2001年度 立命館大学 「労働保護法」講義

第13回「5.多様な就業形態」

2001.12.18.  佐藤

はじめに
 これまで:正規雇用労働者を念頭においた議論
 本日  :「非正規」労働者

*本日の講義テーマ:パートは低賃金で使い自由に辞めさせてもよいのか

1.具体的事例から(資料参照:丸子警報機事件、三洋パート事件)

2.多様な雇用形態
 1.企業の雇用戦略   cf.日経連『新時代の「日本的経営」』(1995年)
 2.多様な形態(臨時、派遣、パート、アルバイト、外国人)

3.パートタイマー
 1.「パートタイマー」とは何か
  1)ILO175号条約
  2)日本:疑似パート・期間の定め・比例原則が適用されない→「パート」という身分
  3)アルバイト
 2.労基法の適用
  1)基本的にはすべて適用される
  2)パート法(「短時間労働者雇用管理改善法」1993年6月成立)
 3.パートタイマーと均等待遇(丸子警報機事件判決参照)
    cf.男女雇用平等の際の「均等待遇」の説明
  1)丸子警報機事件 長野地上田支判 平8.3.15
   2)諸説
      A)同一労働同一賃金原則は公序ではない→賃金差別の救済できない
      B)                                  →不法行為による損害賠償が可能
      C)                                  →均等待遇原則→救済可能
      D)                      公序である  →救済可能
 4.期間の定めある労働契約の反復更新(三洋パート事件参照)
  1)労基法14条
    2)一年を越える期間を定めた場合
     旭川大学事件   札幌高判 昭56. 7.16
    3)一年以内の期間を定めた場合
     1.反復更新について諸説
       A)雇い止め
       B)期間の定めのある契約だが、解雇法理を類推適用
       C)期間の定めのない契約に転化
       D)正当な理由のない限り、期間の定めある契約を締結できない
     2.最高裁判決
       東芝柳町工場事件 最一小判 昭49. 7.22
       日立メディコ事件 最一小判 昭61.12. 4
       神戸弘陵学園事件 最三小判 平 2. 6. 5

3.派遣労働者
 1.労働者派遣法の経過
  1)労基法6条、職業安定法44条
  2)違法派遣の拡大   cf. 派遣労働者の実数
  3)労働者派遣法(1985年)
   cf.男女雇用機会均等法の成立と同時→女性労働者と派遣
    4)対象業務の拡大:13業種(当初)→26業種
  5)法改定(1999年):ネガティブ・リスト
 2.労働者派遣法の内容
    1)常用型・登録型
  2)三者間契約  cf.「出向」との区別
   1.労働者と派遣元=雇用、2.労働者と派遣先=労働、3.派遣元と派遣先=派遣契約
  3)労働者供給事業
  3.労働者派遣の問題点(資料参照)
  1)プライバシー  2)賃金  3)労働条件  4)労働組合   cf.朝日放送事件
 
4.外国人労働者([資料2]参照)
 1.受け入れの現状
 2.「不法就労」「外国人」とは何か
    1)「不法」とは行政措置によるもの
  2)労働法は適用される
    3)適用に関する事実上の困難性
 3.資格外就労外国人をめぐる労働法上の具体的問題点
  1.賃金  2.解雇  3.労災  4.救済措置  入管への通知義務とその現在の運用

5.障害者([資料3]参照)
 

[参考文献]
@労働者派遣
 西谷敏・脇田滋『派遣労働の法律と実務』(1987年、労働旬報社)
 筒井・大谷・大島・加城『派遣』(1991年、有斐閣)
  民主法律協会編『がんばってよかった』(1995年、かもがわ出版)
 脇田教授のホーム・ページ http://www.asahi-net.or.jp/~RB1S-WKT/index.htm
A外国人労働者
 行財政総合研究所編『外国人労働者の人権』(1990年、大月書店)
 小井土友治編著『外国人労働者[改定版]』(1992年、税務経理協会)

