2007年2月2日発表されたIPCC第4次評価報告書(AR4)において、地球温暖化の将来予測として、初めて「淡水資源」、「沿岸域と低平地」への影響が示された。これらの影響は、アジアの大都市圏においても、極めて深刻な課題であり、より詳細な気候変動による水資源環境影響評価分析、さらには、気候変動に対する適応策のため実践的なプログラムの構築が求められている。地球温暖化対策全体の中で,適応策は削減策を補完するものとして位置づけられてきたが、近年その重要性に対する認識が急速に高まりつつある。
本研究では、気候変動による水資源環境影響を最も深刻に受けるバングラデッシュと世界最大の都市圏であり、深刻な水資源環境問題を抱えている上海大都市圏を対象地域として選定し、水資源環境影響評価分析、適応策のインベントリーの作成、適応策の総合評価を行う。適応策の評価研究とともに、適応策を推進していくためには、持続可能な水環境マネジメントが必要である。アジア大都市圏においては、水管理方式として、「統合的水管理」が指向されつつある。これは、従来の中央政府主導の管理方式では限界があり、地方政府との協同化、さらには水の市場化・民営化が現実化するなかで民間企業や地域住民とのパートナーシップが「大都市圏の水の安全保障」を高めるためにも必要である。地域の状況に合致した適応策実現のための「統合的水管理」の方式を確立することが、新しい課題として提起されている。 |