「アジア太平洋のエポック」 要約

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1980年代以降、アジア太平洋地域では、かつて経験したことのない規模と深さで経済発展が進み、社会構造が大きく変化しつつあります。このなかで、21世紀は「アジア太平洋の時代」といわれ、この地域の動向が世界から大きな注目を集めています。しかし、他方で、国家間、地域間の格差の解消や、開発と環境保全をどのように調和させるのか、あるいは都市問題の抜本的な解決のあり方、新しい産業や企業マネジメント開発など、様々な解決すべき課題が存在しています。

こうした状況を背景に、この地域の社会、文化、価値観などの多様性に対する相互理解のうえに、アジア太平洋地域に生起している共通の諸問題を発見し、その解決に積極的に貢献する人材の養成が求められています。学校法人立命館は、大分県およぴ別府市と協力して2000年4月に立命館アジア太平洋大学の開設を予定しています。この大学では、アジア太平洋地域の要請に応える新しい学問分野である「アジア太平洋学」を構築し、それをべースとしたグローバルな教育研究を展開していきたいと考えております。立命館大学では、1996年4月に、立命館アジア太平洋研究センターを新たに設置し、数多くの研究会を重ねてまいりました。

その一環として、1996年10月に韓国のソウルにおいて慶煕(キョンヒ)大学との共催により国際シンポジウム「アジアの繁栄と共存-日本と韓国の役割」を開催致しました。
こうした取り組みのうえに、1997年6月21、22の両日、大分県別府市のビーコンプラザにおいて、立命館アジア太平洋大学設立に向けた学術交流、新しい学問分野である「アジア太平洋学」の構築、および地域の学術文化の発展の契機とするため、国際学術シンポジウム「アジア太平洋のエポック」を開催いたしました。シンポジウムでは、アジア太平洋地域の持続的発展と共生を担う人材育成のあり方、さらには新しい学問分野である「アジア李洋学」の構築に向けて、国内外の各界の第一線で活躍しておられる先生方をお招きし、さまざまな角度からのご提言をいただきました。この国際学術シンポジウムは、地元市民の方々をはじめ、学界、経済界、マスコミの方々など、2日間でのべ600名を超える皆様にご参加いただきました。
本書は、シンポジウムにおける講演および討論の記録です。

第1章では、編者による基調講演を収録し、「アジア太平洋学」構想の概要を提示しています。第2章では、各フォーラムからの代表者を中心とする全体シンポジウム「アジア太平洋のエポック」を収録し、様々な角度から「アジア太平洋学」の可能性について論じていただいてます。
第3章から第6章は各フォーラムの報告および討論を収録しています。

立命館アジア太平洋研究センターは、今後とも、「アジア太平洋学」の構築を通じて、アジア太平洋地域の持続的発展と共生に貢献しうる研究を進め、その成果を公表してまいりたいと考えております。本書が、アジア太平洋地域に関する理解と「アジア太平洋学」の構築に向けた一助となれば幸いです。