[自己点検項目]
 1)講義を受講して、理解が進んだ点
  2)講義でわかりにくかった点
  3)講義に関する質問
 4)その他(自由記述)

[出席者]
     10/02  09   16   23   30  11/06  13   20   27  12/04  11   18   1/08
法          13   14    9   12  9  10   11  10    8   9  8
法以外      11   14   11   10   13     9   12    9    9     9    8
合計    24   28   20   22   22    19   23   19   17    18   16

[資料1ー2]
HAKEN労働問題:今年の相談内容から
 1998年6月5日から7日に開設した相談室には171件の派遣労働相談が寄せられました。

内容件数
  途中解約、契約打ち切り 27件            プライバシー侵害     8件     違法派遣・二重派遣   19件            契約と違う労働条件   18件
  雇用保険、健康保険など 12件            契約打ち切り紹介なし   4件
  退職トラブル       5件            有給休暇         6件
  事前面接         7件            倒産・賃金不払い    18件
  セクハラ・いじめ     9件            労災・安全衛生      5件
  その他         11件            派遣問題以外      21件
 
派遣労働ネットワーク :150東京都渋谷区道玄坂1-19-10 東京ユニオン内
TEL:(03)3770-3471 FAX:(03)3770-0874
代表: 弁護士 中野麻美

 
[資料1ー3] 派遣元及び派遣先が講ずべき措置に関する指針(平成8年労告示102号)
●第1 趣旨 この指針は、労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律(昭和60年法律第88号。以下「労働者派遣法」という)第3章第―節から第3節までの規定により派遣元事業主及び派遣先が誰ずべき措置に関して、その適切かつ有効な実施を図るために必要な事項を定めたものである。

●第2 派遣元事業主が講ずべき措置
 1 労働者派遣契約の締結に当たっての就業条件の確認:派遣元事業主は、派遣先との間で労働者派遣契約を締結するに際しては、派遣先が求める業務の内容、当該業務を遂行するために必要とされる知識、技術又は経験の水準その他労働者派遣契約の締結に際し定めるべき就業条件を事前にきめ細かに把握すること。
 2 労働者派遣契約の解除に当たって講ずる派遣労働者の雇用の安定を図るために必要な措置:派遣元事業主は、労働者派遣契約の契約期間が満了する前に派遣労働者の責に帰すべき事由以外の事由によって労働者派遣契約の解除が行われた場合には、当該労働者派遣契約に係る派遣先と連携して、当該派遣先からその関連会社での就業のあっせんを受ける等により、当該労働者派遣契約に係る派遣労働者の新たな就業機会の確保を図ること。
 3 適切な苦情の処理:派遣元事業主は、派遣労働者の苦情の申出を受ける者、派遣元事業主において苦情の処理を行う方法、派遣元事業主と派遣先との連携のための体制等を労働者派遣契約において定めること。また、派遣元管理台帳に苦情の申出を受けた年月日、苦情の内容及び苦情の処理状況について、苦情の申出を受け、及び苦情の処理に当たった都度、記載すること。
 4 労働・社会保険の適用の促進:派遣元事業主は、その雇用する派遣労働者の就業の状況等を踏まえ、労働・社会保険の適用手続を適切に進めること。
 5 派遣先との連絡体制の確立:派遣元事業主は、派遣先を定期的に巡回すること等により、派遣労働者の就業の状況が労働者派遣契約の定めに反していないことの確認等を行うとともに、派遣労働者の適正な派遣就業の確保のためにきめ細かな情報提供を行う等により派遣先との連絡調整を的確に行うこと。
 6 派遣労働者に対する就業条件の明示:派遣元事業主は、モデル就業条件明示書の活用等により、派遣労働者に対し就業条件を明示すること。

