2001年度 立命館大学 「労働保護法」講義

第4回「1.総論 C.ハラスメント」

2001.10.16.  佐藤

はじめに
 前回のまとめ 1.総論 B.男女雇用平等 *特に回答するべき質問はなかった
 今回の予定  前回の続き
        1.総論 C.ハラスメント

*本日の講義テーマ:セクハラとは何か?

1.事例から(米国三菱自動車セクハラ事件([資料1]参照)

2.セクシュアル・ハラスメント( sexual harassment )
 1.禁止される理由
   1)性的自由ないし性的自己決定権の侵害
     つまり、誰と親密になり、性的な関係をもつかは自分が自己の責任で自由
     に決めることであり、他者から強要されない権利の侵害
    2)働く権利の侵害
     つまり、個人の欲する仕事を可能な限り快適な環境で行なう権利の侵害
   *教育の場であれば「学ぶ権利」なども問題となります
  2.意味内容
   「1.」の結果をもたらすものが「セクハラ」
   定義的に言うと、「相手の意思に反して行なわれる性的な言動」
  3.種類
      1)文書によるもの
      2)言葉によるもの
      3)具体的行為によるもの
   4)視覚によるもの
 4.発生する原因
   1)行為者個人の資質
      3)異性とりわけ女性を低く見る意識
   3)「男は仕事、女は家庭」というように性別役割分担の意識
      4)「女性は職場の花」というように性的な役割を求める意識
      5)女性を性的な対象としてのみ見る意識
      6)「単なる冗談」というように男女での性意識の相違を認識していないこと
   7)優越的地位の利用
 5.法による救済
   *法によって救済されるのは、セクハラの全部ではなく一部分
    本来は上の諸原因を取り除くための活動がより重要
     1)刑事上違法である場合
     2)労働契約法上違法である場合
   3)上に至らない場合
     a.男女雇用機会均等法、労働省のガイドライン([資料2]参照)
       いわゆる「環境型・代償型」のみ救済
          b.批判:概念への無理解、日本と米国の相違、救済範囲が狭い
          c.公務員のガイドライン:救済範囲の拡大
       e.g.職場外・勤務時間外の行為、男女役割分担への批判
 6.補足:いわゆる「環境型・代償型」について
   1)誤解:類型として述べられ、場合によっては定義として述べられる
   2)日本の現実に合致しない
   3)より根本的には、この類型は使用者へのサンクションの根拠

3.他のハラスメント
 1.組合活動を理由とするもの(労組法7条)、他、法律上の権利行使を理由とするもの
 2.「国籍、信条、社会的身分」(労基法3条)
 3.年齢、障害、性的志向

4.何がセクハラか
 1.問題局面:法による救済の場面、「環境型」の場合
       →何が「環境型」セクハラに該当するのか、を判断するための基準
              使用者責任 
 2.諸見解
   1)客観説
      2)主観説
 

[参考文献]
 中下裕子・福島瑞穂・金子雅臣・鈴木まり子『セクシュアル・ハラスメント(新版)』  (1998年、有斐閣)
 奥山明良『職場のセクシュアル・ハラスメント』(有斐閣、1999年)
 渡辺和子『キャンパス・セクシュアル・ハラスメント』(啓文社、1997年)
 池内靖子・武田春子・二宮周平・姫岡とし子『21世紀のジェンダー論』(1999年、晃洋書房)

[自己点検項目]
 1)講義を受講して、理解が進んだ点
  2)講義でわかりにくかった点
  3)講義に関する質問
 4)その他(自由記述)