ある年、二日二晩物凄(すげ)え大雨が続(ちじ)いたぁもんで、あっちこっちん山が崩れて、増間川は、泥水がゴーゴー音ぉ立てて、でっけゃー岩まん押し流しただ。
だーけん、雨が上がっとカラリと日本晴れんなって、いつん間にか水が引いてたぁ。みんなは被害を見廻(まあ)ってから神社ん下へ集まってぶったまげた。あんでかっちゅうと、水神様ぁ祀った島が無あなってたぁかんだ。大水で流されちまったぁだ。
村中ん旦那達が総出で隣の滝田との境(さけゃー)まで探したぁけん、判んなぁっただ。そんで、「海の方へ流れてっかもしんねゃあ。」っちゅうことで、そん島ぁ探しん、大勢でぞろぞろと川(かあ)土手ん沿って、下へ下へと下って行ったぁだ。平群川かん湊川へ出て、とうとう湊の川口まで出てしまったぁけん、見(め)っかぁんなぁったもんで、みんながっかりしちゃったぁだ。
そうすっと、一人ん年寄(とっしょ)りが、
「折角(せっかあ)此処(こう)まで来たぁだかん、船ぇ雇って海ぃ探してんべぇよ。」
って言(ゆ)ったもんだかん、八幡(やあた)ん船頭ぉ頼んで、那古ん海岸沿いに、船形かん大房(てゃーぶさ)ん方へと探しん行ったぁだよ。
ちょうど大房の出っ鼻ん所(とうろ)まで来っと、水神様とそっくりん島があったもんだかん、みんなは口ぃそろえて、
「これゃあ、水神様ん島とそっくりだでよ。増間かん此処(こう)まで流れてきたぁだのう。」って言(ゆ)ったぁ。
やっと島が見(め)っかって、大喜びですぐん神主さん頼んで注連縄(しめなわ)ぁ張って、元ん通りの水神様ぁ祀ったぁだ。そっから毎年(めゃーとし)、増間ん者(もん)は、正月と秋祭りに、供物(くもつ)ぅ持ってお詣(まい)りに行ったぁだよ。
他所(よそ)ん村ん人達ゃー、
「島が海ん中へ流れて来んもんか、増間ん馬鹿が見(め)っけたぁ増間島かぁ。」
っちゅって、悪口ぃたてゃーて笑ったぁけん、増間ん者(もん)は、一向に頓着しねゃーで平気だったっちゅうこんだ。