●第3 派遣先が講ずべき措置
 1 労働者派遣契約の締結に当たっての就業条件の確認:派遣先は、労働者派遣契約の締結の申込みを行うに際しては、就業中の派遣労働者を直接指揮命令することが見込まれる者から、業務の内容、当該業務を遂行するために必要とされる知識、技術又は経験の水準その他労働者派遣契約の締結に際し定めるべき就業条件の内容を十分確認すること。
 2 労働者派遣契約に定める就業条件の確保:派遣先は、労働者派遣契約を円滑かつ的確に履行するため、次に掲げる措置その他派遣先の実態に即した適切な措置を講ずること。(1)就業条件の周知徹底:労働者派遣契約で定められた就業条件について、当該派遣労働者の業務の遂行を指揮命令する職務上の地位にある者その他の関係者に当該就業条件を記載した書面を交付し、又は就業場所に提示する等により、周知の徹底を図ること。(2)就業場所の巡回:定期的に派遣労働者の就業場所を巡回し、当該派遣労働者の就業の状況が労働者派遣契約に反していないことを確認すること。(3)就業状況の報告:派遣労働者を直接指揮命令する者から定期的に当該派遣労働者の就業の状況について報告を求めること。
 3 労働者派遣契約の解除に当たって講ずる派遣労働者の雇用の安定を図るために必要な措置
(1)労働者派遣契約の解除の申入れ:派遣先は、専ら派遣先に起因する事由により労働者派遣契約の契約期間が満了する前の解除を行おうとする場合には、派遣元事業主の合意を得ることはもとよりあらかじめ相当の猶予期間をもって派遣元事業主に解除の申入れを行うこと。(2)派遣先における就業機会の確保:派遣先は、労働者派遣契約の契約期間が満了する前に派遣労働者の責に帰すべき事由以外の事由によって労働者派遣契約の解除が行われた場合には、当該派遣先の関連会社での就業をあっせんする等により、当該労働者派遣契約に係る派遣労働者の新たな就業機会の確保を図ること。(3)損害賠償等に係る適切な措置:派遣先は、派遣先の責に帰すべき事由により労働者派遣契約の契約期間が満了する前に労働者派遣契約の解除を行おうとする場合には、当該労働者派遣契約の残期間及び派遣料金等を勘案しつつ、派遣元事業主と十分に協議した上で適切な善後処理方策を講ずること。また派遣元事業主及び派遣先の双方の責に帰すべき事由がある場合には、派遣元事業主及び派遣先のそれぞれの責に帰すべき部分の割合についても十分に考慮すること。
 4 適切な苦情の処理:派遣先は、派遣労働者の苦情の申出を受ける者、派遣先において苦情の処理をする方法、派遣元事業主と派遣先との連携を図るための体制等を、労働者派遣契約において定めること。また、派遣労働者の受入れに際し、説明会等を実施して、その内容を派遣労働者に説明すること。さらに、派遣先管理台帳に苦情の申出を受けた年月日、苦情の内容及び苦情の処理状況について、苦情の申出を受け、及び苦情の処理に当たった都度、記載するとともに、その内容を派遣元事業主に通知すること。
 5 関係法令の関係者への周知:派遣先は、労働者派遣法の規定により派遣先が講ずべき措置の内容や労働者派遣法第3章第4節に規定する労働基準法(昭和22年法律第49号)等の適用に関する特例等の関係者への周知の徹底を図るために、説明会等の実施、文書の配布等の措置を講ずること。
 6 派遣元事業主との連絡体制の確立:派遣先は、派遣元事業主の事業場で締結される労働基準法第36条の時間外及び休日の労働に関する協定の内容等派遣労働者の労働時間の枠組みについて派遣元事業主に情報提供を求める等により、派遣元事業主との連絡調整を的確に行うこと。
 7 派遣労働者に対する説明会等の実施:派遣先は、派遣労働者の受入れに際し、説明会等を実施し、派遣労働者が利用できる派遣先の各種の福利厚生に関する措置の内容についての説明、派遣労働者が円滑かつ的確に就業するために必要な、派遣労働者を直接指揮命令する者以外の派遣先の労働者との業務上の関係についての説明及び職場生活上留意を要する事項についての助言等を行うこと。
 8 派遣先責任者の適切な選任及び適切な業務の遂行:派遣先は、派遣先責任者の選任に当たっては、労働関係法令に関する知識を有する者であること、人事・労務管理等について専門的な知識又は相当期間の経験を有する者であること、派遣労働者の就業に係る事項に関する一定の決定、変更を行い得る権限を有する者であること等派遣先責任者の職務を的確に遂行することができる者を選任するよう努めること。

