2001年度 立命館大学 「労働保護法」講義

第14回「権利救済機構」

2001.01.08.  佐藤

はじめに

*本日の講義テーマ:労働基準監督署は労働者保護のための機関なのだろうか

1.救済制度の概略
  @序
  (1)労働組合による救済が基本
    (2)行政救済機関は二元的に設立
    (3)最終的には司法救済
  (4)私的仲裁機関(cf.合州国)、通常裁判所以外の特別裁判所(cf.ドイツ)はない
 
 A行政救済機関
  (1) 労働団体法:労働委員会
   1)種別:中央労働委員会、地方労働委員会、
       船員中央労働委員会、船員地方労働委員会
   2)公的現業:国  →中央労働委員会(かつては、公共企業体等労働委員会
                                       1986年に中労委に統合)
                 地方→地方労働委員会
     3)一般公務:事実上、制度なし不利益取扱禁止の規定はあるが、執行制度はない)
  (2) 労働保護法
   1)労働基準法:労働基準監督機関
     一般公務:国  →基準監督はない
                         人事院に対して、適正な行政措置を要求することができる
                   地方→司法警察職員としての権限はない
                         その権限は人事委員会または委任を受けたその委員が行なう
             (人事委員会の設置されていない地方公共団体においては地
              方公共団体の長)
   2)女性労働:女性局長、都道府県女性少年室、機会均等調停委員会
   3)各種「センター」
    イ)種類
      1.介護労働安定センター:介護労働者雇用管理改善法(199 年)
         2.労働時間短縮促進センター:時短促進法(1992年)
         3.短時間労働援助センター: パート労働法(1993年)
          4.障害者雇用支援センター:障害者雇用法改正(1994年)
       5.高齢期雇用就業支援センター(1994年)
        ロ)設置意図:多面的対策の必要性、支援サービスの必要性
        ハ)批判:違反監督の放棄

 B司法救済

2.行政救済制度
 @労働委員会
  (1) 労働委員会制度
                  ┌─────┐
 凡例               │最高裁判所│
 「 」労働組合が         └─────┘
     行う道            ↑△? 上告
 「→」使用者が          ┌─────┐
     行う道          │高等裁判所│
 「△」行政訴訟において      └─────┘
     労働委員会が行う道      ↑△? 控訴
               ┌─────────┐
          取消訴訟 │   地方裁判所 │
         →→→→→→└─────────┘
         ↑     ↑取消訴訟?  ?取 ?司法救済
         ↑   ┌───────┐?消 ?<民事事件>
         ↑再審査│中央労働委員会│?訴行?=損害賠償
         or→→→└───────┘?訟政? 仮処分
       ┌─┐特徴(ハ)    再審査?or? 事? 地位確認
       │使│<・・・・・・・・┌───────┐件?
       │用│地労委命令│地方労働委員会│ ?
       │者│     └───────┘ ?特徴(ロ)
       └─┘   行政救済 申立? and  ?
              ┌────────────┐
              │  労働組合・労働者    │特徴(イ)
              └────────────┘
   (2) 不当労働行為
   1)不利益取扱の禁止(労組法七条一号)
    2)団交拒否の禁止(労組法七条二号)
    3)支配介入の禁止(労組法七条三号)
     4)申立てに対する不利益取扱の禁止(労組法七条四号)

 B労働基準監督官
   (1) 制度(労基法97条以下)
         労働大臣・労働基準主管局・(法律にある「地方労働局」は未設置)・
     労働基準局・労働基準監督署
  (2) 権限:行政上の強制力と司法警察職員としての権限をもつ
         臨検・帳簿提出命令・尋問、
     捜査・逮捕・送検(刑事訴訟法189条以下)

 C女性労働
 1.女性局
  (1) 制度
   (2) 管轄:女性労働
  (3) 権限:労基官と同等の監督権限を有する、ただし体制不足
 2.女性少年室
  (1) 制度:都道府県女性少年室
  (2) 管轄:女性労働関係(実際には、労基官はこの問題を取り扱わない)
             労働者は苦情の申立が可能
  (3) 権限:助言・指導・援助・勧告。但し、立入調査権はなく、違反への罰則もない
 3.機会均等調停委員会
  (1) 制度:女性少年室に設置され、学識経験者三名によって構成される
  (2) 権限:両当事者の合意により調停開始

*労基法による他の権利保障手段
 (1) 強行的・直律的効力(労基法13条)
 (2) 罰則:六ヵ月以下の懲役、両罰規定
 (3) 附加金(労基法114条)
 (4) その他(労基法105条:国の援助義務、 労基法106条:法令規則の周知義務、等)

3.救済制度の運用実態
  @救済制度全体
  A労働基準監督(資料参照)

[参考文献]
 片岡 ・萬井隆令・西谷敏『労使紛争と法』(1994年、有斐閣)

[自己点検項目]
 1)講義を受講して、理解が進んだ点
  2)講義でわかりにくかった点
  3)講義に関する質問
 4)その他(自由記述)