2001年度 立命館大学 「労働保護法」講義

第12回「4.職場環境  B・労働災害と過労死」

2001.12.11. 佐藤

はじめに
*前回講義(12月4日)での質問
  有給休暇を取得しないと給与を上積みするような制度はないのか
  年次有給休暇を完全にとれるような仕組みはないのか

*本日の講義テーマ:過労死に対する補償はできないのだろうか?

1.具体的事例から[資料1:過労死]
 (a)概念:死因は急性心不全、しかしそれを「過労死」と呼んでいる、
 (b)原因:長時間労働と単身赴任/ 劣悪な労働環境
 (c)対処:死亡に対して労災補償を申請/「業務が原因」の基準で判断/遺族補償給付。

2.「過労死」とは何か
 @「過労死」概念について((a))
  1.医学的に見ると
  2.概念:社会医学
  3.件数 労働省      →認定件数
        過労死弁護団→推定
 A法的問題点
  1.原因((b)):長時間労働は「労働時間」の項で
           劣悪の労働環境については、「3.事前予防」で
   2.補償((c)):「4.事後救済」で

3.事前予防
 @労働災害の現状と安全衛生対策の必要性
  1.労災の件数[資料2] cf.交通事故件数
  2.事前予防の必要性
   3.特徴としての労働者参加(安全・衛生委員会、労働災害防止指導員)
  A労働安全衛生法(労安衛法)
  1.経緯
      1)労働基準法第5章「安全及び衛生」
      2)1972年労働安全衛生法
   2.内容
    1)目的          *労基法と一体
     2)義務主体・客体     *「使用者」ではなく「事業主」
     3)労働災害防止計画
     4)安全衛生管理体制    *安全・衛生委員会
     5)危険防止措置の義務付け
     6)就業にあたっての措置
     7)健康管理        *健康診断
   3.刑事責任

4.事後救済:労働者災害補償
 @無過失責任と定額補償(労基法八章)
  1.民事上の損害賠償
  2.無過失責任による補償の必要性と定額補償
 A責任保険的側面と社会保障的側面(労働者災害補償保険法)
  1.責任保険としての開始
  2.法改正と社会保障的側面の拡大
 B受給手続
  1.申請→労働基準監督署→認定→給付(不支給に対しては、再審査・取消訴訟)
  2.保険金は全額を使用者が支払う(?からして当然)
  3.使用者に対して加入強制
  4.ほぼ全労働者をカバー(パート・アルバイト・外国人労働者にも全て適用される)
 C認定基準:「業務上」
  1.補償内容
  2.認定基準
   1)一般的基準:業務起因性と業務遂行性
   2)業務上災害の例
    イ)一般的基準    ロ)就業時間中の災害    ハ)就業時間外の災害
    ニ)出張中の災害   ホ)運動会    ヘ)天災    ト)通勤途上災害
    3)業務上疾病の例
    イ)頚肩腕症候群   ロ)塵肺     ハ)白蝋病   ニ)脳・心臓疾患

5.過労死の労災認定
 @労災認定
  1.労働省による認定基準
   1)1961年基準、2)1987年基準、3)1994年緩和、4)1996年緩和、5)緩和予定
   2.裁判による逆転判決の増加
 A過労死は労働災害であるのか/自殺過労死は?

[参考文献]
 「過労死弁護団全国連絡会議」編『過労死』(1989年、双葉社)(1992年、講談社文庫)
 川人博『過労死社会と日本』(1992年、花伝社)
 同『過労自殺』(1998年、岩波新書)
 ダグラス・ラミス/斎藤茂男『ナゼ日本人ハ死ホド働クノデスカ?』
  (1991年、岩波ブックレット)
 暉峻淑子『豊さとは何か』(1989年、岩波新書)

[自己点検項目]
 1)講義を受講して、理解が進んだ点
  2)講義でわかりにくかった点
  3)講義に関する質問
 4)その他(自由記述)

[出席者]
     10/02  09   16   23   30  11/06  13   20   27  12/04  11   18   1/08
法          13   14    9   12  9  10   11  10    8   9
法以外      11   14   11   10   13     9   12    9    9     9
合計    24   28   20   22   22    19   23   19   17    18