[資料1ー4]
┌──────────────────────────────────────┐
│             派遣労働者雇入通知書       年  月  日  │
│         殿                                                        │
│                   事業場 名称                          │
│                   所在地                                │
│                   使用者・氏名           印  │
│次の条件で採用します。                                                      │
├─────┬────────────────────────────────┤
│雇用期間 │1.期間の定めなし 2.平成 年 月 日から平成 年 月 日まで│
├─────┼────────────────────────────────┤
│就業場所  │                                                                │
├─────┼────────────────────────────────┤
│業務内容  │                                                                │
├─────┼────────────────────────────────┤
│始業・終業│   前        前                                      │
│時刻及び  │1.午  時 分から午   時  分まで(うち休憩時間  分)  │
│休憩時間  │      後                後                                      │
│          │            前                                      │
│          │          1 午   時  分まで(うち休憩時間  分)│
│      │2.交替制 無/有   後                                      │
│          │            前                                      │
│          │          2 午   時  分まで(うち休憩時間  分)│
│          │            後                                      │
├─────┼────────────────────────────────┤
│休日又は │(休日/勤務日)は 1 毎週(    )曜日                      │
│勤務日    │          2 (       )                        │
├─────┼────────────────────────────────┤
│時間外・ │1.時間外労働(無/有)→(1日  時間/週  時間/月 時間)│
│休日労働  │2.休日労働 (無/有)→(1月  回)                        │
├─────┼────────────────────────────────┤
│休 暇  │1.年次有給休暇                                                │
│     │ 1 6か月継続勤務した場合(法定どおり/法定を上回る→(  )日│
│          │ 2 勤務6か月以内の年次有給休暇(無/有)→( 月経過で  日) │
│          │2.その他の休暇  1 有給         2 無給                │
├─────┼────────────────────────────────┤
│賃 金    │1.基本賃金 1 時間給 2 日給 3 月給 4 その他(     円)│
│          │2.諸手当 1 (   手当   円)  2 (    手当  円) │
│          │      3 (   手当   円)  4 (    手当  円) │
│          │3.時間外・休日・深夜労働に対する割増率                        │
│          │ 1 時間外(a)法定超 (   %)(b)所定超  (   %)│
│          │ 2 休 日(a)法定休日(   %)(b)法定外休日(   %)│
│          │ 3 深 夜(    %)                                        │
│          │4.賃金支払時の控除→(費目,金額等              )│
│          │5.賃金締切日(       日)                             │
│          │6.賃金支払日(         日)                          │
│          │7.昇給  8.賞与 9.退職金                                │├─────┼────────────────────────────────┤
│備 考    │                                                                │
└─────┴────────────────────────────────┘
         モデル雇入通知書記載要領
1 雇入通知書は、派遣労働者の雇入れについて権限を持つ者の名義で作成し、本人に交 付すること。
2 各欄において複数項目を選択する場合には該当項目にO印を付すこと。
3 「雇用期間」について期間の定めをする場合には、1年を超える期間を定めないこと。
4「業務内容」欄は、派遣労働者に従事させることを予定する業務の内容を記載すること。
5 交替制などによって勤務させるときは、シフトごとの始業・就業時刻及び休憩時間を 記載すること。なお、シフトの変更の周期についても、「備考」欄に記載すること。
6 「休日又は勤務日」欄は、休日又は勤務すべき日のいずれかについて、曜日あるいは 日を特定して記載すること。
7 「時間外,休日労働」を例外的に行わせることがある場合には、その程度(時間・日 数)を記載すること。
8 「休暇」欄の年次有給休暇については、6カ月継続勤務(雇用期間が定められている 場合であって、更新により実質的に労働関係が継続していると認められるときを含む) し、その間の出席率が8割以上であるときに与える必要があること。なお、所定労働日 数が週4日以下又は年間216日以下の者に与える年次有給休暇の日数は、労働省令で 定める日数以上とする必要があること。上記の日数を上回る日数を与える場合には、そ の付与日数を記載すること。
9 同欄のその他の休暇については、制度がある場合に、有給、無給別に休暇の種類、日 数(期間等)を記載すること。
10「賃金」欄の時間外・休日・深夜労働に対する割増率については、法令で定める率以 上とすることが必要であること。
11 同欄の賃金支払時に控除する費目については、源泉徴収すべき税等を除き、事業所 で独自に控除を行う場合に、控除費目を記載すること。
12 派遣労働者に適用する就業規則の名称を「備考」欄に記載すること。なお、派遣労 働者を含め常時10人以上の労働者を雇用する事業所においては、就業規則を作成する ことが必要であること。
13 「備考」欄には、以下の事項についても記載すること。なお、書ききれない場合に は、就業規則を提示するなどの方法により明示する必要がある。・退職に関する事項  ・安全及び衛生に関する事項 ・職業訓練に関する事項 ・休職に関する事項 ・表彰 及び制裁に関する事項 ・災害補償及び業務外の傷病扶助に関する事項
14 この雇入通知書に記載されている事項のうち、事業所の採用していないものについ ては、これを削除して使用して差し支えないこと。
15 登録型の労働者派遣事業の場合には雇入通知書と就業条件明示書を同時に交付する 場合が多いと考えられるが、その場合には両者の記載事項のうち一致する事項について、 一方の記載を省略して差し支えないこと。

