りが
- カキー
- 柿(が)
- ホシュー
- 欲しく
- ナッタト
- なったと
- オモッテ、
- 思って、
- 「ポトン、
- 「ポトン、
- ポトン」ッテ
- ポトン」と
- カキー
- 柿(を)
- オトシテ、
- 落として、
- シラネャー
- 知らない
- フリー
- ふり(を)
- シテ
- して
- カキー
- 柿(を)
- クッテルモンデ、
- 食べているもので、
- ミハリン
- 見張りの
- オトーワ
- 男は
- コマッチマッター。
- 困ってしまった。
- ショーガ
- 仕様が
- ネャート
- ないと
- モッテ、
- 思って、
- 「チンチロリン、
- 「チンチロリン、
- チンチロリン、
- チンチロリン、
- チンチロリン」ッテ
- チンチロリン」と
- オオゴエデ
- 大声で
- ブッツズケニ
- ぶっ続けに
- ドナッタ。
- どなった。
- ソー
- そう
- スット、
- すると、
- オヤジワ、
- おやじは、
- 「ドロボー
- 「泥棒(を)
- メッケター」ッテ、
- 見つけた」と、
- ボー
- 棒(を)
- フリアゲテ
- 振り上げて
- スットンデ
- すっ飛んで
- キターカン、
- 来たから、
- ミハリワ
- 見張りは
- カキー
- 柿(を)
- オッポリダシテ
- 放り出して
- ブットンデ
- ぶっ飛んで
- ニゲチャッター。
- 逃げてしまった。
- オヤジガ、
- おやじが、
- 「ドーン
- 「どこの
- ヤンドモダ。
- 野郎どもだ。
- トンデモネャー
- とんでもない
- ヤツダ」ッテ
- 奴だ」と
- オッカエテ
- 追いかけて
- イッター
- 行った
- アト、
- あと、
- ナカマワ
- 仲間は
- ブッタマゲテ
- 驚いて
- キカラ
- 木から
- オリテ
- おりて
- ニゲチマッターダ。
- 逃げてしまった(の)だ。
- オヤジワ
- おやじは
- ミハリン
- 見張りの
- オトーオ
- 男を
- ニガシチマッターモンデ、
- 逃がしてしまったもので、
- スグニ
- すぐに
- ヒッケャーシテ
- 引き返して
- キテ、
- 来て、
- キン
- 木の
- ウエオ
- 上を
- キョロキョロ
- きょろきょろ
- サガシマーッターケン、
- 探し回ったけれども、
- ソン
- その
- トキワ、
- ときは、
- ハー、
- はあ、
- ヒトリモ
- 一人も
- イナーッタモンデ、
- いなかったもので、
- 「オイネャー
- 「いけない
- ヤンドモダ」ッテ
- 野郎どもだ」と
- ヒトリゴトオ
- 独り言を
- イーナガラ、
- いいながら、
- ウチー
- 家(に)
- ヒャーッテッターッチュー
- 入っていったという
- ハナシダ。
- 話だ。
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