[資料2:外国人労働者]『労働白書平成10年版』(日本労働研究機構、1998年)
  企業の国際活動の活発化に伴い、我が国経済の世界経済との結び付きは一段と強まってきている。それにより日本法人の海外での経済活動や日本人の海外赴任が増加する一方、外国人労働者の日本への入国、在留も傾向的に増加してきている。一方、合法的な就労者のほかに、不法就労を意図して不法入国・不法上陸する者、在留期間を超えて不法残留し、不法就労する者等もおり、こうした不法就労者は依然高水準で推移している。また、最近では近隣諸国からの不法就労を目的とした集団密航事件の増加もみられる。これら合法・不法を合わせた我が国における外国人労働者数は、労働省推計で、1996年(平成8年)現在、約63万人となっている。
(新規入国外国人の動向)
  外国人の入国状況を法務省発表の1997年における出入国者統計でみると、1997年における就労が認められている在留資格の新規入国外国人(外交・公用活動者を除く)は9万3,895人となっている。これを1989年の出入国管理及び難民認定法(以下「入管法」という)の改正以降の動きについてみると、1989年の7万1,978人から1991年の11万3,599人まで急速に増加したが、ここ数年では1995年前年比27.0%減、1996年同3.6%減、1997年同19.6%増となっている。1997年に増加となった要因としては、これらの者のうちの大半を占める在留資格(1989年の改正後の入管法に基づく在留資格)が「興行」である入国者が増加となったことがあげられる。
  また在留資格別の構成比をみると、「興行」(6万7,475人、構成比71.9%)に次いで、「人文知識・国際業務」(6,709人、構成比7.1%)、「技術」(5,128人、構成比5.5%)などとなっている。また、在留外国人のうち就労が認められている在留資格の外国人登録者数を法務省「在留外国人統計」によってみると、前年に減少となった登録者数は、1996年には9万8,301人(前年比11.7%増)と再び増加に転じた。1996年に増加となった要因としては、在留資格「興行」で在留する外国人が前年比25.9%増となったことがあげられる。在留資格別に内訳をみると、「人文知識・国際業務」(2万7,377人、構成比27.9%)が最も多く、「興行」(2万0,103人、構成比20.5%)、「技術」(1万1,052人、構成比11.2%)、「技能」(8,767人、構成比8.9%)の順となっている。
(外国人雇用事業所の状況)
  外国人労働者の雇用状況の把握については、外国人労働者を直接に雇用している(以下「直接雇用」という)か、または外国人労働者が請負などにより事業所内で就労している(以下「間接雇用」という)事業所が年1回、6月1日現在の外国人労働者の雇用状況を管轄の公共職業安定所長に報告する外国人雇用状況報告制度が、1993年より実施されている。
  今回(1997年)の報告結果によると、報告を行った事業所は全体で1万7,859所、外国人労働者の延べ人数は18万5,214人であった。このうち直接雇用については、事業所数は1万5,702所、外国人労働者数は11万3,961人であり、事業所数は前回(1996年)より11.7%増加し、外国人労働者数は前回よりも10.6%増加した。
  直接雇用の事業所数、外国人労働者数を産業別にみると、製造業の事業所数、外国人労働者数が最も多く、8,136所(構成比51.8%)、7万1,151人(同62.4%)、次いでサービス業が3,752所(同23.9%)、2万4,499人(同21.5%)、卸売・小売業,飲食店が2,018所(同12.9%)、8,615人(同7.6%)であり、事業所数、外国人労働者数とも、これら上位3産業で全体の約9割を占めている。前回と比べ、事業所数、外国人労働者数ともおおむねすべての産業で増加しており、そのうち製造業の増加数が最も大きい(付属統計表第15表)。
  一方、間接雇用の事業所については、3,529事業所(直接雇用と間接雇用の双方の形態を有する事業所と間接雇用のみの事業所が含まれる)から報告を受け、間接雇用の外国人労働者数は7万1,253人であった。産業別には、製造業が最も多く2,797所(構成比79.3%)、6万4,350人(同90.3%)、次いでサービス業が381所(同10.8%)、2,395人(同3.4%)でこの2産業で全体の約9割を占めている。
(不法就労者の現況)
  我が国と近隣諸国間の経済水準の格差や円高等を背景として、我が国で不法就労活動を行う者も高水準で推移している。不法就労活動とは、?資格外活動(例えば、在留資格が「短期滞在」、「留学」や「就学」の者が資格外活動の許可を受けることなく、又は資格外活動を許可された範囲を超えて報酬を受ける活動等に従事する場合がこれに当たる)、又は?不法入国者、不法上陸者(特例上陸許可を受けることなく上陸した者を含む)若しくは不法残留者(例えば、在留資格が「短期滞在」の者や特例上陸許可を受けて上陸した者が、許可された在留期間又は上陸許可期間が過ぎても出国せずに本邦にとどまる場合がこれに当たる)が行う報酬その他の収入を伴う活動をいう。法務省入国管理局によれば、1996年中に退去強制手続を執った者のうち不法就労活動が認められた者の数(上記?及び?の計)は4万7,785人(前年比3.3%減)であった。
  このような不法就労者のかなり多くの部分は「短期滞在」の在留資格で入国し在留期間が過ぎても我が国に留まり就労している者とみられる。法務省入国管理局の推計により、不法残留者数の推移をみると、1990年(7月1日現在)の10万6,497人から1993年(5月1日現在)に29万8,646人となるまで増加を続けた後減少に転じ、1998年1月1日現在では27万6,810人となっているが、依然として高水準で推移している。
  不法残留者を国籍別にみると、1998年1月1日現在では、韓国(構成比18.8%)、フィリピン(同15.4%)、中国(同13.6%)、タイ(同13.4%)からの者が多く、この4か国で全体の61.2%を占めている。また、最近では近隣諸国からの不法就労を目的とした船舶を利用しての集団密航事件が増加している。
  入管法違反により不法就労者として摘発された外国人の就労内容別構成比をみると、1996年現在では、男性では建設作業員(構成比38.3%)、工員(同27.4%)が多く、女性ではホステス(同37.5%)、ウェイトレス(同15.8%)が多い。また、男女別の構成比をみると、1991年以降上昇していた女性の割合が、1996年には34.8%と前年より0.3%ポイント低下した。

[資料3:障害者雇用]『労働白書平成10年版』
第5節  障害者雇用の現状
(障害者雇用対策と法定雇用率)
  就職に当たってハンディキャップを持つ障害者の雇用対策については、「障害者の雇用の促進等に関する法律」に基づき、障害者の雇用の促進及び職業の安定のための施策を実施しているが、同法は1997年(平成9年)4月に一部改正され、法定雇用率の算定基礎に身体障害者のほかに精神薄弱者が加えられることとなった。これに伴い、1998年7月1日から、1人以上の身体障害者又は精神薄弱者を雇用しなければならない企業等の規模も拡大し、常用労働者数56人以上(1998年6月30日までは63人以上)規模の一般の民間企業は1.8%以上(1998年6月30日までは1.6%以上)、常用労働者数48人以上(同53人以上)規模の特殊法人は2.1%以上(同1.9%以上)、職員数48人以上規模の国、地方公共団体は2.1%以上(ただし、職員数50人以上規模の都道府県等の教育委員会は2.0%以上、1998年6月30日までは50人以上規模の非現業的機関は2.0%以上、53人以上の現業的機関は1.9%以上)の身体障害者又は精神薄弱者を雇用しなければならないこととなった。
  なお、実雇用率(雇用されている障害者数/常用労働者数)の算定に当たっては、?重度障害者(重度身体障害者及び重度精神薄弱者)についてはその1人をもって身体障害者又は精神薄弱者2人として取り扱うこと(ダブルカウント)、?重度障害者である短時間労働者は通常勤務の身体障害者又は精神薄弱者1人とみなしてカウントすること、ができる。
(実雇用率は前年と同水準)
  1997年6月1日現在における障害者雇用の現状をみると、同法により1人以上の障害者を雇用すべき一般の民間企業は、前年より563企業増加して5万5,440企業となり、雇用されている障害者数は前年より2,048人増加して25万30人となった。雇用されている障害者数は前年比0.8%増と1996年の同0.4%増と比べて伸びが拡大しており、雇用状況は改善しているといえる。さらに、実雇用率をみると、1.47%と前年(1.47%)に続き過去最高の水準となった。しかし雇用率未達成企業の割合をみると、49.8%と前年(49.5%)に比べ0.3%ポイント上昇した。
  このように実雇用率は横ばいとなったものの、これを企業規模別にみると規模間で異なる動きとなっている。300人以上の規模をみると大企業を中心に実雇用率が改善する傾向が1991年以降続いており、各規模とも1997年の実雇用率は1996年を上回る一方で、300人未満規模企業では、1994年以降実雇用率の低下が続いている。また、雇用率未達成企業割合をみても、300人以上規模では低下しているものの、300人未満の規模では上昇しており、中小規模の企業での障害者雇用について厳しさが出てきていることがうかがわれる。ただし、実雇用率の水準をみると、依然300人以上規模企業の方が300人未満規模の企業に比べて低く、63?99人規模を除いて、すべての規模で法定雇用率の1.6%を下回っている。法定雇用率の未達成企業の割合でみても規模の大きい企業の方が高く、1997年では1,000人以上で67.5%となっており、最も低い63?99人においても46.3%が法定雇用率を達成していない(付属統計表第14表)。
  このような状況から、労働省では今後も障害者雇用の促進を図るため、企業に周知、指導、援助することとしているが、企業においても、障害者雇用に積極的に取り組み、法定雇用率の達成に向け更に努めることが求められている。